台湾「核一」、使用済み燃料乾式貯蔵施設の建設現場 【台湾訪問記 その2】
- 2012年 10月 27日
- 評論・紹介・意見
- 原発台湾放射性廃棄物青山森人
台湾でも「中間貯蔵」のごまかし
9月29日11時20分ごろ、われわれを乗せたバスは「核二」の敷地から出て「核一」に向かった。バスはすぐ町のなかに入って、そして11時45分ごろ「核一」の門の前に到着した。「核一」と「核二」は隣接していることが実感できた。バスが門をくぐる前にわれわれ見学者にはヘルメット(安全帽子)が配られた。これから使用済み核燃料の貯蔵施設の建設現場に行くのである。
「核二」の低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設へはバスが敷地内に入って直後に到着したが、ここ「核一」の使用済み燃料乾式貯蔵施設の建設現場へは、バスは敷地内の奥に入っていった。小川が流れ、それを小高い丘が挟んでいる。原発がないなら、どんなに心和む自然風景であろう。
敷地内の奥といっても海はまだすぐそこにある。もし東日本大震災のような津波が発生したら丘に挟まれたこの場所では水位は上昇し、この周辺建物は海にのまれるであろう。「核一」の1号炉と2号炉は二つとも沸騰水型原子炉でアメリカのゼネラルエレクトリック社と発電機はウェスチングハウス社によるマークⅠ型、つまり福島第一原発1~4号機と同じというから、どうしても東日本大震災のことを強く意識してしまう。
さて、台湾では原子力発電所から発生した使用済み燃料はどう処理しているのだろう。台湾では非再処理の、いわゆる“ワンスルー”方式を採っている。原発で発生した使用済み燃料は各原発のプールで冷却されているが、原発が稼働してすでに30年以上経っているのでプールは満杯、次なる段階に進まなくてならない。“トイレなきマンション”状態は台湾でも同じこと。台湾ではプールの次に中期的に乾式の貯蔵施設で管理し、その次の段階として最終的な処分を今世紀半ばごろに着手する計画だ。しかし最終処分方法または処分地は決まっていないし、処分地の候補地が決まると強烈な抵抗にあうであろうことは日本と同じだ。なお、「核一」のこの貯蔵施設は来年の稼動を予定している。
写真1 使用済み燃料乾式貯蔵施設の建設現場からの風景。写真の向こう側は海。
2012年9月29日。○CAoyama Morito
日本は再処理方式を採用しているが、高速増殖炉がまともに動く目途はなく、青森県六ケ所村の再処理工場の冷却プールにも限りがあるので、使用済み燃料がたまり続ける現実には変わりない。結局、青森県むつ市に、問題解決の先送りを象徴する中間貯蔵施設(これも乾式)が建設中で、台湾と同じく来年の完成を予定している。先送りが続けば、むつ市の中間貯蔵施設は拡大されるだろう。「中間貯蔵」といいながら原発推進を唱える者たちは40~50年間の「中間貯蔵」途中でそれぞれの寿命を迎えるのだ。
「日本人が安全といったので大丈夫」
同じ乾式貯蔵でも台湾の貯蔵方式は使用済み燃料を最終的に円筒型のコンクリート製の石棺のような容器に入れて外に立てる。
写真2 使用済み燃料が収まる乾式貯蔵の容器。このコンクリート製の筒が列を成して30個並び立つ予定。同、○CAoyama Morito
一方、むつ市でやろうしているのは、パンフレット(『使用済み燃料中間貯蔵施設の安全確保に向けて』、経済産業省、原子力安全・保安院、核燃料管理規制課、2010年1月)によれば、金属製の「キャスク」に入れて建物の中に保管する方式だ。なおこのパンフレットには「乾式」といわず「キャスクによる使用済燃料の貯蔵」という表現をしている。そして「キャスクによる使用済燃料の貯蔵は、海外でも実績があります」といい、アメリカ・ドイツ・スイスの「キャスク」による貯蔵を紹介している。アメリカは屋外に、ドイツとスイスは屋内に「キャスク」が立てられている。台湾の貯蔵施設はアメリカ製である。ちなみに、このパンフレットには「参考」としてこうある―――「国内では、東京電力福島第一原子力発電所では1995年から、日本原子力発電東海第二発電所では2001年から貯蔵専用のキャスクによる発電所内での貯蔵が行われています」。
乾式貯蔵施設の建設現場で説明する担当者にわたしは「3.11」のような津波が発生したらここは津波の餌食になる可能性がありますよというと、地震にも津波にも耐えられるとその担当者はいうので、津波の威力を知らないからそのようなことが言えるのだとわたしが反応すると、「この前、日本人がこの現場に来て安全といったので大丈夫ですよ」といわれてしまった。福島での”実績”を考えれば、日本人の安全ほど危険なことはないし、あまりにもその「日本人」の発言は無責任であろう。日本人が安全というから大丈夫とは、あるいは皮肉かもしれない。
写真3 使用済み燃料乾式貯蔵の容器を運搬する特別仕様の輸送トラック。ドイツ製だという。
同、○CAoyama Morito
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