「フクシマ以後も実行性の無い日本の対策」などー地震と原発事故情報
- 2012年 8月 19日
- 交流の広場
- たんぽぽ舎地震と原発事故
2012年8月18日(土) 【TMM:No1549】-4つの情報をお知らせします
転送歓迎
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★1.再起動するならば第四、第五の深層防護を確立せよ
フクシマ以後も実行性の無い日本の対策 山崎久隆
★2.首相官邸前に集まった人々が突きつけたのは「物を考えない国民には
ならない」という切実なNOである。
(ノンフィクション作家 佐野眞一氏)
★3.新聞・雑誌から
◇原発と原爆の密接な関係(放射能は同じ)
原発に携わった被爆体験者 ー 信じた平和利用を後悔
「核(原発、原爆)との関係絶つべきだ」
★4.<テント日誌 8/8日(水)――経産前省テントひろば 333日目>
「立秋に至りやっと夏仕様」というテントだが
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◆訂正です。
前回8月15日付け【TMM:No1548】の★4(東京新聞よりの抜粋)の記事中、
間違いがありました。
訂正します。大飯原発3,4号機の出力はいずれも118万キロワットです。
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┗■1.再起動するならば第四、第五の深層防護を確立せよ
フクシマ以後も実行性の無い日本の対策
└──── 山崎 久隆
深層防護の考え方について、IAEA(国際原子力機関)は、原発に対して「工学的安全設計・設備」を要求し、周辺住民への対応として重要な「原子力防災体制の確立」と「放射性物質拡散影響対策」を義務づけている。
これらは第1から第5の深層防護と呼ばれ、それぞれ事故の推移に応じて必要な措置を講ずることとされている。シビアアクシデント対応は第4層、サイト外の緊急時対応は第5層ということで、これら5つのレベルで公衆の放射線障害を防止する仕組みになっている。
ところが、日本はこれをサボってきた。これまでも市民運動が繰り返し要求していた原子力防災は各自治体がそれぞれの裁量で決める「地域防災計画」の一部として整備することとし、シビアアクシデント対策も事業者の自主的対応にまかせてきた。
事実上の責任放棄の背景には「対応が必要なシビアアクシデントなど起きるはずがない」「大規模放射能放出事故など起こるとは考えられない」と、規制当局も電力会社と一緒になって考えていたからだ。
もちろんその背景には電力会社のコスト問題が大きいが、それ以外にも「重装備の防災体制の確立を求められたら原発推進などできない」といった立地自治体からの反発や、「これまでも事故防止対策に万全を期しているのに、事故を想定するような対策を行えば「やっぱり危険なのだ」と言われるのが嫌だ」などといった子供じみた言い訳さえあった。
◇ 米国の深層防護の考え方
しかし諸外国では、地域防災ではなく「国家緊急事態」として原発事故を位置づけるなどは当たり前のことであり、例えば米国のNRC(原子力規制委員会)は物理的な攻撃(いわゆるテロ攻撃)に対しても対策を義務づけている。「B5b」と呼ばれる「原子力施設に対する攻撃の可能性に備える命令」では、今回のような全電源喪失の場合でも代替注水や炉心冷却能力の確保を義務づけており、定期的な監査により、その条件が満たされていることをNRC自身が確認してきた。
米国の対策はもちろん2001年9月11日に発生した「911事件」をきっかけにしたものであるが、日本では国会において原子力安全・保安院が「B5bと呼ばれる対策を知らなかった」などと常識では考えられない回答をしている。
◇ 第4の防護は実証されていない
さて、工学的安全設計に関わるところは、その第3防護は炉心損傷防止であり、シビアアクシデント対策でもある。
原子力安全・保安院によれば日本の原発は、福島第一震災後は、いわゆる「ストレステスト」でそれをクリアしたと主張する。そのことも大変疑問であり、問題だが、それとともに、では第4、第5の防護はどうなっているのかと問いたださなければならない。
