韓国併合100年首相談話を高く評価する -基本条約後も王朝文書を返却しなかった愚-
- 2010年 8月 16日
- 評論・紹介・意見
- 日韓併合早房長治首相談話
菅直人首相が10日発表した韓国併合条約発効100年に当たっての談話は韓国政府からも評価された。国内では、自民党や民主党の一部から「韓国を含むアジア諸国に何度謝るのか」という反対論があったが、菅内閣は謝罪談話に踏み切った。これは高く評価できる。民主党の一部にある強い反発は9月の代表選と絡んだ、為にするものではないか。
今回の談話の特徴は「当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りと深く傷つけられました」と、植民地支配の非を率直に認めていることである。日本国内では保守層を中心に「日韓併合条約は両国の合意の上で締結された。日本の植民地支配の産物ではない」という主張が行われているが、この強弁は公式に否定された。この意義は大きい。
日韓併合条約については、1965年の日韓基本条約の締結に当たっても、「合法的手続きを踏んだ条約」と主張する日本側と「併合条約そのものが無効」とする韓国側との歴史認識が食い違ったままであった。今回の首相談話は「日韓併合条約の締結によって36年に及ぶ植民地支配が始まった」と、日本側の従来の歴史認識を事実上変更した。
首相談話のもう1つの目玉は、日本政府が併合時代から保管していた「朝鮮王朝儀軌」など朝鮮半島由来の貴重な図書を返還することである。「儀軌」は朝鮮王朝時代の王室の公式記録で、韓国側が長らく返却を求めていた文化財である。このような当然、返還すべき文化財を日韓基本条約の締結後、なぜ45年間も日本政府が所持していたのか。いろいろの理由があるにせよ、愚かな行為というほかない。
日韓両国の報道機関の共同世論調査によると、日本国民の約60%が韓国民を友好的と考えているのに対して、日本人を友好的と考えている韓国国民は約30%にすぎない。
今回の首相談話によって、韓国世論が多少、改善される可能性がある。だが、最も近い隣国を真の友好国とするためには、植民地時代に与えた被害への個人補償を含めて、なお両国間にわだかまる多くの問題を政府レベル、民間レベルで解決しなければならない。
(8月13日記す)
〔opinion093:100816〕
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