小出先生、「原子力に手を染めたのが間違い、再稼動やってはいけない」
- 2012年 4月 20日
- 交流の広場
- 小出裕章松元保昭脱原発
みなさまへ 松元
小出先生の「たね蒔きジャーナル」4月18日分の転送です。今回は原発推進派の澤田哲生さんとの対談です。その後、「瓦礫の広域処理について」の特集報告があり、17日の「ある原発作業員の死」とあわせてお届けいたします。
「原子力に手を染めたのが間違い、原子力に頼らない世界に踏み出す機会」「再稼動は、やってはいけない」と語っています。
原発作業員、大角信勝さんの亡くなられた話を聞くと、本当に東電は頭のてっぺんからつま先まで「隠蔽」で「腐れきっている」(山本浩之さん)と思います。
●「小出裕章非公式まとめ」に生の声がアップされています。http://hiroakikoide.wordpress.com/
=====18日、小出先生と澤田哲生さんの対談=====
永岡です、毎日放送ラジオのたね蒔きジャーナル、今日も水野晶子さんの司会、毎日新聞専門編集委員の近藤勝重さんの案内で放送されました。今日は知られざる内幕の3回目、3月にも放送された小出先生と、東京工大の澤田哲生さんの対談の続編です。
原発のニュース、関電が電力不足の場合の計画停電の案を出しています。地域別にやり、鉄道や病院は対象外で、枝野氏、不安があれば計画を立てるのがいいと言っています。一昨年並みの猛暑だと関電は18%不足、去年並みなら5.5%不足すると関電が言っています。
大飯原発、福井の原子力安全委員会が訪れて、非常電源が土砂崩れの場所にないか見ています。大飯は国が要請し、県が独自に調査しています。安全委員会の中川委員長、個人的には安全を確認できたと言っています。
大飯の再稼働について、野田総理らの議事録なしに、橋下氏、言語道断と批判し、誰がどのような発言をしたか記録しろと言っています。
原子力推進を目的とした原子力大会が開幕し、細野氏、政府にも責任あり、事業者の責任もありといい、今井敬会長(永岡注:この人は元新日鉄会長)は再稼働がいると言っています。
そして、小出先生と澤田さんの対談、小出先生スタジオでの出演であり、澤田さんはイタリアから電話出演です。
大飯再稼働について、小出先生はやってはいけない。原子力に手を染めたのが間違いで、もうすぐ日本の原発が全て止まる、原子力に頼らない世界を踏み出す機会なのです。澤田さんは再稼働すべきであり、大飯は緊急措置もして、ストレステストの結果も出て、1次評価で政治的な評価の判断は出ている、決められた手続きに伴い判断できるなら再稼働すべきなのです。安全だから再稼働すべきで、1次評価は総合的な安全評価ではなく、津波・地震に耐えられるかの余裕が広がったかの評価で、余裕は広がっており、正当に評価されるべきと言うものです。
小出先生、澤田さんに全く同意できない。原子力の安全性は想定したことに技術的にどうかと、国も安全基準を作ったのに、福島で覆った。ストレステストも従来の考えでやり、少し厳しく考えた程度、そんな考えが間違いと学ばないといけないのです。原子力をやるなら根本に立ち返るべきなのに、政治評価でやっているのです。
リスナーより澤田さんに質問で、澤田さんの原発推進の理由を教えてほしい。資源がないからか、まさか核抑止力なのか(電気は足りている)について、核抑止力ではない、原子力エネルギーは特別なエネルギーではなく、放射能を恐れることもあるが、宇宙は放射線の海であり、宇宙のメカニズムの結果ウランやプルトニウムが出来て、1930年代に核分裂が発見され、平和のエネルギーになる。うまく使うと良いのです。
しかし、小出先生、澤田さんと正反対で、宇宙には放射線が充満しているが、その時には地球に生物はいなかった。宇宙からの放射線が無くなり、ようやく生命が地球に出来た。放射線はもともと危険であり、それを生み出してはいけないのです。
澤田さん、核分裂エネルギーは、原子核の変化で出るが、これが自然であると思うのです。原発も自然エネルギーと思う(自然エネルギーも増やすべき、しかし今から10年後は原発の2~3割のエネルギーの代替は無理、原発も、自然エネルギーもうまく使うべきなのです)。
小出先生、自然エネルギーもリスクがあり、むやみに増やすべきではない。原発を無くしても、10~20年は化石燃料で行くが、出来るだけ自然エネルギーに移行すべきなのです。
