福島原発事故後2年、炉内の状況はなお深刻 ~ 朝日新聞が、決死的な潜入ルポ
- 2013年 2月 26日
- 時代をみる
- 池田龍夫
廃炉作業が進められている福島第1原発の1~4号機について、東京電力が現状報告を怠っているので、炉内の状況がサッパリ分からない。心配でたまらなかったが、朝日新聞2月21日付朝刊が潜入ルポを伝えた。原子力規制庁検査官に同行したもので、高濃度汚染の各炉を4時間にわたり見て回った報告は貴重だ。規制庁検査官の現地調査を察知、危険を押して同行取材した努力は、特筆に価する。
汚染水が激増、4号機には近寄れず
「1~3号機で溶けた燃料を冷やした水と、建屋に流入した地下水が混ざって汚染水は増え続けている。汚染を除去しきれず、敷地内にタンクで保管している。2011年7月に約1万㌧だった汚染水は、今年2月には23万㌧に増え、今も1日数百㌧ずつ増えている。汚染を取り除いたとしても処理水の海洋放出は当面難しい。1~3号機建屋は現在も放射線量が非常に高く、作業員が容易に近づけない」との報告に肝を冷やした。
最も危険視されている4号機については、「4号機建屋最上階からは鉄骨がぐにゃりと曲がって鳥の巣のようになっている建物が見えた。炉心溶融事故で水素爆発を起こした3号機の建屋だ。4号機にいる作業員の姿はない。無人操縦のクレーンが屋上のガレキを撤去していた」と記しており、特に4号機には潜入できるような状態でなかったようだ。
屋根が吹っ飛んだ4号機上部には、使用済み核燃料約1500本が保管されたまま。昨年2本だけ引き抜いたが、全部撤去するには10数年かかるという。欧米諸国が最も危険視しているのは4号機で、1日でも早い決着が望まれる。
廃炉作業の完了は2050年ごろ?
原子炉の圧力容器底部の温度が100度以下になり、放射性物質の放出を管理、被曝線量を大幅に抑制できることを「冷温停止状態」というが、その状態がほぼ達成されたとして、2011年12月に野田佳彦首相(当時)は「冷温停止」を宣言した。しかし、格納容器や建屋の密閉機能を失い、核燃料がどのようになっているのかも分からず、長大なホースを引き回した仮設装置で注水を続けているのが現状という。
安倍晋三政権は「福島第1原発廃炉対策推進会議」を立ち上げたが、以上の潜入報告が伝えたシビアな現状を見つめ、「まだまだ冷温停止と言えない状況だ」と、国民に伝える責任がある。東電に対しても、必要な情報開示の徹底を厳命すべきだ。
東電は2015年までに敷地内に70万㌧収容可能なタンクを増やす計画というが、これとて中間的対策に過ぎない。原子力規制庁福島第1原発規制事務所の小阪淳彦所長は「放射能が局所的に高いホットスポットもいまだに把握しつくされていな」と述べており、廃炉作業完了は、2050年ごろと言われている。こんな状況下で、原発再稼働や新増設が論議されていることなど、時代錯誤ではないか。
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