小出先生、「汚染とは30年、50年のスパンで付き合わないといけない…」
- 2012年 3月 30日
- 交流の広場
- 原発事故小出裕章松元保昭
みなさまへ 松元
小出先生の「たね蒔きジャーナル」3月28日分の転送です。福島の農家、根本敬さんとのお話です。翌29日には、瓦礫処理問題にもかかわり発言されている神戸大大学院の山内知也さんのお話がありましたので、あわせてお届けいたします。
小出先生、「二本松は放射線管理区域にしなければならない」「根本さんにもいてほしくない」といったのに対し、根本さん、「後世のためにこの管理区域で作った作物を検証しなければならない」「ここの作物は大人も食べるべきではないが、私はカナリヤでいい、80歳の父といっしょに耕す」と語り、「農は食べ物を供給するだけではない」「自然エネルギーの宝庫として、新しい農をつくりあげたい」と、汚染農地での凄絶な決意を述べていました。
また山内さん、「除染は難しい、移転しなければならない」「関西などで受け入れるより、そのコストを地元に落としたほうがいい」と語っています。
●「小出裕章非公式まとめ」に生の声がアップされています。http://hiroakikoide.wordpress.com/
=====28日、小出さん&根本さんのお話=====
永岡です、毎日放送のたね蒔きジャーナル、今日も水野晶子さんの司会、毎日新聞専門編集委員の近藤勝重さんの案内で放送されました。今日は小出先生も出られて、福島の農家、根本敬さんとのお話もありました。
根本さん、以前にもこの番組に出られて、二本松にお住まいで、水野さんは根本さんの農地もご覧になりました。水野さん、放射線測定器を持ち、それが鳴ってばかりであり、それは根本さんたちには嫌な音なのです(0.3マイクロシーベルト/時間で鳴る)。根本さんの農地で0.29マイクロであり、水野さん、複雑な思いでした。根本さんは、去年は作物を作らず、ひまわりを植えて、除染の効果は、ひまわりはセシウムを吸わなかった、ひまわりには幸せなことと根本さん言われました。
原発のニュース、保安院は大飯原発の近くの活断層が動いても大丈夫と言っています。保安院の地震・津波の専門家は、若狭湾の活断層3つの連動の可能性があり、関電、連動を想定して、その際の揺れは耐震性の範囲内(想定内)と言っています。760ガルの強さと言う判断を妥当としています。しかし、過去の地震では900ガル、2000ガル(中越地震)もあったのです。しかし、保安院はなくなり、原発への責任はその際に問えないのです。
また、民主党前原氏、泊原発の止まる5月までに再稼働をすると言っています。野田政権の閣僚が再稼働に言及するのは初めてと言うことです。前原氏、原発のひとつも稼働していない日本はないと言いたいのです。
小出先生のお話、今週のお話で、福島2号機、水が60cmしかなかったことでリスクがあるのか、60cmしかないと始めから思っており、3月15日にサプレッションチェンバーで破損(下の方)があり、水がたまらないので、60cmならそうだと思われていたのです。それだけの破壊があったことを裏付けており、放射能の最後の防壁、格納容器が壊れて、融けた炉心をどこまで冷やせているのかということ、水が50度でも、炉心がその状態なら水で冷やせない、燃料がないからで、水が接触できないのです。
そして、先ほど出られた根本さんより、福島の農業についてお話があり、根本さん、ひまわりに一縷の望みを託したのにダメで、ひまわりはダメと分かっていたのです。根本さん、でも、何もないよりいい(代々の土地を使いたい)ということなのです。根本さん、父親となぜ作付けしないかやりあったのです。ひまわり、植えて5~10日でチェルノブイリ、ベラルーシのダメと言うデータが来たのですが、それでもやったのです。
国が新しい除染を進めており、根本さんも小出先生のお話は妥当、放射能と付き合うしかない。2000ベクレルの土地だと、下は粘土質で、福島に明日も明後日もなく、30年、50年セシウムの年代で付き合うしかないと言うのです。
小出先生、二本松は、放射線管理区域にしないといけないし、根本さんに本当はそんなところに住んでほしくない。しかし、そこで生きて、作物を作ってきた歴史があるのですが、残念ながらきれいに出来ない。セシウム134と137で、134は2年で半減するが、137は30年経たないと半分にならず、ひまわりでも吸い取れない、セシウムが自分で減るのを待つしかなく、根本さんが亡くなる頃でもまだ半分と言う相手が地面にいて、闘いにくい相手で、故郷の土地が、生きている限りセシウムで汚染され続ける状態なのです。どうやって向き合い、食べ物が出てきてどうするか、なのです。