高校2年生からメールがあり、原発を無くして、どのようなエネルギーでやるかについて、小出先生、今は火力・水力・原子力だが、原子力なしでも火力+水力で日本はOK。電気をたくさん使いたいとしたら破綻する、エネルギーを使わない+自然エネルギー移行すべきなのです。澤田さん、自然エネルギーには時間がかかり、原発なしで、今化石エネルギーにほとんど頼る。日本には化石燃料はなく、原発止めたら年間2~3兆円かかる+化石燃料も世界の市場があり、インド、中国の買い占めで逼迫している。高い金を出さないと買えない国もあり、日本は原発で世界に迷惑をかけないようにすべきなのです。
近藤さん、大飯再稼働をなぜ急ぐのか、福島の検証なしで、100倍も200倍も上回る必要性がいると言われて、澤田さん、福島は重要だが、津波は東北一帯を襲い、女川は津波対策で助かり、福島第2も安全に止まり、福島5、6号機は電源が高いところにあり助かった。違いがあり、これが今後どうするべきかの答である。大飯は急いでいると言うが、昨年来ストレステストをやり時間をかけている。やるべきことを時間をかけてやっていると言うことです。
近藤さん、津波ではなく地震が原因との説もあり、澤田さんの意見は津波説で、これについて、女川も福島第2も事故にはならなかったが、女川は一系統だけ外部電源が生き延びた、偶然である。福島第1の5,6号機もたまたま生き延びた、偶然で事故になる場合もある。そういうことを起きないようにとストレステストをやっても、偶然の支配することには無力。ストレステストで安全にならないのです。危険なのにやるべきなのか考えるべきなのです。
リスナーの質問で、南相馬市の警戒区域へボランティアに行くが、災害ボランティアに行ったものの、帰宅する住民へのボランティアに行くのに、小出先生は警戒区域への帰宅を避けるべきなのかについて、自分の住んでいた町、地域に戻りたいと思うのは同じ。今南相馬は放射能で汚れているが、戻りたい思いはある。それを尊重したいが、そこも放射能で汚れ、日本では1ミリシーベルト以上の被曝を禁止しており、特に子供は帰ってほしくないのです。お年寄りが帰りたいのは当然だが、子供を返すのには反対。ボランティアに行く人の気持ちはありがたいが、そこへ行くと被曝し、ボランティアも被曝の管理が出来ないと行くべきでないのです。
澤田さん、体験から、福島事故で南相馬、飯館に10回以上行き、除染のボランティアをして(飯館に近い農家)、農家は事故後もそこに住んでいる(計画的避難の外)、線量はまだら模様で高低があり、除染ボランティアに行ったところは、線量はそれほど違わず、何十kmで線引きされているだけであるのです。放射能の墓場を作るのは福島の人を傷つけると言い、人の住めない地域もあり、リスナーより、何ミリシーベルトなら危ないということについて質問があり、1ミリは法律の目標値で、国際機関、IAEAの勧告で事故の回復期に5~20ミリは浴びても健康に大きな影響なしとなり、ボランティアも、住む人も客観的な情報を聞いて秤にかけて、最後は自分で決めるべきと言うことです。1ミリを超えるなら、帰らなくていいというものもあるのです。
小出先生、周辺に住めないというのは住む人を傷つけるとのこと、住めないところはたくさんあり、セシウム137が半減するのに30年かかる。そこを故郷と感じる人が、30年戻れないなら故郷はない。故郷を失うことを、国がはっきり言い、帰れる幻想を国が与えてはいけない。日本は原発の事故はない、年間1ミリ以上の被曝をさせないと言って、異常事態の時には20~100ミリ我慢しろと言うのは無責任。1ミリ以上の被曝をする人がいるなら、そういう人が避難するのを助けるべきなのです。
これで時間になりました。近藤さん、真実と言うタイトルがある本を出し、真実は厳密に言うと一つしかなく、真実に近づくためにどんな事実を選択するかは主観であり、しかし、今回の問題は立場が違っても同じことを繰り返さないという立場なら接近するはずなのに、事故は小出先生は偶然性、沢田さんは大丈夫と捉える。避難する人を傷つけるかも違う。学者の話としては、事実の取り方でこれだけ違うのかと近藤さん言われました。小出先生は安全な原発はない、沢田さんは安全な原発は出来るとしていると言うことです。今日は以上の、小出先生と澤田さんの対談をお送りいたしました。