「第4防護」は炉心損傷を引き起こしても、大量の放射能放出を防止するための冷却、閉じ込め機能の確保であり、例えば電源確保や冷却水の確保(つまり冷却水の再投入能力)である。電源車を用意するなどで対策済みとなっているが、具体的に「ストレステスト」において「クリフエッジ(復帰不可能な境界線)」を超えた場合の対応として、何処まで実効性があるかが問われる局面である。
ところが、一定の追加設備、その多くは電源周りであるが、それが本当に機能するかどうか、実証試験もなければ詳細な解析もない。そんなことをしている時間的余裕も能力も、そもそもなかった。つまり全て机上の空論である。冷却能力確保一つとっても、例えば福島第一原発2号機で、原子炉をかろうじて冷やしていたRCIC(原子炉隔離時冷却装置)が止まってしまい、冷却能力を失ってから逃がし安全弁を開いて圧力を下げたが、その際に消防用水ポンプからの水が入らなかったことなどの原因究明はなされていない。
それでも第4防護が確保されていると言えるのだろうか。
◇ 第5の防護は存在せず
最後に大量の放射能放出に至った場合の防護について、日本は何の対策も取っていない。これは「50キロ圏の広域防災体制の確保」という言葉で語られている課題だ。
もともと日本の場合、原子力防災体制はサイトから8ないし10キロ圏内しか想定されていなかった。ところが福島第一原発震災では、その範囲が一気に30キロ圏まで拡大してしまった。実際に避難を余儀なくされた地域は最大風下40キロにも達した。
同心円で10キロや20キロでは全く第5の防護としては不十分であった。
この場合は少なくても50キロ圏内において「避難」「屋内退避」が必要な防災体制が取られることになるが、さらに広域にわたる避難準備も必要になる。SPEEDI などを活用した避難準備も重要だ。
福島第一原発震災と同様の広域避難を必要とするとしたら、例えば東海第二原発になると水戸市や日立市、場合によっては東京にまでそのエリアは及ぶことになる。この50キロ圏に日本中で1100万人が住んでいる。30キロ圏内でも400万人、東海第二原発では93万人に達する。
その他の地域も、原子力防災体制が必要な地域と人口規模は従来の何十倍にもふくれあがることになる。
これらについて「緊急時管理センターの整備。緊急時対応に対する緊急時計画と緊急時要領の確立」が求められる。これが30キロ圏内で整備されていなければならない。それが無ければ、何処の原発だろうと再起動などできない。
現時点の議論では、30キロ圏の市町村が電力と安全協定を結べるかどうかといったおよそ時限の異なる議論がされている。もちろん立ち入り調査や原子炉起動の同意がなければ運転再開など認めないということも大事だが、それ以前に、そもそも対象市民を退避できる体制を構築できなければならない。これを誰の責任で実行するのか。とても市町村のできることではない。なお、この待避には屋内退避も含むが、屋内退避と言っても一般の木造家屋で退避をしただけでは空間放射線量の低減は半分程度に止まるので、原発に近い地域では住民を全員収容可能なコンクリート製の退避設備が必要となる。
少なくても国が電力会社に対して原発の運転を認可するのであれば、国と電力会社が責任を持って防災体制を確立する義務がある。これは「紳士協定」に過ぎない自治体との安全協定ではなく、法的拘束力のある原子力防災体制の確立である。
必要最低限の防災体制の確立さえ怠っておいて、原発を動かすなどは、何重にも違法行為なのだ。
原発を再起動するというのならば、ここまでの防災体制を確立してからでなければしてはならない。その程度のことは、推進派も合意しなければならない。
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┗■2.首相官邸前に集まった人々が突きつけたのは「物を考えない国民にはならない」という切実なNOである。
└──── (ノンフィクション作家 佐野眞一氏)
(SAPIO 2012.8.8 抜粋)
(省略します―「ちきゅう座」編集部)
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┗■3.新聞・雑誌から
◇ 原発と原爆の密接な関係(放射能は同じ)
原発に携わった被爆体験者 ー 信じた平和利用を後悔
「核(原発、原爆)との関係絶つべきだ」
(8月9日東京新聞より抜粋)
(省略します―「ちきゅう座」編集部)
