国難期の税政策への一視点
- 2010年 7月 17日
- 時代をみる
- 岩田昌征消費税税政策
菅首相の消費税率10%への引き上げ論は、「政策の知恵袋の小野善康阪大教授の危機対応と雇用重視の理論を借りて、消費税タブーに挑む旗を掲げたのだ」(朝日、7月15日、P.1、原眞人)と言われる。
私の見る所、小野善康氏は、自己のよって立つ純粋理論と打ち出す経済政策の間に斉合性がある数少ないエコノミストである。氏の経済理論は、『貨幣経済の動学理論 ケインズの復権』(東大出版会、1992年)と 『Money Interest, and Stagnation -Dynamic Theory and Keynes’s Economics-』 (Clarendon Press Oxford, 1994)に体系的に論述されている。『貨幣経済』(pp.62-64) と『Money』(pp.65-66) で見事に証明されている命題によれば、消費税は有効需要を引き下げ、貨幣保有税や資産保有税は有効需要を増加させる。
とすれば、菅首相が小野理論に依拠するとすれば、消費税引き上げ(財政再建と景気悪化の効果)だけでなく、和田秀樹氏(一橋大学大学院特任教授)の『富裕層が日本をダメにした!』(宝島社、2009年)の相続税100%論(財政再建と景気浮揚の効果)をも採用すべきだったかも知れない。一般庶民に痛い消費税と少数金持ち層に痛い相続税のワンセットこそ国難期の税制策であろう。
(平成22年7月15日)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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