青山森人の東チモールだより 第208号(2012年4月20日)
- 2012年 4月 20日
- 評論・紹介・意見
- 大統領選挙東チモール青山森人
タウル=マタン=ルアク
「責任を受け入れる用意がある」
青山森人 e-mail: aoyamamorito@yahoo.com
5年前より許容量が大きくなったフレテリン
4月16日の夜9時ごろテレビで流れた選挙速報で現れた大勢はその後も大きな変動はなく、19日の時点で報じられている結果は以下のとおりです。
ル=オロ候補—————-38.77%
タウル=マタン=ルアク候補—61.23%
なお、投票率は、第一回戦の投票率78%より5ポイントも下がって、約73%となりました。
第一回戦でル=オロ候補が獲得した得票率28.76%に、ル=オロ候補の支持を表明した他候補(第一回戦)の得票率を加算するとこうなります。
28.76%+1.56%(マヌエル=ティルマン)+ロジェリオ=ロバト(3.49%)+0.40%(マリア=ド=セウ)+0.37%(アンジェリタ=ピレス)+1.35%(アビリオ=デ=アラウジョ)+0.83%(ルーカス=ダ=コスタ)=35.20%
訂正:『東チモールだより第203号』でアンジェリタ=ピレス候補の得票率を「0.73%」と書きましたが、正しく「0.37%」でした。お詫びして訂正させていただきます。
選挙戦半ばで亡くなったシャビエル=ド=アマラルを党首とするASDT(チモール社会民主協会)は事実上の内部分裂を起こし、ル=オロ支持派とタウル支持派が存在したので、ASDTからも一部ル=オロ候補に投票した人たちがいたことでしょう。そして、有力候補でありながら第一回戦で退いたジョゼ=ラモス=オルタ大統領とラ=サマ国会議長の得票率を合わせると34.78%ありますが、二人は決選投票の両候補のどちらを支持するかは賢明にも表明せず、自分たちの支持者へ自由投票を呼びかけました。したがってここからもいくらかの票はル=オロ候補へ流れたかもしれません。
これが、単純な机上の計算の数字35.20%に加わった3.57ポイントの出所です。5年前の決選投票でル=オロ候補が獲得した30.82%より約8ポイントも増やしたのですから健闘したといってよいでしょう。フレテリンは5年前より許容量がでて進歩したかもしれません。
この調子でフレテリンが7月7日に実施予定となっている国会議員選挙に臨めば、政権与党になれるかどうかは別にして依然として最大政党という地位を保てるだろうし、国会内でも今より大きな影響力を得られることでしょう。
タウル=マタン=ルアク候補、支援者へ挨拶
4月18日、新大統領となることが確実となったタウル候補はタイベシの事務所で午後5時から支援者を前にして演説をしました。応援してくれた人たちや団体、選挙を監視した国内外の組織・ジャーナリストへ感謝の辞を述べました。
この中でタウル候補は「東チモールの人びとが与えてくれた責任を受け入れる用意がある」といいました。まだ控訴裁判所を通過した正式な選挙結果がでていないので、このような暫定的な表現になったわけですが、事実上の勝利宣言といえます。
関係各位にお礼を述べ、ル=オロ候補にも敬意を表しつつ、すべての東チモール人のための大統領になると語り、30分ほどの簡単な演説でしたが最後に、喜んでばかりいてはダメだとしめました。
インドネシア軍との戦争で犠牲になった人びとの生活向上にまずは新大統領の期待がかかるわけですが、これまでの10年間でなかなかできなかったことが簡単に達成できるほど世の中は甘くはないことはタウルさん本人が一番良く知っているはずです。期待はずれとなった場合、自分にどれほどの非難が集中し、政情不安定になることもかれが一番よく知っているはずです。5月20日に誕生するタウル=マタン=ルアク大統領の厳しい5年間が待ち受けています。
選挙事務所に到着したタウル候補は支援者から盛大な祝福を受ける。女性支援者たちが待ち構えるなかにはいると、素に戻ったかのように相好が一層崩れた。イザベル夫人がすぐそこにいるんですけどねえ。
2012年4月18日、タイベシの事務所にて。ⒸAoyama Morito
支援者の労をねぎらい、関係各位に感謝の意を、そしてルオロ候補に敬意を表するタウル=マタン=ルアク。
同、ⒸAoyama Morito
~次号へ続く~
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〔opinion0867 :120420〕
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