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┗■4 <テント日誌8/8日(水)――経産前省テントひろば333日目>
「立秋に至りやっと夏仕様」というテントだが
7日は立秋であった。が、テントはこの日になって夏向きに衣替えをした。多くの皆さんが参加されてリニュアルされたテントの中にはいい匂いの漂う茣蓙が敷かれている。とてもいい気分だ。
夜には蚊帳もつられていた。蚊帳を見るのは何年ぶりだろうか。子供ころに蚊帳の中にホタルを入れて遊んだことや蚊帳に入りたがるのにすぐに出せと騒ぐ猫のことを思い出していた。何よりもこれで一晩中強い香取線香の匂いからは解放されるが身体にもいいことは間違いない。立秋というわけではないだろうが明け方は涼しいというよりはむしろ寒い程だった。慌てて毛布を引っ張りだして凌いだが季節は動いているのを実感できる。
風通しのいいテントで寝ていると密閉した都会の住まいと熱帯夜の関係を思う。都会では住宅事情からかクーラーに頼り、冷房をつけて寝るという生活が拡大し、熱帯夜も続くという日が増えた。この循環する都市の夏の生活とありように対する反省や考え直しをテントの生活は私たちに迫る契機になっているのかもしれない。蚊帳の中で風に吹かれて寝ているとそんな気にもなるのである。蚊帳をお送り頂いたUさんありがとう。紙面を借りてお礼を申し上げたい。もしテントに来る機会があれば蚊帳のある室内を見て欲しい。
友達から送られてきたメールに「カエルの声も蝉の声も聞こえない夏」というコピーがあったのには驚いた。南相馬市にボランティアに出掛けた女性の報告だった。放射線汚染による直接的な異変ということではないが、原発事故による環境の激変の結果であることは疑いない。この報告文の中で地域にとどまっている方が「季節の感じられない生活になった」と述懐している箇所がある。ドッキリとするところだが、カエルや蝉の声の聞こえない状態をこんな風に表現しているのであろう。ここに自然との交流関係(循環関係)にある人間の存在と相容れない原発の存在が示されている。さすがに原発は科学技術の産物だから社会から撤退出来ないということをいう人はあまり見かけなくなったがこうした根源的なところにやはり目を向けていて欲しいと思う。
朝方はテントの周辺もひんやりしていたが、午後に向かって暑くなってきた。風に吹かれてテント前の椅子に座り、霞ヶ関の中心街を眺めているのもいいものだ。予想以上に街の表情は豊かで少し暑いがここに避暑に来ていると思えばいいのかもしれないと思う。テントには全国からいろいろ人が訪れる。最近は若い人が多い。とても熱心に質問し、自分の考えを深める糧にしているのだろう。街行く人に小学生やお母さんと一緒の子供が目につくのも夏休みだからだろうか。それに最近は裁判などで霞ヶ関に出てきた人がテントに立ち寄る人も増えた。想像も及ばない事件も世の中は多いのである。教えられことも多い。
椅子に座りながら隣の女性と話をしていたらこの間の国会前行動のことに及んで行った。小さい子供を抱いた若い母親に駆け寄りこの子供時代に原発がなくなればと思わず言ってしまっていた。これは彼女の述懐だがその気持ちはよくわかる。私も歳を取ったのだろう。そういう思いのすることは多いのだ。
また、当日(7月29日)に国会正門前でいろいろの種類のパンを配っていた人の話になった。鎌倉駅の近くの市場の人で多くのコピー入りのパンを持ってきて配っていたとのことだった。彼女もそれを頂いたのだが美味しく、今度鎌倉に行ったら店を探すのだと語っていた。テントにも再稼働反対という文字の白く浮き出たパンが差し入れられていたのだが、この人だったのだと納得がいった。実に多くの人が様々の思いと工夫を持って国会周辺に出掛けてきているのだ。
政局という名の愚劇を繰り返す政党や政治家はこうした人たちの声に耳を貸すべきだ。裸の王様の様相を呈してきた永田町の住人は自己の所業について反省をすべきである。深夜の国会周辺はうす気味悪いところがある。彼らの怪談じみた行為が悪霊を漂わせているのだろう。彼らの行状が裁かれる日も遠くはない。彼らの大半はそのことを否応なしに実感しているはずだ。(M/O)
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【編集部より】
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