憲法改定をめぐる最初の決戦は来夏の参院選 -護憲派にとって正念場に-
- 2012年 12月 18日
- 時代をみる
- 岩垂 弘改憲
総選挙は、自民党の圧勝だった。勢いに乗る自民党は、かねてからの念願である9条改憲へ向けた攻勢を強めるに違いない。当面の目標は、おそらく参院で憲法改定の発議に必要な議員数を獲得することだろう。来年夏に予定されている参院選挙は、改憲勢力と護憲勢力の激突となるのではないか。護憲勢力にとってはまさに「憲法を守り抜く」正念場である。
日本国憲法第96条には「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」とある。要するに、衆、参の両院でそれぞれ三分の二以上の議員が憲法改定を発議し、改定案が両院で可決されれば、それが国民投票にかけられる。その結果、過半数の賛成があれば、憲法は改定される。
日本国憲法の最大の眼目が第9条にあることは言うまでもない。その具体的内容は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」である。今回の総選挙で、自民党は「国防軍の保持」「集団的自衛権の行使」を公約に掲げた。明らかに9条改憲へののろしであった。
その自民党が、衆院議席480のうち294を獲得した。加えて、やはり憲法改定(自主憲法制定、首相公選、参院廃止)を選挙公約に掲げる日本維新の会が54議席を獲得した。両党合わせて348議席。優に衆院議席の三分の二(320議席)を大きく上回る。
いまのところ、自民党と連立を組むであろう公明党が9条改定に慎重な態度を示しているが、かりに公明党が改憲の発議に参加しなくても自民、維新の会両党が提携すれば、衆院では改定の発議が可能となる。
このような状況を踏まえて、「戦後レジームから脱却し戦後の総決算を行う」と唱えて憲法改定に意欲を燃やす安倍晋三自民党総裁(近く首相に就任)は、改定のための次の一手にとりかかるだろう。それは、来夏に予定されている参院選だ。
現在、自民党の参院における議席は、242議席中83議席に過ぎない(会派名は自民党・無所属の会)。維新の会はまだ議席をもたない。自民党としては、次の参院選で、参院でも同党議員が三分の二(162議席)を占めるよう全力をあげるだろう。「三分の二」に達することができなくても、もし維新の会が参院選でも躍進すれば、ここでも両党の提携による「改憲発議」があるかもしれない。
報道によれば、安倍総裁は参院での三分の二獲得が困難と見越してか、まず、第96条の改定(「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」とあるのを「総議員の過半数の賛成で」と改める)をめざす、と言明している。改定のためのハードルを、まず下げさせようという狙いで、いわば外堀を埋めようというわけだ。
いずれにせよ、来る参院選が、憲法改定をめぐる決定的な一大決戦場になることは間違いない。護憲派としては総力をあげてこれに立ち向かうことが求められるというものだ。今回の総選挙の投票率は59・32%で戦後最低。これは、無党派層の多くが棄権に回ったためと思われる。この無党派層を「護憲」の側に引き寄せることができるかどうかが勝敗の分かれ目となるだろう。
その際、護憲派が依拠できるものとしては、国民の憲法意識ではないか。なぜなら、国民の間では、「9条支持」が、まだかろうじてではあるが過半数であるからだ。
今月初めの神奈川新聞社による県民を対象にした世論調査によれば、9条改正に「反対」が39・6%、「賛成」が32・1%だった。また、同じ時期に行った中日新聞の9条改定是非の世論調査では、「改正しない方がいい」41・4%、「改正した方がよい」40・9%、「分からない・無回答」17・7%だった。
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