原発の即廃止は電力会社を破産させる。- So what?
- 2012年 9月 7日
- 評論・紹介・意見
- 原発理恵・グローガー
日本政府は、2030年の原発依存比率と して、①20~25%、 ②15%、 ③0%の3つの選択肢を提案し、これを「パブリックコメント(意見公募)」と名づけて、意見聴取会、討論型世論調査を各地で行い、国民の意見を集計することを実施しました。
ここで、政府に質問です。: 1)2030年というタイムフレームは一体どこから出てきた数字なのでしょうか?2)国民が原発廃止まで、18年も待てるとでも思っているのでしょうか?そんなに長い間、国民を原発リスクで脅かし続けるつもりなのですか?3)政府にとっては、フクシマから学ぶべき教訓が...何もなかったいうことなのでしょうか?4)「If...?」-もし...事故が発生したらどうするのですか?また、謝罪しただけで事を済ませるつもりなのですか?
ご紹介させて戴きます「The New York Times」の「日本は懸命に脱原発しようとする。」と題された記事には、なぜ日本政府が原発依存比率に関しての選択肢を提案するのに、「2030年」というタイムフレームを付けたのか、説明がなされてあります。: それは、資源エネルギー庁の算定が、「もし今年、日本にある50基の全ての原子炉が閉鎖されるとすれば、電力会社は莫大な損失(約4兆4千億円)を受け、少なくとも電力会社、4社が破産する」と謂う結果を示しているからです。政府は、その憂慮から電力会社に2030年まで、あと18年という時間的余裕を与えて、彼等が少しでも設備投資を取り戻せるように計らっているわけです。
電力会社への忠告です。: 原発を廃止することで貴殿の会社が破産することになるのでしたら、誠にお気の毒 ですが、それはそれで仕方のないことです。何故なら、国民の安全のために、我々の後代子孫の安全ために、原発は即廃止しなければならないからです。貴殿らはいつまでも、原子力でぼろ儲けしてきた過去の夢に取り縋っているべきではありません。そういったことは早いとこ気が付いた方が得です。原子力の時代は終ったのです。「Period」です。 貴殿らは、「再生可能エネルギー開発」の舟に乗り遅れないよう、「エネルギー革命」の波にも上手に乗っていけるよう、賢く、投資の方向転換をすべきです。ドイツでも、電力会社が「再生可能エネルギー推進」の流れにくっ付いて行こうと、必死になっていますよ。 Don’t miss the boat!
下が、「The New York Times」原文へのリンクです。:
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概説:日本は懸命に脱原発しようとする。
The New York Times オンライン記事-2012年8月29日付
筆者: ヒロコ・タブチ
東京-去年の福島原発災害後、日本は原子力依存を削減する方向へと動いていっているのだが、ある厳しい経済的現実にぶつかっている。:それは、原子炉を直ちに放棄することで大手電力会社が背負わなければならないコストが、余りにも膨大になってしまうということである。
資源エネルギー庁が、この夏、算定したところによると- もし、日本にある50基の原子炉が、今年、永久閉鎖されることになったとしたら、電力会社が受ける損失は総額4兆4千億円(559億ドル)に上り、少なくとも4つの電力会社が破産することになる-と謂う。
核の安全性を改善したい願望と、大手電力会社が面する最終的現実との間に、バランスを見つけようと苦闘してきた日本政府にとって、原発の即時閉鎖がもたらす途方もなく莫大なコストは、深刻な懸念すべき事柄として持ち上がってきた。事故以前は、日本において生産される総電力量の1/3が原発から発電されていたのだが、殆どの原発は現在、少なくとも一時的な稼動停止の状態にある。
東京国際大学の環境経済学部教授である武石礼司氏は、「人々は簡単に、日本の原発閉鎖について話すが、原発の閉鎖が及ぼす経済的および財政的影響は深刻だ。」と言う。
現在、政府は国の原発依存を削減するために、少なくとも3つの選択を検討しているが、これら全ての3つの選択は、電力会社が設備投資の大部分を取り戻せるように時間的余裕を持たせる為、(2030年というタイムフレームを与え)2030年までに原子炉の永久閉鎖をするように設定されている。大多数の原子炉の稼動年数が、2030年までには40年以上に達するので、国の指針に従えば、いずれにしても大多数は廃炉処置されることになっている。
しかし、原子力施設の下を恐らくは活断層が走っているであろうといった懸念も含めて、原発安全性に関して新たに生まれてきた一連の不安が、いったい原子炉を再稼働させるべきなのかどうか、という疑念を起こさせることになった。
そして、提案された「(原発閉鎖まであと)18年」という予定表は、日本国内で勢いを伸ばしてきている反原発運動体を怒らせた。彼等は、「政府は優先すべきものを間違えている。」と不満を訴えている。「あなた方は、どうして経済を、‐安全、人間の命の上に-おくことができるのか?」と、コンテンポラリー・アーティスト/反原発運動代表者である小田マサノリ氏は、先週行われた野田首相との会見の後に述べた。
政府が検討した一つの選択は、2030年までに国の原発依存を電力需要の20%から25%までに低減させること-2番目の選択は、それを15%に減らす事-3番目の選択はそれを0%にする原発の完全廃止となっている。最初のうちは、15%の提案が牽引力を得ていたのだが、公聴会や世論調査においては、原発の完全廃止に対しての支持が圧倒的であった。政府が検討したこれら全ての提案には、国の原子炉を漸進的に再稼働していくかもしれないという可能性も含まれているのである。
