保守反動の時代がやってきたなんて冗談きついぜ!
- 2012年 11月 24日
- 評論・紹介・意見
- 三上 治
まだ学生の頃、保守には保守反動という言葉を投げつけ批判していた。保守にもいろいろあることがわからなかった。たとえそれを知っても分かろうとはしなかった。いくらか後に何人かで『保守反動の学ぶ本』《宝島社》を出した。
題名に保守反動とつけたけれど、日本の保守思想について考えた。このときは日本の保守思想の力というか基盤について認識を深めたし、単純に保守=悪、あるいは保守=体制という理念からは自由になっていた。ある意味では戦後の日本の保守の政治家や政党の評価もしてきた。だが、最近の安倍総裁下の自民党は言葉の真の意味での保守反動になってきた。冗談じゃないぜということだ。
民主党政権の体たらくの反動として強権的政治が出てくることはある程度は予測できたが、こんな形の保守反動が出てくるとは思わなかった。懲りずにまた憲法改正かというのが感想であるが、今回は石原―橋下の維新との連携も考えられるからきちんと対決する必要がある。衆院選挙向けに出された自民党の公約は「経済成長の重視、原発再稼働は三年後に判断、集団自衛権行使―憲法を改正し国防軍明記」が骨子であるが、基本的にはかつての小泉―安倍路線の継承である。原発問題は判断をずらすことで選挙での争点から逸らすという欺瞞的対応だが、この間に実際は再稼働→原発保存という経産省や原子力ムラの構想を推進するだけである。今選挙の最大の争点をそらすという政治的策術をやっているだけだ。これは石原の「原発問題は小さな問題」というのと同じである。やはり、今回の公約で注目すべきは「集団自衛権行使」と「憲法の国防軍明記」である。集団自衛権の行使は単純にいえばアメリカのイラクーアフガニスタンでの戦争に対して、日本の自衛ということで軍隊を派遣し、現地での戦争参加をできることにすることだ。何のための自衛隊の派遣だったかを検証もせずに忘却しているのが日本の現状だが、あの時点では憲法の制約もあって曖昧にするほかなかった自衛隊の海外派兵だが、アメリカの要請に応じて堂々とやるということだ。北朝鮮とアメリカの間で戦争状態が発生すれば、日本の自衛の名において参加するということである。アメリカの自衛の為の戦争《アメリカはイラク戦争もアフガニスタンの戦争もその名で行ってきた》は日本の自衛の為の戦争というわけだ。これはアメリカが戦後の日本に憲法改正も含めて促してきたことだが、これにより明瞭な形で応じるということだ。日米同盟の深化論でもある。憲法改正はその法的表現であるが、憲法9条の改正である。
この保守反動化する自民党を政権につかせてはならない。これは国民の使命だ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1080:121124〕
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