思いやり予算削減は当然。NATO、韓国並みなら半減
- 2010年 8月 16日
- 評論・紹介・意見
- 坂井定雄思いやり予算朝日新聞防衛省
来年度予算要求で、防衛省が思いやり予算を含む予算削減に、抵抗している。菅内閣の方針に一応従って、当初要求を一割弱削って概算要求をまとめたが、削った分は1兆円超の特別枠から取ろうと虎視眈々。防衛省担当記者への説明をはじめキャンペーンをしている。
思いやり予算獲得のキャッチ・フレーズは、「思いやり予算は見直しに向けた日米協議の最中。一方的に削れば、日米関係に大きな影響が出る。」これは朝日新聞記事の引用そのままで、「と防衛省は懸念している」とかは書いてないが、防衛省の主張であることは間違いない。
日米協議では日本政府の予算編成の基本的な方針に従って、思いやり予算の1割削減を主張するのが、主権国家の外務省、防衛省として当然ではないか。
米国防総省も防衛省も「思いやり予算」という言葉を嫌い、「在日米軍駐留経費負担」という用語だけにしたい、という発言が双方から出ている。だいたい、日本政府が、思いやり予算という特別給付を始めた1978年当時とまったく違い、米国政府よりも日本政府の財政がひどく苦しくなっている。「思いやり予算」などは直ちに全廃すべきなのだ。
そして先ず、世界で異常に突出している米軍駐留経費負担を、せめてNATO,韓国なみの負担率に下げるべきだ。NATOも韓国も長年にわたり、40%程度を維持している。日本は74%前後だろう(2%ぐらいの誤差があるかもしれない)。なぜ、NATOと韓国に比べ、日本がこんなに高率の米軍駐留経費負担をしなければならないのか、菅内閣の外務省や防衛省は、どのような説明で国民を納得させられるだろうか。米軍経費負担を4年間に40%台にまで下げるためには、毎年10%強ずつ削減すればよい。まず来年度から、実行すべきだ。
それにしても、8月14日付朝日新聞朝刊の「概算要求―防衛省、見かけ上減らす狙い」はひどかった。一部引用するー「いずれも、実際に削減するのは困難な『義務的経費』ばかりだ。『思いやり予算は・・・(上記引用)』。歳出化経費は、削れば違約金を求められかねない。燃料が買えなければ自衛隊の訓練や活動がままならなくなる。」「防衛予算は、人件費と駐屯地に住み込む隊員の食事代といった糧食費が44%、歳出化経費が35%で、もともと柔軟性に乏しい」-この部分も、防衛省の言い分そのものだろうが、そう書いてないから、それを鵜呑みにした記者の意見なのだろう。このような場合、防衛省の主張であることを明記するのが、客観性を大切にする新聞報道の基本原則だ。これでは、防衛省の名前を出さずに、その主張をキャンペーンする広報の常套手段の御先棒担ぎだ。朝日新聞の編集局長は、こんな紙面を作っていいのですか。
じつは、リべラル21にわたしがこれまで書いた小文で何度か朝日新聞批判をしていることに、いつも読んでいる友人から意見されたー「朝日に肩入れしても、無理ではないでしょうか、最近は毎日の方がずっとすっきりきしているのでは?」
その通りかもしれない。わたしも、昨年来の普天間問題で、朝日新聞があまりにひどいので、毎日か東京に変えようかと何度か思った。わたしと同じように朝日新聞に怒った読者をたくさん知っている。でも、わたしは変えなかった。その理由は、まだ、同紙に期待しているからだ。新聞社内に、護憲・リベラルの誇り持ち続け、現実に「さすが朝日だ」と感心する記事を書いている記者たちがいることを紙面でも、個人的にも知っている。購読を止めないで、期待を込めて批判をつづけるつもりだ。
〔opinion094:100816〕
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