====18日、震災瓦礫の広域処理について====
永岡です、毎日放送テレビのニュース「VOICE」で、震災瓦礫の広域処理の特集がありました。先週もありましたが私は知らず、この2回目を見ました。
前回の放送の後、視聴者90人よりメールがあり、広域処理に賛否両論が出ました(この中には、瓦礫の放射能汚染の問題もありましたし、広域処理を引き受けるべきとの声と、放射能の不安を語るものもありました)。
今回は、被災地によって、瓦礫処理能力にあまりの差があることが分かりました。
阪神・淡路大震災の際に、1400万トンの瓦礫が出て、その1割を他の自治体にやってもらったのですが、神戸市はそれを一切しなかったのです。理由は、神戸市は西区に広大な最終処分場を持っており、そこで処理できたからです(瓦礫のうち、木などの焼却できるものの焼却灰を処分するもの)。
これに学び、被災地の仙台市では、仮設の焼却炉を作り、自前で瓦礫の処理をしています。ここには、神戸からノウハウを学び、自分で瓦礫を処理して、それにより現地に雇用も生まれ、復興に役立っているのです。これは仙台に神戸と同じく最終処分場があったからなのです。
しかし、同じ宮城でも、石巻市には最終処分場はありません。600万トンの瓦礫を持つ石巻は、瓦礫の仮置き場が23か所あるもののパンク寸前で、現地では瓦礫が発酵し火災、悪臭などが出ています。こんな状態では復興も進まないと石巻では言っています。
つまり、被災地の処理能力により、広域処理の必要性が異なる(自前で処理できるところならそれが復興に役立つが、何もできないところもある)わけです。
VOICEでは今後も瓦礫問題を取り上げるとのことです。今日の特集をまとめてお伝えいたしました。
=====17日、ある原発作業員の死=====
永岡です、関西テレビのニュースアンカーで、原発作業員の死に関して報道がありました。
亡くなられたのは大角信勝さん(享年60歳)、原発で全国にて働いていた溶接工の方です(住んでおられるのは浜岡原発のある御前崎市)。この奥様で、タイ国籍のカニカさんが証言されました。
福島事故の後、作業員は1日平均3000人、延べ80万人が働いています。
大角さん、昨年5月に福島に入り、元請けの東芝から見て4次下請けのところです。が、午前6時に入り、6時50分に具合が悪くなったものの、当時福島原発に医師がおらず、作業員が心臓マッサージなどをしてJヴィレッジに運び、しかしそこにも医師がおらず、結局いわき市の病院に運び、医師の処置まで2時間40分もかかっています。そこで亡くなられました。
ところが、東電は大角さんの死と作業の因果関係はないとして(放射線も温度も過酷な環境ではなかった)います。どころか、大角さんの葬儀にも東電は来ないどころか、電話一本なかったのです。
カニカさん、ご主人の労災を申請しました。ところが、これも弁護士の方、本来なら東電や東芝が労災が通ると言わないといけないのにやっていないと言われました。
そして、福島の作業環境の改善を労働側が申し入れています。原発は最近技術ではなく、30~40年前のままの現場だと言われました。昨年5月の段階では、作業員の環境はひどいものだったと、医師の愛媛大の先生も言われました。
そして、大角さんの労災は通りました。カニカさん、これで、大角さんのお墓をタイに作りました。大角さん、カニカさん以外に身寄りがいないのです。ところが、東電はどうして労災が通ったか、分からないのでコメントできないと言うのです!
カニカさん、大角さんと、老後、タイで農業をする夢もあったのに、それもかなわないものとなりました。カニカさん、原発で働く人はみんな家族であると言われました。
大角さんの後も、作業員が3人亡くなり、しかし東電は事故との因果関係を否定しています。
原発作業員の実態は、先週のたね蒔き特番でも報じられましたが、キャスターのヤマヒロさんこと山本浩之さん、東電は腐りきっている、こんな会社を存続させていいのかとコメントされました。
関西のテレビでは原発特集、結構やっています(今日はこの他に読売テレビで福島から京都に避難した人の話もありましたが、最後しか見られませんでした)、これをお伝えいたしました。
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