根本さん、子供たちは安全なものを食べて、大人が汚れたものを食べよという小出先生の主張について、違和感があり、大人も安全なものを食べるべきで、農地は食べ物を供給するのではなく、次の世代に残したい。放射線管理区域で、次の世代に伝えるカナリアでもいい。食べ物を作るだけではない、今年は作る、倫理的に、父への、親への思いで、こんなことで墓場に行ってほしくない、一緒に生きてきた思いを何とか伝えたいのです。そうやって、生きざるを得ないのです。
根本さん、単に食べ物を作るのではないと言われて、小出先生、根本さんが作られるものを喜んで食べたい。土地が汚れていたら、作物も汚れる、農民の責任ではないが、物理化学的には仕方ない。土地を守る気持ちは分かる、作ったものは、大人が引き受けるべきと小出先生言われるのです。
しかし、根本さん、作るのと食べるのは違う。置き去りにされる思いもあり、汚染されたものは食べるべきではない、食べて支えるのではなく、食べないで支える、物流でものが来る社会で、農業をやっている人がいることを忘れないでほしいと言われるのです。ものすごい覚悟なのです。
食べることではなく、農地を支える方法、小出先生は、根本さんがこんな汚染地でも農地を支えるのはありがたいが、農民は根本さんみたいな人ばかりなのか、食べ物は生き物を支えるから誇りになるのではと言われて、根本さん、10年後の人口減少を見ている、農業は食べ物の供給ではなく、自然エネルギーの宝庫で、新しい農業の価値を、高齢化社会の、食料、エネルギーをどうまかなうかと、福島だからやりたいと言われました。
小出先生、農業で生きてきた人間ではないが、原子力が農業に、言葉に尽くせない重荷を背負わせて申し訳ない、再生してほしいと思うものの、どうしていいか分からず、迷っている毎日と言うことでした。根本さんたちに、ここで踏みとどまってほしいと言うことでした。ここで、小出先生のお話は終わりです。
その後も根本さんのお話があり、近藤さん、作物が食べられなくても鍬を持って営むとは生き方であり、次世代への農業へのアピールとしてあり得る。新聞の仲間で、新聞が出せないなら壁新聞を作るのと通じるものがあると言われました。
根本さん、どう生きるか、日々問われる中で、代々の土地で作りたいが、消費者に汚染されたものを食べてほしくない。どうやって支えるか、京都だと大飯原発の問題もあり、自分たちの便利さはどこにあるのか、沖縄、福島のことがあり、福島事故で、SPEEDIで、南西の風が吹いたら関東は全滅していた、そういう想像力が要る。自分がどうなるかを想像するのが、最大の支援、根本的な生き方を見直してほしいと言うことです。
水野さん、農地で生み出さないとダメと思われて、根本さん、自然エネルギーにしたい、日本が7000万人になった時に、農業の姿も変えないといけない。エネルギー供給地、保養地もある。都会の方が災害のリスクが大きいと言われるのです。
根本さんの、産直カフェに行き、全部放射能検査をして、A4に書いてある売り場があり、この数値なら納得して買えるものがあると水野さん言われました。手間暇とお金がかかり、検査費用は東電に請求するのです。東電が数千億円国に請求しているが、国民の税金で、賠償も非課税で、自分の出した金でもらっている、償いではなく、こうして生きたいから、こういう生活を実現してくれとなるのです。これで、根本さんのお話は終わりました。
リスナーより、複雑な気分で、小出先生のお話も、根本さんのお話も分かる、根本さんが本来の形に戻れるのを望むと、そういう複雑な気持ちの人が多いのです。近藤さん、複雑なものはそのまま見つめないといけないと言われました。生きることの意味、時間、土地の概念を考えさせられたと言われました。以上、お知らせいたしました。
=====29日、山内知也さんのお話=====
永岡です、サンテレビのニュースシグナルで、東北の被災地の瓦礫処理問題のことが取り上げられて、その中で放射能計測の専門家、神戸大大学院の山内知也さんのお話がありました。
山内さん、除染は難しく、今のような形では全く進まないとして、学校を県外に思い切って移転させて、そして、その上で1~2年かけてメリハリをつけてグラウンドの土を入れ替えるなどしないと除染は進まないとコメントされました。
また、瓦礫問題、阪神・淡路の際に被災地のがれきを大阪、和歌山で受け入れてもらったのですが、その際に1トン当たり2万円の費用を支払っているものの、今回は1トン6万円支払うのです。この話は、私も初めて聞きました。そして、山内さん、そういうコストの発生するものなら、被災地の地元でやった方が、被災地にお金も落ちるのではないか、被災地の痛みを分かち合うことにそれでなるのかというコメントがありました。
この他は、関西広域連合で瓦礫の受け入れ、国の基準などより厳しいベクレルで取り扱うと言うことなどが報じられましたが、山内さんのコメントは他のメディアでは見ていないもので、貴重なので、これをお知らせいたしました。
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