シンポジウム「日米地位協定を問う」から① 松元剛氏(琉球新報政治部長)の報告【動画と資料】
- 2012年 4月 4日
- 時代をみる
- 日米地位協定松元剛沖縄
3月31日明治大学リバティーホールで開催された伊達判決53周年シンポジウム「日米地位協定を問う」 から松元剛氏(琉球新報政治部長)基調報告を動画で掲載します。
<基調報告Ⅰ>
【沖縄から命の重さの二重基準をただす―地位協定改定のうねりを―】
動画その1→http://www.youtube.com/watch?v=J_03Wh8GA5Y
動画その2→http://www.youtube.com/watch?v=OJFySz3vrIE
動画その3→http://www.youtube.com/watch?v=y7AxnFBhu9Y
また以下に集会で使われた資料を転載します。
————————–資料——————————–
2012年3月31日
伊達判決53周年シンポジウム「日米地位協定を問う」
【沖縄から命の重さの二重基準をただす―地位協定改定のうねりを―】
琉球新報記者 松元剛(政治部長)
※プロローグ
「犯す前に『犯しますよ』と言いますか」 田中聡沖縄防衛局長の暴言が意味するもの
①昨年11月28日の“オフレコ懇談会”で飛び出す
②琉球新報が報道に踏み切り、田中氏は更迭 一川防衛相の参院問責決議可決
③2011年に相次いだ沖縄蔑視発言や官僚支配の病弊を浮き彫りにする発言が伏線に
☆「抑止力は方便」(鳩山由紀夫前首相)→防衛官僚に屈服した「県外移設」公約
☆「沖縄はゆすりの名人」(ケビン・メア国務省日本部長)→更迭
☆「米政府はあまり早計に柔軟さを見せるべきではない」(09年10月の日米協議で防衛省の高見沢将林防衛政策局長、米政府に裏で県外移設を検討するなと伝達)
☆「踏まれても蹴られても、県民の理解得る」(玄葉外相、攻撃される側に自らを置く)
④普天間移設作業を性的暴行にたとえる。県民の尊厳踏みにじる
⑤代替基地建設は力ずくで進める 防衛官僚に息づく沖縄蔑視が赤裸々に
⑥「クチ、ハゴーサン(口が汚れる)」仲井真弘多知事の嫌悪 民意を凝縮した反応
⑦オフレコ破りの余波 県内読者の圧倒的支持と一部大手紙とジャーナリストの批判
⑧政治・政局報道に乱用傾向にあるオフレコの問題の再検証を
1、米兵事件・事故の意味 施設管理権を軸にみる沖繹基地問題と地位協定の弊害
①1995年の少女暴行事件後、16件のレイプ事件発生。年1件以上
※綱紀粛正では、防止は無理
「2万5千人の兵士がいる中で、ばかなことをしでかすやつを1人も出さないのは無理だ」(米政府関係者)。統計学的に、女性の人権を踏みにじる事件は再生産されていく
※大幅な兵力削減、在沖米軍の大幅縮小なしでは、再発防止になり得ない
②2005年キャンプ・ハンセン「都市型戦闘訓練施設訓練強行」
住宅から300メートル、高速道路から200メートルの地点に実弾射撃場が
※欧米では許されない施設 なぜ沖縄に 日米の二重基準露骨に
※地元の絶対反対を無視、米軍の「安全」説明をうのみに歯止め掛けぬ日本政府
※キャンプ・ペンドルトンとの落差 あらゆる訓練を地元コミュニティーに公開
③厚木、嘉手納、普天間騒音被害に歯止め利かない日本→米軍再編後、顕著に
★嘉手納基地のF・未明離陸相次ぐ 米本国の着陸時間優先「明るい時間に降ろしたい」
★基地運用を規制できず
★形骸化した「騒音防止協定」→深夜・早朝の爆音発生はむしろ増加傾向に
★「普天間」爆音も違法状態と認定
④在沖米軍 日本人警備員 民間地で拳銃携行 憲兵隊司令官が指示(・年2月)
★外務省「区域外では禁止」 識者「日本の銃刀法違反」
⑤万引き米人2少年(軍人の家族)を連行 沖縄県警の警察権侵害(・年4月・日)
★私人(店員)が現行犯逮捕→県警の事情聴取拒否→身柄横取り
