「菅直人首相が再選―民主党代表選で大勝」「国会議員票は互角、党員・サポーターで圧勝」「人事は白紙、小沢氏と枝野幹事長の処遇焦点」
- 2010年 9月 14日
- 時代をみる
- 瀬戸栄一
民主党代表選は9月14日、412人(824ポイント)の衆参国会議員による投票が行なわれた。全国300小選挙区からの党員・サポーター票の300ポイントと地方議員100ポイントの開票も同時に行なわれ、菅直人代表が国会議員412ポイント、党員・サポーター249ポイント、地方議員60ポイントの計721ポイントを獲得して圧勝し再選された。小沢前幹事長は国会議員は400ポイントと互角の戦いをしたものの、党員・サポーターは51ポイントと4分の1しか取れず、大きく水を開けられ敗北した。
得票結果は選挙戦中の各種世論調査を正確に反映して国会議員以外の一般党員やサポーターで菅首相が圧勝し、この票だけで大勝したとさえいえる。菅氏は獲得ポイント総数で小沢氏に230ポイントも上回ったが、衆参国会議員票ではラストスパートが奏功して12ポイント(6人分)だけ小沢氏を上回るという薄氷の勝利だった。
小沢陣営は国会議員票でわずかでも菅票を上回ろうとしたが、新人票の一部も菅陣営に食われ、わずかながら下回った。党員・サポーター票の差は菅氏が198票上回り、全体の格差とほとんど変わらず、この票で菅氏が勝ったことを示した。
▽総取り方式で大差
菅氏の勝利は圧勝でありながら磐石ではない。国民から選ばれた国会議員票では互角だからだ。党員・サポーター票の配分は、一つの小選挙区ごとに一人でも上回った候補に「総取り」方式で与えられる方式なので、大差がついた。
地方議員票も100ポイントに換算されたが、実際に投じられた地方票をドント式で配分計算した結果、60対40という結果になった。これも「大差」ではない。
▽12ポイントで不安も
敗北した小沢氏は「一兵卒」として頑張ると一見、しおらしいが、小沢氏がトップの座をこれで本気で諦めたと信じる議員たちも少ない。政局対応に失敗しては立ち直ってきた過去から判断して、「次のヤマ場」は来年3―4月の2011年度予算成立にどう対応するかによって、予算案と予算関連法案とを順調に処理できるのか、それとも自民党や公明党など野党の一部と「組んで」揺さぶる可能性はまだ残る。組むということは、菅政権がたちまち政権運営に行き詰まることを意味する。
それを思えば、わずか「12ポイント」の差は不安の的である。再選直後に記者会見した菅首相は小沢氏の処遇を聞かれて「白紙」としか答えなかった。小沢人事が過度に厚遇すれば「脱小沢色」を薄めたといわれ、冷遇すれば小沢氏と支持勢力を怒らせ、揺さぶりに転じる恐れが出てくるからだ。
▽枝野、仙石氏の処遇も微妙
もう一つの注目人事は7月11日に大敗した参院選の責任を、人事面で菅首相がとっていないことだ。普通なら幹事長はもちろん、負け方の大きさは菅首相本人が責任を取ってもおかしくなかった。当然、更迭が当然視された枝野幸男幹事長を閣僚ポストに異動させることが考えられる。代表選で勝ったからといって、枝野氏を代えるべしという言い分を突っぱねられるわけでもない。忠実な脱小沢色議員を替えるというのも痛い。
「赤い小沢」などと揶揄される仙石由人官房長官についても、ことは枝野氏の場合と同様だ。菅首相にとって仙石長官の方が枝野氏より強力な助っ人だが、それだけに小沢氏らの目からみれば「目障りな」存在だ。
▽小沢見直しも必要か
半面、小沢氏が代表争い=首相争いの中で見せた貫禄や指導力、政策アピール力も捨て難い。菅首相がそこまで許容できるかどうか疑問視されるが、「最後の機会」で敗北したからといって小沢氏の政治的力量がたちまち萎むとは思えない。自民党の一部や公明党からの、小沢氏に対する一種の期待感は無視できない。総選挙による議席挽回にしか与党への復権の道がない自民党や公明党にとって、話が通じるのは小沢氏なのである。
ただ、今回の小沢氏敗北の遠因は、やはり「政治とカネ」をめぐる疑惑が、小沢氏が国会での説明責任を果たないことによっていつまでも付きまとっていることにあった。強制捜査を何度も受けて「何にもやましいことがなかった」から不起訴、というだけでは結局、大勝負に勝てない小沢氏のまま「老いて」いくしかないことも、今回、思い知らされたのである。(了)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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