野田首相の意表を衝いた「解散宣言」の波紋
- 2012年 11月 19日
- 時代をみる
- 池田龍夫
野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁の党首討論(11月14日)で、野田氏は意表を衝いて「11月16日衆院解散」を宣言した波紋は大きい。田原総一郎氏のように「野田首相の一本勝ち」と見る向きは多いようだが、果たしてそうだろうか。
8月の民自公党首会談で「消費増税法案などを通していただければ、近いうちに解散する」との一言が、日本特有の政局論争に火をつけた罪は大きい。来る日も来る日も、不毛な国会論議が続いて3カ月も内外の政治が停滞。国民の政治不信が高まったばかりか、国際的信用の失墜は著しい。
国際的な信用失墜も大きい
毎日新聞11月16日付朝刊コラムで西川恵編集委員は、駐日外交官の反応は「新鮮な驚きだ。守勢を切り返し、巧みに攻守を入れ替えた。計算し尽くした一手で、野田首相の政治家としての資質をみせた」などと、概して野田首相に好意的だった」と紹介している。
さらに西川氏は「首相が求心力を持ち得たとしたら、国際政治の力学も作用したのではないか。具体的には尖閣諸島を巡る中国との対立だ。自公の賛成で消費増税法が成立したのは8月だったが、内政で混乱している時ではない」との危機意識があったのではないか」と分析していた。確かにその側面はあったと思う。各紙の受け止め方も驚きながら、「したかな野田政治」を評価している方が多かった。
安倍氏の右ウイングの姿勢を危惧
海外の反応はどうだったろうか。日経11月16日付朝刊が興味深い特派員電をまとめていた。日本の論調より厳しいので、一部を紹介しておきたい。
アメリカン・エンタープライズ政策研究所のマイケル・オースリン日本部長は「米国の日本専門家が注視しているのは自民党が政権に復帰するかどうか。政権復帰しても米軍普天間基地の移設問題を解決できなければ、米国の落胆は深くなるだろう」として普天間移設を優先的に考えているようだ。この姿勢では、日米間はなおギクシャクするだろう。
ヘリテージ財団のブルース・クリングチー上級研究員は「首相が次々交代している日本政治の現状が、中国の台頭を招いている。米国は東アジアで日本が重要な役割を果たすことを望んでいる。…安倍氏の外交姿勢を歓迎するが、国家主義的な傾向には懸念もある」と警告していた。また英ニューカッスル大学のラインハルト・ドリフテ名誉教授は{未知の第三勢力の人気は、民主党だけでなく、自民党への国民の不満の裏返しだ。安倍氏は教育改革や憲法改正に執着するが、国民が望んでいるのは経済立て直しだ}と指摘していたが、まさにその通りだ。
「河野談話」を撤回したら、一大事
韓国・国民大学の李元徳教授は「(自民党政権が)河野談話を撤回すれば、韓日関係は戻ることのできない川を渡ることになる」と憂慮を示しつつも〝安倍政権〟に期待しなければならないだろうと述べていた。
日経紙に中国の論調は掲載されていなかったが、習近平路線になっても領土問題への強硬姿勢は相変わらずで、日本の政権がどこに移っても膠着状態は当分続くだろう。
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