本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(34)
- 2012年 12月 14日
- 評論・紹介・意見
- インフレ国債本間宗究金融
歴史のアナロジー
現在の日本は、「明治維新前夜」の状況と、よく似ているものと考えているが、歴史を尋ねると、往々にして、このような「歴史のアナロジー(類似性)」に遭遇するようだ。そして、「温故知新」という言葉のとおりに、「過去のパターン」を研究することにより、「将来の姿」が、ある程度、見えてくるものと考えているが、このことは、今回の「政治の混迷」や「金融大混乱」についても応用できるようである。
具体的には、「明治維新により幕藩体制が崩壊した」という事実が、これから予想される「官僚支配体制の崩壊」に似ているものと考えているのだが、このキッカケとなったのが、坂本龍馬や山内容堂が推進した「大政奉還」でもあったのである。そして、現在では、「橋下大阪市長」が「坂本龍馬」の役割を果たし、また、「石原前都知事」が「山内容堂」と似たような役割を果たすのではないかと想定しているのだが、この時に重要な意味を持つのが、現在の「金融大混乱」とも言えるようである。
つまり、「幕藩体制」が維持できなくなった原因の一つとして、「幕府の財政難」が存在し、実際に、明治維新の前年には、極度の「インフレ」に悩まされたようだが、今回は、「円安の進行」と「日本国債の暴落」が大きな注目点だと考えている。具体的には、「100円程度にまで円安が進行する」というような事態に見舞われた時には、「日本の輸入物価」が上昇し、結果として、「現在のような超低金利の状態が維持できなくなる」という状況が想定されるのである。
しかも、現在では、「安倍自民党総裁」が、「日銀法の改正」や「無制限の資金供給」などを提唱しており、今回の選挙結果いかんでは、実際に、このような政策が実施される可能性も存在するのである。また、現在では、「日銀のバランスシート」が急拡大を始めており、その理由としては、「国債の大量買い付け」が指摘できるのだが、この事実が意味することは、「民間部門に資金的な余力が無くなった」とも考えられるようである。
このように、現在の日本は、いろいろな面で行き詰まりを見せ、間もなく、大きな転換が起きる可能性が高まっているようだ。つまり、今回も、「大政奉還」のような事態が起きる可能性が高まっているようだが、明治維新の時には、「最後の将軍」である「徳川慶喜」が、その役割を果たし、現在は、「今度の選挙で選ばれた首相が、その役割を果たす可能性がある」ものと思われるが、この観点からも、今回の選挙には要注目の状況とも言えるようである。(2012.11.26)
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無制限の資金供給
現在、先進国の中央銀行は「無制限の資金供給」を宣言し、多くの人も、この言葉を信用しているようだが、一方で、「どのようにして実施されるのか?」という具体策については、ほとんど理解されていない状況とも言えるようである。そして、「激化する金融混乱に対して、恐怖心だけが募る状態」にもなっているようだが、やはり、この時に必要とされるのが、「通貨」に対する「歴史的な認識」や「正確な理解」だと考えている。
具体的には、現在の「お金」が、「過去100年間に、どのようにして創られたのか?」ということであり、また、「今後は、どのような状況下で、価値が失われるのか?」ということだが、残念ながら、現在の経済学においては、この点が、ほとんど忘れ去られているのである。つまり、「実体経済」に関する研究が主であり、「マネー経済」に対しては、ほとんど議論されていない状況でもあるのだが、現実の相場においては、このような「貨幣論」や「金融システムに対する理解」が、今ほど必要とされている時期はないものと思われるのである。
そして、その理由としては、現代の「通貨」や「金融商品」が、単なる「絵に描いた餅」の状態となっており、「実際に使おうとしても、買う商品が存在しない」という状況だからである。つまり、「約10京円」とも言われる「現在のマネー」は、ほとんどが、コンピューターの中に存在する「単なる数字」へと変化しており、結果として、その金額に見合うだけの実物資産が存在しない状況とも言えるからだ。
しかも、このような状況下で、今後は、「無制限の資金供給」が行われようとしているのだが、このことが意味することは、「究極的には、紙幣上でゼロが増えるだけ」ということである。具体的には、「1万円札」に、一つ「ゼロ」を付けると「10万円札」になり、二つ「ゼロ」を付けると「100万円札」になるということである。つまり、「政府や通貨に対する信用が失われた国においては、必ず、このような高額紙幣が発行される」ということが、歴史が教える事実でもあるのだが、今回は、全ての先進国で、このような状況が展開されようとしているのである。
そして、この時に、「資産価値を保全する方法」としては、「貴金属や株式、そして、土地」などの「実物資産」へ投資することが「最善の方法」だと考えているが、この点については、今後、「ギャロッピング・インフレ」という「株価や商品価格が、急激に上昇する局面」に入った時に、はっきりと理解されるものと考えている。(2012.11.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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〔opinion1112:121214〕
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