⑥1974年伊江島事件 裁判権放棄で日米が密約「覚書」米公文書で新証拠(5月・日、琉球新報報道)
★米の強硬姿勢に屈し、取り引き ★今に続く「対米追従」
※「日米地位協定の考え方」(永久秘)→「行政府限りで裁判権不行使を決定し、これにより検察当局(及び裁判所)を法的に拘束し得るかという問題がある」 外務省自ら問題を認識
⑦金武町伊芸区の流弾事件 米軍の捜査非協力→虚言呼ばわりされた被害者の心痛→県警の立ち入り調査は1年後→真相解明ならず→被疑者不詳の書類送検→不起訴そして、被害者は解決みずに死去
※本土復帰後、流弾事件21件の異常 太もも撃たれた19歳の女性も 新婚カップルのタクシーも
※「自国でできない射撃場を沖縄では『安全だ』と言い張って造り、米軍は実弾を放つ。そして、また演習場から伊芸に弾が飛んだが、真相はやぶの中だ。米国民とウチナーンチュの命の重さは違うのか」(怒りをぶちまける伊芸区行政委員長の登川松栄さん)
※日米地位協定が基地被害の源流であり続ける構図は、現在も起きている事案と過去の暗部を発掘した二ュースで鮮明になっている。
※外務省は、米側と交渉したように装い、米軍の主張を容認し、玉虫色の決着でお茶を濁す状況が繰り返されている
2、米軍へリ沖縄国際大墜落事故(2004年8月13日)と「対米従属」
①民間人死傷者なしは奇跡
②米軍の強硬な現場封鎖→日米地位協定上、定めなし。現場の1軍曹の判断を日本政府が追認 基地被害改善の壁として「日本政府」が立ちはだかる構図。「ここはイラクじゃないんだ」。だが、ほどなくして、米軍の行動を追認した外務省
③日米地位協定の弊害を露呈 本土で許されていた検証を許さず、差別的取り扱い
④本土の報道との大きな温度差「痛みの共有」が欠如 人が死ななければいいのか。県民の怒りがメディアに向く異常な状況
⑤日米の二重基準が鮮明に
★本土自治体が反対すれば、すぐに移設をあきらめるのに、県内に固執
★米本国では設置できない危険な飛行場を放置
★本土では認められていた現場検証 九州大(1968年)、横浜緑区へのファントム墜落(1977年)、愛媛・伊方原発近くへのCH53ヘリ墜落事故(1989年)
3、嘉手納基地遊覧飛行クラブのセスナ機墜落事故 08年10月25日発生
※米軍機墜落時のガイドラインは内周を米軍、外周を県警が警備→沖国大事故の弊害温存
①名護市の小学校かすめ、サトウキビ畑に墜落
②県警の検証要求を無視し、事故翌日に機体撤収
③航空機事故の最大の物証 またも米軍側に
④娯楽・余暇用のセスナ機さえ、「軍事秘密」なのか
⑤2004年の沖国大ヘリ墜落事故の弊害、いまだに息づく
⑥繰り返される対米追随 当初は、飛行記録の沖縄県警への提供を渋った国交省
4、着天間飛行場の辺野古代替新墓地環境アセス評価書のずさんさ「建設ありきの日本アセス史上最悪のアセス」
はぐらかし、すり替えを多用し、環境への影響をひた隠し 知事意見書「辺野古は不可能」と駄目出し
①危険機種MV22オスプレイの配備を後出し明記 日本政府が1996年から隠蔽
②住民意見は準備書で最後 住民は永久に意見を述べる機会失う
③飛行経路を「台形」から「楕円形」にようやく修正 軍用機が台形には飛べない
④ジュゴンへの悪影響は歴然米軍運用で配慮と記すも、親制の権限はない
⑤辺野古で多数産卵跡見つかるも、ウミガメの「主要な上陸箇所でない」
⑥環境影響評価審査会の「不可能」見解を知事が踏襲 異例の厳しい内容
5、環境アセス・オスブレイ配備で浮かぶ日米の二重基準基地問題での追及強める必要性
基地重圧の深層「構造的差別」と結びつく環境面での辺野古移設論議の高まりを
①米国では許されないことが沖縄でまかり通る
②米環境保護庁ハワイ・カネオへベイ基地のオスプレイ配備で学習時間中は45デシベル以下と海軍省に勧告 辺野古では64デシベル 米と同じ基準なら辺野古移設は不可能
