これが[唯一の被爆国]の政府か。メディアか!
- 2012年 10月 30日
- 評論・紹介・意見
- 関 千枝子
10月23日の毎日新聞夕刊で見逃せない記事を見た。国連総会第一委員会で、核兵器の非人道性を訴え、核使用を国際法上非合法にする努力をするよう各国に求める声明を、スイス、ノルウエー、タイなど30か国以上が合同で発表したが、日本は加わらなかったというものである。榛葉副大臣は記者会見で、米国の核戦力を含む「抑止力」に依存した日本の安保政策と整合性が取れないとの認識を示し、声明に賛同しない考えを正式に表明したという。
驚き、怒りが込み上げてきた。これが常々[唯一の被爆国]と言い、「非核3原則」を掲げてきたはずの日本政府の態度なのか。「核抑止力」など、国の政策として「正式に」認められていることなのか。米国依存の核政策を捨て、日本は世界の先頭に立ち、核兵器廃絶の世論を広めていく立場ではないか!
もう一つ驚いたことはこの重大なニュースをどのメディアも取り上げていないことである。新聞もテレビも、まったく、この記事はなかった。この毎日の記事は「共同電」で、どこのメディアにも配信されていたはずである。この事実の持つ重要性がわからなかったのだろうか。毎日新聞にしろ特派員電でなく共同電であったと言うことは、特派員が重要なことと思わず、取材せず、たまたま共同で入ったのを、デスクが取り上げたということだろう。
翌日の朝刊で追うところもあるかと思ったその気配もなかった。私も日本中の新聞、放送に目を通しているわけではないから、断言はできないが、日本の大部分のメディアがこの重大な事実をニュースとも認知しなかったことは間違いない。わずかに赤旗のみ、24日の新聞で、特派員電で、事実を追いかけ、24日、25日の紙面、日本原水爆被害者団体協議会や原水爆禁止日本協議会などの抗議を報道したが、一般のメディアは全くこの事実に無関心のままだった。
そうこうしているうち、石原都知事の退任、新党結成騒ぎで、マスコミはこの動きの報道と「追いかけ」で「紙面を挙げて」の騒ぎ。国連での「非核声明」への日本の呆れた対応のことなど、ほとんどの人が知らないまま、終わってしまいそうである。
今、原発についての報道の内容が大いに問題にされている。しかし、一応報道がされているのなら、後でいくらでも検証されたり反省が行われたりもできる。しかしまったく報道されないと。これはまるでないことになってしまう。日本政府の恥ずべき対応を、世界中で日本国民だけが知らない。これでは、戦中の報道と変わらないではないか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1056:121030〕
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