「吉本隆明さん―逝去一年の会」のご案内
- 2013年 3月 3日
- 催し物案内
- 神山睦美
月村敏行氏より、以下のような私信を受け取りました。その意を汲み、また賛同する一人として、吉本隆明さんと何らかのかかわりをもたれたと思われる方々に、「吉本隆明さん―逝去一年の会」のご案内をする次第です。
何分、事情に浅く、ご案内しなければならない方が、まだまだおいでではないかと疑懼するところです。が、生前の吉本さんの度量の広さに免じて、ご容赦いただければと思います。
また、吉本隆明の一読者として、長きにわたり敬慕されてきた方々にも、広くこの会の開催をお知らせして参りました。直接案内がなくとも、会の趣旨を知って是非ともと駆けつけてくださる方には、同様の次第で参加していただけるよう手配いたしております。
本来であれば、すべてに、ご案内しなければならないところですが、そのような次第ですので、なにとぞお誘い合わせの上、ご来場いただければ幸いでございます。
記
日時: 三月十七日(日) 午後一時三〇分~午後四時三〇分
場所: 如水会館 二階 オリオンルーム (東京都千代田区一ツ橋2-1-1 TEL/03-3261-010・代)
地下鉄・神保町駅または竹橋駅より徒歩三分
会費: 壱万円
なお、誠に勝手ながら、ご供花ご供物の儀はご辞退申し上げます。また、ご来場の節は平服にてお越しくださいますようお願い申し上げます。
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私信
吉本隆明さんが亡くなられてから一年が経とうとしています。この間、お別れ会のようなものは開かれないのか、という声を沢山聞いてきました。小生も亡くなられてすぐに、それがあってもよいと考えた一人ですが、段々と、それがあってよいかどうか、あるいはあり得るかどうか、という思いにもとらわれるようになりました。
何しろ吉本さんの残されたものは、あまりにも多大で巨大です。調べている高橋忠義さんの答えは、単著一五四冊、対談集四二冊、文庫七三冊、共著四二冊、これらの増補、定本、第二版、新装版などが四六冊。合計三五七冊です。この他に全集やシリーズが一八二冊、CDやDVD、それに『試行』七四号分、他の著者の本への収載などを加え入れると総合計して七〇〇点を超えることになります。さらに試行出版部でやった一〇点の「試行叢刊」の仕事を忘れるわけにいきません。
こういう仕事のいちいちに、その都度その都度の自分の生きている思いのありったけを込めた吉本さんです。インタビューをまとめた人たちは、吉本さんが語り始めるや、いわば天馬空を行く白熱した心のしぶきを浴びたことを知っているはずです。それはまた多大で巨大な仕事のひとつひとつの読者となった人々も同じことです。吉本さんの文章と、それのはらむ意味と像とにどこまでも深く強くとらわれざるを得なかったのです。
この読者をとらえる吉本さんの特別な力を考え、且つその読者の多大なまでに千差万別する姿を考えると、お別れ会のようなものがあり得るのだろうか、という思いも自然に生じてくるのです。千差万別する読者が千差万別するままに、残された思いを独りで噛み締めつつ生きていけばよいのではないか――この答えにうなずく読者は、沢山いるでしょう。小生に段々と湧いてきた思いもそれです。
しかしまた『吉本隆明 二十五時』というような仕事や、車椅子からの講演などもあるわけですから、吉本さん自身は舞台に立ち、読者の熱狂的な注視のなか、演劇的なまでに奮い立つ人であったこともはっきりしています。お別れ会のようなものも拒否はしないはずです。いや、どっちでもいいよ、と答えるのが吉本さんの真実の姿でしょう。
さて、それならば、吉本さんが亡くなられてから一年が経とうとする現在、どうすればよいのか。小生は、こんな私信をまとめるしかなかったのです。これがお別れ会のようなものへの呼びかけかどうか――どっちでもいいよと、吉本さんに似せて言ってみたい気もしています。しかし、現実的にはそれでは済みません。この私信を事務をお願いしている神山睦美さんに託す手筈はできているのです。神山さんがこの私信を受けとり、しかるべき日時と場所、また発送先などを決めるでしょう。末筆にはなりますが、よろしくと書き添えておきます。
月村敏行
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