米国イラク戦争「終結」、普天間辺野古移転案に、 漂流する民主党は、改めて基本政策を?
- 2010年 9月 3日
- 時代をみる
- 加藤哲郎民主党
またしばらく日本を離れ、ヨーロッパに滞在します。次回更新は9月23日以降になります。アメリカから東京に戻った2週間は、亜熱帯ジャパンを実感しました。エアコン全開で、外出は必要最小限にしましたが、それでも時差ボケの身体にはきつく、寝苦しい日々でした。もうすぐ着くロンドンは、昼は20度、朝晩は10度以下とか。研究調査には絶好で、避暑に行く気分です。そのうんざりする日々のテレビの話題は、もっぱら9月の民主党代表選挙。菅首相、小沢前幹事長の間に、鳩山前首相が伝書鳩よろしくしゃしゃり出て、一時は「トロイカ」復活で選挙なしかとも言われましたが、どうやら菅首相に権力の深奥ーー人事権が問題になっていますが、もう一つは財政権ですーーまで明け渡す腹はなかったらしく、ぎりぎりの二者会談も決裂し、昨日から選挙戦に突入しました。私は結果をドイツで知ることになります。ネット情報のみで、遠くから眺めます。経済金融危機が続くヨーロッパの日本政治への関心や、コップの中の嵐への反応は、見ることができるでしょう。
それにしても、そもそも政権与党となった民主党は、ここで代表選挙をすべきだったのでしょうか。参院選敗北の責任なら、選挙直後でもよかったはずです。普天間問題でのつまづきで鳩山・小沢体制が崩壊したのは、つい6月のことです。その時の争点、沖縄県民の意志と乖離した普天間基地の辺野古移転問題は、民主党代表選公示の直前に、V字とI字の二つの具体案が沖縄県に示されました。いずれにせよ、かつての自民党合意案の微調整で、「政権交代」が沖縄県民に何ももたらさなかったことを示すものです。11月の沖縄県知事選で大きな争点になるのは必至ですが、もしも民主党代表選に何らかの意味をもたせるとすれば、菅・小沢の両候補者は、米国と国際社会に対する態度、「核なき世界」への日本のなすべき道、そして地位協定を含む沖縄米軍基地をどうするかについて、はっきりした態度を示してほしいものです。5月の日米合意よりも、今やなつかしい「政権交代」時の鳩山前首相が国民に示した政権公約、「友愛」原理、「東アジア共同体」、温暖化効果ガス25%削減、普天間基地「県外・国外移設」に立ち返り、現時点の両氏は、どういう政策で米国とどのように交渉し、沖縄県民にどのように向き合うのかを明らかにすべきです。
折からアメリカのイラク戦闘「終結宣言」が出され、駐留米軍の撤退が始まりました。オバマ政権の2年前の公約で、かつてブッシュ大統領時代に、日本の戦後占領をモデルとして始められた、米軍イラク占領の無惨な失敗を物語るものです。かつての自民党小泉政権は、米国のイラク戦争を無条件で支持しました。民主党は、アフガン・イラク戦争を、現時点でどう総括するのでしょうか。中国や北朝鮮に対してどう向き合うのでしょうか。首相の座に直結するのに、国民には投票権のない党内リーダー選びですから、小沢候補のかつての「普通の国」や、菅首相のかつての米軍基地政策はどうなったかも、問いただすべきでしょう。もちろん所得格差を示す「ジニ係数」は過去最大、日本のマスコミは、当面の円高・景気・雇用対策や財政再建・消費税問題で二人の違いを出すよう誘導するでしょう。しかし、そもそも民主党は党綱領を持たないマニフェスト政党です。マスコミは、二人の多数派工作をワイドショー風に追いかけるよりも、むしろ代表選報道を通じて、国民に対してこの党の基本政策が浮かび上がるよう、追究すべきです。せっかくですから、二人の首相候補の歴史観や世界観の違いを浮き彫りにしてほしいものです。
「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
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