③現行の普天間基地配備ではアセス実施せず
④滑走路の延長線上に住民は住めない米国のクリアゾーン 宜野湾は3600人が住む
⑤沖縄県民、日本の基地周辺住民の人権侵害に頬被りする日本政府の罪
⑥日出生台などの米軍実弾砲撃演習 演習通報の日米二重基準も露骨
6、米軍属の公務外交通事故 地位協定改定求める声 草の根で盛り上がる
①成人式で帰郷の男性の無念の死 遺族の痛みに同級生が寄り添い、運動へ
②署名7万人政党、労組主導でない運動に展開 沖縄県軍転協、自治体も後押し基地問題の新機軸
③日米政府を動かす
※米軍属による公務中の死亡事故など重大な犯罪について日米地位協定を運用改善し、米側が刑事訴追せず、日本側の裁判権行使に「好意的考慮」で応じれば、日本側で訴追できるとの新たな枠組みで米側と合意
④公務外交通事故で容疑者起訴(2011年11月25日)→
⑤地位協定の不平等性にあらためて光当て課題はまだまだ山積
7、日米地位協定、「日米地位協定の考え方」とは
①日米安保条約に基づき、在日米軍の法的地位を定める。施設区域の提供、適用、米軍人の地位を定める
②日米地位協定の考え方外務省が1973年に作成した「永久秘文書」。83年に増補版を作成。ページ数は135から259ページとほぼ倍増した。地位協定の解釈マニュアルで、政府の条文解釈の公式見解のほかに、国会答弁などに備えた対応なども記されている。条文を超えた米軍優位の解釈も目立つ。
8、地位協定の源流 行政協定
①米軍特権を温存し、地位協定へ
②1972年の沖縄の施政権返還に伴い、広大な在沖米軍基地を抱えることになるが、過密度の高い在沖基地が及ぼす住民生活への弊害に対する備えが乏しいまま、本土の米軍基地を前提にした地位協定を沖縄に適用した。いろいろな矛盾が出て、基地の運用がままならなくなる。対応に苦慮し、沖縄の基地を使いやすくするための解釈象を結んだのが「地位協定の考え方」。それでも不備が重なり、「増補版」で補強した。米軍優位の「合理的解釈」の積み重ね
9、外務省永久秘文書『地位協定の考え方』、地位協定改定キャンペーン「不平等の源流」(2004年)の取材を通して。米軍特権の補強に抗う
※「日米地位協定の考え方」(1973年135ページ)
※「日米地位協定の考え方増補版」(1983年、259ページ)
在日米軍の圧倒的優位な存在を背景に、法解釈を曲げてまで、在日米軍の組織兵士の擁護に回る姿勢が鮮明。日本の主権さえ損なう対米追従解釈がこれでもかと盛り込まれている
①「地位協定の考え方」73年版 対米従属外交の恥部明らかに
②2004年1月1日号での特報→県、基地所在市町村の反応大。連日の続報展開
③外務省の反応。黙殺も全文掲載(全13面)でようやく存在認める。公開は徹底拒否
④書いた元事務官(大物大使)突き止め、執筆と増補版の存在認める。外務省は、公開を徹底拒否「米国との信頼関係損ねる」
⑤増補版の特報とせめぎ合い→露骨な情報源探し。「西山事件」=沖縄返還密約事件をちらつかせ、「圧力」?。17ページを使い、解説付きで全文掲載に踏み切る
⑥政府内良識派?(沖縄現地機関)からの激励と忠告。だが、東京との溝は大
⑦県民の反応。密約、対米追随外交への憤懣。「意地見せろ」と激励
※国民をだまし、佐藤首相の政権益を最優先した「沖縄返還密約」だが、対米関係維時に固執する政府の「密約体質」は変わらない
10、「日米地位協定の考え方」にみる日米関係と憲法問題
①国民を「米国兵」にされても許し、追随した外務省
②国内法を改正し、平和運動を封じた国会
③「基地間移動」の詭弁が許す「低空飛行訓練」→歯止めかけるイタリアとの落差大
④裁判権放棄し、殺人未遂に罰金刑許した外務省→山城君事件
⑤武器輸出三原則の「尻抜け」=レンタル空母も可能?
