誰も政局をあれこれ言わぬ。共倒れするまでやればよい
- 2012年 8月 10日
- 評論・紹介・意見
- 三上 治
オリンピックも結構おもしろいが、国会を舞台にする政治劇はそれ以上におもしろい。「近く」という言葉の解釈がやがてはメディアを含めてにぎわすだろうが、僕らは政局という名の政治劇のお手並み拝見と行こうではないか。消費税増税だけはという官僚の強い後押しと根回しで舞台に乗せた法案を民主党と自民党は猿回しのように処理したら再び抗争劇に入るだろう。自民党の要求するように首尾よく解散にまでたどりつけるか。それぞれの内部抗争で党首交代という結果に至るか。誰も予測はできまい。日本の官僚たちは官僚主導政治の転換を掲げた民主党への政権交代が行われた瞬間からあらゆる手段を駆使してその潰しをはかった。これについてはここであらためて述べるまでもないが、それは今、効を通し最後の局面に入っている。民主党の変節と解体、自民党の政治的復権がそのシナリオである。消費増税法案というお土産まであって彼らはウハウハであるに違いない。
民主党が政権から降ろされた後に官僚たちは表では自民党や公明党を使ってのかつての政官財による権力基盤の再建を試みるだろうが、実質的には強権的支配を強めるだろう。民主党は解体し、その一部は自民党や公明党の方に合流(スカウトされる)して行くだろう。これはメディア再編まで構想した官僚たち(背後のアメリカも含めた)の権力再編の構想であり、現在の政局という名の政治的愚劇はその露払いのようなものだ。だが、官僚たちの描く政治的構想には決定的に欠けているものがある。それは民主党の変節や解体ということは民主党を政権に押し上げた民意が変節したことでも解体したことでもないという認識が欠落していることである。沖縄の地域住民の抵抗の持続を見ればいいし、脱原発に向かう人々の声に視線を向ければすぐに分かることである。再編される権力の構想ではこれを強権で抑え込むことが想定されているのだとしても、そう簡単にことが済むわけではないのだ。民意が存続している限り、彼らのシナリオはやすやすとは実現しない。民意を表現する政治的な主題は沖縄基地移設問題(オスプレイ配備を含む)、原発問題など多様だが、それはやがて政治的に一体化して行くだろう。僕は日本の権力主体である官僚には民意を理解できないと述べたがこれは彼らが民意を実現する政治ビジョンや構想を有していないことと同じだ。彼らの既得権益護持とは本質的な矛盾にあることなのだ。民意を実現する政治的ビジョンと構想という難題を解決するために全力をあげねばならぬ。それ以外に怖れるものはないし見るべきものはしっかり見よ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion956:120727〕
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