左派は日本は独裁国家と言った小沢氏の「生活の党」と共闘すべきである
- 2013年 3月 7日
- 評論・紹介・意見
- 小沢一郎左派勢力石井孝夫
●2009年3月、当時の自公政権は文字通りの末期的状態に陥り、謀略事件でも捏造して民主党に打撃を与える以外には、政権交代を阻む術は全く無い情勢であった。そのような情勢で、ほぼ次期首相が「内定」していた野党第一党の党首小沢一郎氏を標的にした、余りにも自公政権に好都合な「西松建設事件」が起きた。
小沢氏は、やむなく政権交代を優先するために民主党代表を辞任したのだが、この「西松建設事件」は無罪判決必至の情勢となると、検察・特捜部は小沢氏批判キャンペーンが頓挫するのを避けるため、「訴因変更」で裁判そのものを「消滅」させてしまった。また、その後の陸山会事件では小沢氏は起訴されたが無罪となった。
「西松建設事件」が起きた時、自公政権には小沢事件のような謀略でしか政権交代を阻む力はなかった。だから、謀略事件と疑うのが政治的常識であった。また、その後、特捜部の証拠の捏造や有印公文書の偽造など、あきれた実態が暴露された。今や、小沢事件は民主党による政権交代と小沢政権の樹立を阻止するための謀略的冤罪事件であったことは明白である。
しかし、共産党や第四インターなど一部の左派は特捜部に同調して小沢氏批判のキャンペーンに参加してしまい、大半の左派やリベラル派は、傍観・沈黙した。そして、小沢氏を批判した共産党はもちろん、社民党も、昨年の総選挙ではこの重大事件に関する政策は何も取り上げず、「未来の党」だけが「司法官僚による国民の権利侵害を止めさせる措置を早急に講ずる」と「行政・司法苦情処理第三者委員会を国会に設置する」の二つの政策を掲げて戦った。
これは、一体どういうことなのか? 小沢事件は、「議会制民主主義」というこの国の根幹となる政治制度を損なう歴史的重大事件であった。なぜ、常日頃、民主主義だとか、人権だとか言っていた日本の左派やリベラル派は、特捜部やマスゴミが、あれほど無茶苦茶なことをしても無視・沈黙しているのか?
●田中角栄氏は米国に相談することなく、独自判断で日中国交回復を行った。この国の重要な外交政策を米国に相談せずに実行した政治家は、田中氏だけである。小沢氏は田中氏の対米独立政策を継承し、日本の外交を従米=米国中心主義から、国連中心主義(米中等距離外交)へと転換し、対米独立を果たそうとしてきた政治家なので、弾圧されたのである。小沢氏は、この国の中枢に巣くう従米派謀略組織により、「失脚」させられたのである。これにより、日本の政治は3年半も混乱し続け、国民の多くから期待された政権交代は失敗した。
左派やリベラル派が沈黙する一方で、小沢派の支持者たちは小沢事件は謀略であり、マスゴミが3年半もの間、嵐のような小沢批判を続けたことから、日本は「独裁国家」だと批判し続けている。また、去年の総選挙では、東京・杉並区の山本太郎候補はコンサート形式の選挙運動を行って若者を集め、演説では、毎回必ずマスゴミはスポンサーである電力会社や、政治家の圧力でウソの報道をしているとマスゴミ批判を行い、憲法の改悪反対も訴えていた。つまり、山本候補は事実上、日本は「独裁国家」だと訴えていたのである。
日本の左派(共産・社民・新社・緑の党・他)が自らを民主主義的左翼と言うなら、日本のリベラル派が本当にリベラルであるなら、日本は「独裁国家」と断定した小沢氏の「生活の党」や山本太郎氏のグループとも共闘して、日本を「独裁」的に支配する勢力と戦い、一人でも多くの国民に、この国のマスゴミ報道は疑うべきこと、日本が事実上の「独裁国家」であることを訴えるべきではないだろうか。
1:左派と「生活の党」との共闘と小沢氏の「独裁国家」論
●小沢一郎氏は、サンデー毎日(2月24日号)のインタビュー記事で、2009年冬の西松建設事件以来の3年半余り、全てのマスゴミから、個人生活も含めて徹底的に批判されるという過酷な政治的迫害の経験から、下記のように、左派と同じ<日本=「独裁国家」論を主張した。
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サンデー毎日(2月24日号)
『「小沢一郎」が全てを語った』での小沢氏の発言
《引用開始》
「僕は旧体制の人たちにとって完全な標的ですよね。証拠も何もないのに、いきなり強制捜査されました。普通の法治国家、民主主義国家ではあり得ないことです。
政権交代するとみられていた野党の代表を、衆院選前になんの証拠もないのに強制捜査するなんて、後進国の独裁国家です。民主主義を否定する人たちの所業ですよ。メディアも平気でそれに乗り、僕を犯罪者扱いしました。
しかも、証拠が挙げられないとなったら証拠の偽造までした。その結果、3年半、僕は政治活動を制限され、結局は無罪になったけれども、同じ党の人間にまで攻撃されました。一方で、有印公文書まで偽造した検察官は刑事責任を問われない。
どうなっているんだ、日本は!