日本で最も大きく最も影響力のあるビジネス・ロビー、経団連は、原発閉鎖が及ぼす弊害を警告している。:「何十万という職が失われることになり、諸問題が代替エネルギーを妨害する事になるだろう。」と、彼等は述べている。
既に、フクシマ災害以来、日本の燃料輸入は急増し、国の貿易赤字を記録的最高値に押し上げていった。日本では今夏、これまでのところブラックアウトは避けられてきたのだが、電力不足は、企業に重荷となり圧し掛かってきている。
「日本の温室効果ガス排出量は急上昇し、風力やソーラーパワーなどの再生可能エネルギーの規模は未だに小さく、高価で当てにならない」と、ロビーイング・グループは語っている。今月はじめ、グループは、「もし我々に、経済的に実現可能な値段で安定したエネルギー供給がないのだとしたら、日本経済は成長できない」とも、コメントしている。
今年、経産省原子力安全・保安院は、京都北部から170マイルの所にある*志賀原子力発電所直下を活断層が走っているという可能性について警告した。そして、政府の算定は「志賀原発のオペレーターである北陸電力会社が、もし2基の原子炉の閉鎖を強いられるようなことになるとしたら、少なくとも3130億円(39.7億ドル)の損失を受け、北陸電力は、ほとんど破産に近い状態に押しやられるであろう。」という事を明らかにしている。
また、これらの算定によれば、損失は、-①早期の廃炉処置、②原子力資産の評価切り下げ、③核ごみや核燃料処分-などのコストから生じるためであると謂う。
他にも問題を抱えている電力会社がある。-中部電力である。-中部電力は浜岡原発で最も新しい、日本においては最も大きな5号機を何とか救おうと必死になっている。5号機は2005年に開設したが、官直人前首相が浜岡原発の停止要請を出した去年の5月以来、事実上、ずっとオフラインになっている。この要請は、浜岡原発が津波の影響を受けやすい海岸線に位置していることに対しての恐れに基づいて出されたものであった。
しかし、運転停止作業中に**浜岡5号機の管が破裂して約1,300ガロンの海水が原子炉施設内に流入し、それが炉心を腐食させているものと考えられている。
2つのもっと小さな電力会社-北海道電力と東北電力は-、もっと深刻な問題に直面しそうである。:原子炉の評価切り下げコストが、これらの電力会社を破産に追い込むことになる、と政府は推算しているのである。北海道電力と東北電力は、彼等の原子炉も、ずっと以前から想定されてきたよりも大きな地震の危険性に曝されているのだという懸念を抱いている。
そして、東京電力-日本で一番大手の電力会社-破壊された福島第一原発のオペレーターは、もし東電所有の残りの13基(津波で破壊された福島第一原発施設にある2基の原子炉と福島第二原発施設にある4基の原子炉を含める)を再運転できないのだとしたら、更に1.15兆円(146億ドル)の資産評価切り下げを被らざるを得なくなるであろうと謂う。
福島地方自治体は、東電の全ての原子炉の永久閉鎖を要求している。しかし、原発事故と賠償金支払いに掛かる途方もない莫大なコストの為に、先月、事実上は国営となった東電にとって、原子炉の閉鎖は破滅的となるであろう。
即ち、電力会社はリスクがあろうとも、原子炉の再稼働許可を政府にうるさく催促しようとする強い動機を持っているのである。
原子力の段階的廃止を支持する人々は、「別の原発災害が起きた場合、そのコストは、他に考慮すべき事柄のコストを簡単に上回ることになる。」と主張する。彼等は、特に多額の公共投資で再生可能エネルギーを開発させることについて楽観的な考えを持っている。「再生可能エネルギー分野の新しいテクノロジーが排気ガス量を削減するし、再生可能エネルギー産業は新しい仕事を生み出し雇用数を増やしていく。」とも、彼等は述べている。
ハーバード・ロー・スクール(Harvard Law School)のマーク・ラムセイヤー(Mark Ramseyer)教授は、「いかなる利益も電力会社と株主の方に行くことになっている一方で、日本の原子炉再稼働のリスクは、財政的にも安全性の点でも、納税者である国民が重荷を背負うことになる。」と、述べる。ラムセイヤー教授は、今月、学術誌「Theoretical Inquiries in Law」に、日本の原子力産業についての記事を寄稿している。
「彼等は(原子力産業は)全ての利潤をぶんどっているが、自分達が払うべき全てのコストを負担はしていない。」とラムセイヤー教授は、ある電子メールに書いている。
以上
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1) *志賀原発直下の活断層問題について、産経ニュースへのリンクです。:
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120717/dst12071714420020-n1.htm
2) また、原発直下を走る断層について、「原発、断層ずれても運転可能に 保安院が新基準導入へ」という共同通信ニュースがあります。: http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012082801002324.html
3) **浜岡5号機の海水流入問題について、朝日新聞の電子版ニュースです。:
http://www.asahi.com/special/energy/TKY201207250695.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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