ベルリン映画祭「Berlinale2013」について―日本映画界における風潮転換
- 2013年 2月 17日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵ベルリン映画祭
フクシマがまたもやフォーラムでのテーマとなっている。災害が日本映画をどこまで変えたのだろうか?:
池谷薫作「先祖になる(Roots)」は、ある年老いた木こりの話である。彼は実際に何が起こったのかを信じたくない。日本の伝統的な大工工芸に基づいて建てられた彼の家は、津波によって破損されたが、彼はその家を再び建てたいと願う。彼の妻も含めて、彼の住んでいた全村が引っ越していき、皆が彼を見捨てていく。しかし彼は、頑固にもそこに留まる。これは、自分の伝統を固く守り続けようとする否認者についてのドキュメンタリーである。
船橋淳(フォーラム部門2012年の出品作品‐Nuclear Nation フタバから離れて)の作品は「桜並木の満開の下で (Cold Bloom)」である。このフィルムは津波によって製作が延期されていたが、災害後に製作が完了したものである。日本の東岸を舞台にした映画のオリジナル脚本を船橋監督は少し変更した。
誰もが、実際に何が起こったのかということを熟考しようと努めている。しかし、それは単に荒廃の様子を示すことだけによってではない。全体のムードが異なっている。登場人物が内に固有しているアイデンティティーに関して大いなる疑念を感じさせられる。「日本人らしさ」が、曇りのない純粋なものではなくなってきているのだ。どれだけの部分がそのままオリジナル通りなのか、災害が、どれだけの部分に影響を及ぼしたのか-これは監督と話し合って探し出さなければならない事だろう。彼は信じ難いラブストーリーを映し出していて、とてもメロドラマティックである。それは同時に悲しくもある。何故なら余りにも多くのものが衰退し破壊されていくのを感知できるからである。-これは きっと災害と何らかの結びつきがあることなのだろう。
以上です。
英文のサイトがありますが、独文に比べて理解しにくいところがあると思いましたので、独文の方を日本語に訳しておきました。一応、英文サイトのリンクを差し上げておきます。:http://www.berlinale.de/en/presse/pressemitteilungen/forum/forum-presse-detail_16596.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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