ただ、僕の息 の根は止められなかったけれど「彼ら」の企みは成功した。3年半、僕の行動の自由を奪って、政権交代と民主党を破壊したんだから、100点じゃないが90点くらい取れたと思っているよ、「彼ら」は……。僕だから歯を食いしばって頑張ることができたけれど、普通、政治家は1回か2回、報道でやられたら立ち直れない。」
《引用終了》
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●左派と小沢氏の「生活の党」とは、重要政策では<脱原発・消費税反対・反TPPでほぼ一致している。また、改憲問題でも、小沢氏は自民党の96条先行改憲論には否定的である。また、安全保障政策でも、小沢氏と民主党の横溝孝弘氏が一致したように、また、社民党は民主党とも連立政権を組んでいたので合意できる可能性はある。だから、民主党と社民党が連立政権を創ったように、「オリーブの木」のような政党連合の結成も可能性ではないだろうか。
確かに、両派には小選挙区制の問題など異なる政策もある。しかし、小沢事件は「民主主義」という両派の政策の源泉となる理念=憲法の根幹的理念=を破壊・否定する重大事件であった。理念と個々の政策では理念の方が優先されるべきものであるから、政策の違いがあれ、左派が本当に「民主主義」を理念とするなら、共に戦うべきである。
小沢氏は、選挙では極力他党と大同団結して戦うことを目指す政治家であるので、小沢氏の側から左派に共闘を呼びかける可能性がある。おそらく共産党は拒否するだろうが、日本の左派が民主主義的左翼と自称するなら、「生活の党」とも共闘して「独裁制」と戦うべきであり、選挙も含めて小沢派を排除するのは誤りである。もちろん、他のリベラル政党も、本当のリベラル派だと自称するなら、「生活の党」とも共闘して「独裁制」と戦うべきである。
小沢事件を起こした従米派謀略組織は、同じ支配層である小沢派による政権奪取までも阻止しようとした。この謀略組織は、将来、左派による政権交代が目前となれば、暗殺とか冤罪以上の手段で阻もうとする可能性もあると予想すべきである。だから、この謀略組織は単に小沢派だけの敵ではなく、全ての「議会制民主主義」勢力の敵である。
●小沢氏の<日本=「独裁国家」論は、この3年半に渡る徹底的な迫害経験が生み出した体験的国家観である。また、この理不尽な迫害を、小沢氏と同じ立場で経験してきた小沢氏の支持者たちも、日本は「独裁国家」と確信するようになった。つまり、小沢派は、トップから一般の支持者まで全員が日本は「独裁国家」と確信する政治集団へと変貌したのである。
これは、小沢支持者が多いネット掲示板である「阿修羅」の投稿を読めば、誰でも直ぐにわかる。従米謀略組織は、小沢氏を事実上の「失脚」状態へと追い込むことに成功したが、一方で、小沢派を左派と同じ国家観を持つ政治集団に鍛え上げてしまったのである。
この小沢氏の<日本=「独裁国家」は左派の国家観と同じであり、小沢氏自身の基本的な政治思想である「自由主義」では説明できない。なぜなら、「自由主義」的政治思想では、日本のような形式的「民主主義」国は、あくまでも「民主主義」国家とされ、「独裁国家」とは規定できないからである。日本のような国でも「独裁国家」と規定できるのは、左派の「階級社会論」的政治思想だけである。
しかし、小沢派は日本は「独裁国家」と主張しているので、日本の政界では「階級社会論」を採用しない市民的リベラル派よりも左派に近い政治勢力になり、左派の有力な援軍となったのである。なぜなら、現在の小沢派が<日本=「独裁国家」論を日本中に広めることで、左派が復活するのに有利な情況を小沢派も創りだそうとしているからだ。
小沢派は<日本=「独裁国家」論を日本中に広めても、「階級」概念が無い小沢派の政治思想では、この事態を事実論的にしか説明できず、根本的な解決策も提示できない。しかし、左派の政治経済理論なら、「階級」概念を使用して日本が「独裁国家」であることや、その根本的な解決策を提示できるので、小沢派が<日本=「独裁国家」論を日本中に広めれば広めるほど、左派の「階級社会論」の優位性が明らかとなるからである。