⑥基地汚染に歯止めなく=原状回復義務なしの米軍
⑦格安自動車税、免除されていた車庫証明
⑧使い放題の電気代、水道代
⑨公務外で飲み、盗み働いても「公務中」のなぞ=クーリエ(急使)
※度を越した対米追従が、基地被害に直面する国民の人権侵害を助長している。日本政府は、基地被害を解決できない根底に横たわる地位協定の弊害を改善するのではなく、さらに米側優位に仕向けている。憲法問題と位置づけも必要ではないか。
11、外務省の詭弁 身柄引き渡しのわずかな先進性ばかりをPR 後進性を覆い隠す
※歴代外相は「世界で最も進んでいる」と強調するが、結局は米軍の「好意的考慮」に基づく、米軍の裁量が生きる構図。沖縄の強姦未遂事件や否認事件では、引き渡し拒否事例も。
12、米軍再編と地位協定環境汚染除去の制度化は喫緊の課題
①横須賀の米原子力空母寄港12号バース問題
②米軍機の傍若無人な低空飛行訓練に歯止めなし 中国・四国での被害
☆独伊の先進性と差が顕著
※ドイツ、イタリアでは、米軍の訓練と公共の安全を天秤にかけ、中止させる権限あり。低空飛行も、基地司令官の権限で中止に。
※米軍の訓練計画は独、伊の基地司令官に提出。騒音など、住民から苦情の出る訓練を検証し、住民生活に影響が出る恐れがある場合、訓練を容認せず、中止、変更させる権限あり
③「基地汚染キャンベーン報道」(1998年~)を通して
※嘉手納基地のPCB投機(1960~70年代)を特報
※地中から、PCB検出→基地汚染が長年残り続ける実態
※米本国の航空基地の汚染状況 ことごとく汚染 莫大な浄化費用
④環境保全で、大きく遅れる日本。沖縄の基地跡利用にも暗雲
☆「地中の爆弾」 牧港補給地区(浦添市)とベトナム戦争
☆嘉手納、昔天間の両飛行場を抱える
☆返還後、跡利用される前に続々と見つかる汚染基地
⑤基地内立ち入りの権限なし 基地履歴なしの在沖基地 おそらく本土米軍基地も
「沖編の基地は欧米に比べ、アジアや中東の前線に近い分、酷使されてきた。米本国の環境法の規制がおよばない点が災いし、1990年代まで環境管理は極めてずさんだった。嘉手納、普天間の両航空基地の土壌や地下水からは、どんな汚染物質が出てくるか分からない」(米本国の閉鎖基地の環境浄化の担当者)
→在日米軍基地では返還が決まっても、環境汚染を調べる基地立ち入り権はなし。緊急時の立ち入り権限もなし。さらに、存在しない「基地の履歴」(過去にどこで、いつ、どれだけ、有害物質を使用したか。環境浄化に不可欠な記録が不存在が大半)
※公表されず、お蔵入りした「切り札」1973年の基地立ち入り合意→外務省の大罪
⑥地位協定4条 米軍の環境汚染浄化義務を免除、排他的基地管理権で立ち入り調査を認めず→弊害際だつ
☆キャンプ・桑江の返還跡地の相次ぐ有害物質検出(カドミウム、鉛などの重金属)
☆返還に備えた、事前調査を認めないツケ噴き出す
⑦米軍再編で本島中南部の大規模返還が予定事前の環境調査は不可欠
★韓国は、米軍再編による米軍基地返還跡地の浄化責任を米軍が負うが、国同士の力関係で米軍が責任免れる。覚書でなく、改定で決着させる必要性示す
★ドイツ、イタリアも浄化責務を負わす
———-以上集会資料を転載————-
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1895:120404〕
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