原発事故後のマスゴミ報道は、多くの国民にこの国は報道が統制・制御されていることを認知させた。<日本=「独裁国家」論は、今や左派の専売特許でもなくなり、小沢派など多くの国民が実感・共有するようになった。多くの日本国民が左派に近い国家観を抱くようになり、また、日本の政界に左派以外の「独裁国家」論を唱える政党が出現したのは画期的な事態である。
左派と小沢派とは、同じ独裁勢力と戦っているのである。 だから、日常的にも選挙でも、左派と「生活の党」は協力して検察や裁判所を批判し、日本が実質的な「独裁国家」であり、マスゴミは信用できないことを、一人でも多くの国民に訴えるべきではないだろうか。
2:左派と小沢派の選挙協力
●左派と小沢派が共同で集会やデモを行うのは特に問題はない。問題は選挙協力であるが、左派が小沢派と選挙でも共闘すると、妥協しなければならない政策も出てくるだろう。しかし、それ以上に連帯して戦う利点もある。まず、何といっても第一の利点は、少数政党同士なので共闘することで少しでも多くの影響力を発揮できるようになり、当選議員も増やせる可能性があることである。
また、小沢派は、選挙では極力他党と大同団結して戦う政党なので、左派が小沢派を拒否すると、情況次第では小沢派は妥協して改憲派と組むかもしれない。小沢氏は96条を変えること自体には絶対反対という立場でもないとも言っているので、改憲派と選挙協力をするようになると、96条改憲にも協力するかもしれない。したがって、第二の利点は小沢派を左派が取り込むことで、改憲派を増やさないようにできることである。
小沢氏は「変化」の重要性を指摘し、実際にも保守から事実上の中道左派へと転進した柔軟な政治家である。両派が共闘して相互浸透が進むと、国家観の決定的な変化や小沢派が小党化したことで、更に政策を変える可能性もある。これが第三の利点である。
また、小沢支持者が多い「阿修羅」掲示板には、最近左派的人物の書き込みが増えている。社・共から「未来の党」へと大量に票が移行した昨年の選挙も示唆しているが、小沢事件への左派の対応に失望し、社・共支持から小沢派支持となった人が多いのかもしれない。また、小沢派は、小沢事件を黙殺・批判した左派を激しく批判しているが、左派が小沢派と共闘すればこの「正当な批判」も停止させられるし、逆に左派理論が小沢派にも浸透して、小沢派からも左派の支持者を獲得できるかもしれない。
だから、左派が小沢派と共闘すれば左派支持者の減少を止められるし、より多くの国民に日本が実質的な「独裁国家」であることを広められ、逆に左派の支持者を拡大できる可能性も出てくることが第四の利点である。
●小沢派との共闘で問題となるのは小選挙区制度の改革問題である。しかし、「オリーブの木」を結成する場合でも、選挙制度の違いの問題は妨げにはならないだろう。なぜなら、選挙制度は政権を越えた全政党の問題であることと、選挙用マニュフェストの段階では「選挙制度を改革する」というような抽象的表現で表示することで妥協できるからだ。
小選挙区制度で、左派が不利になっているのは事実だが、左派は小選挙区制が導入される前から、既に弱体化していたことを忘れるべきではない。左派には「生活の党」を排除する余裕などない。とにかく、左派は、理念的レベルでは妥協はできないが、それ以外はできるだけ大胆に妥協して、できるだけ多くの勢力と共闘し、少しでも多くの影響力を発揮すべきである。
仮に、左派が小沢事件を無視して、司法やマスゴミなどの批判を行わない従来型の選挙をして、議員を2~3倍に増やせたとしても、それでは無作為的にではあれ、日本は「民主的選挙」が行われる「民主的国家」という誤った通念を形成し、左派は、この独裁的体制の<補完勢力=<共犯者となってしまうので、左派の支持者は幻滅して更に減少するのではないだろうか。
3:戦後型「独裁国家」と 特捜部・ロッキード事件
●支配層の意思が、マスゴミの力で、ほぼそのまま国民世論となる国家を「独裁国家」とすれば、現在の日本は「独裁国家」である。小沢氏は、もちろん現在の日本が「表現の自由」を認めていることは知っている。だから、括弧付きの実質的な「独裁国家」と考えているのであろう。戦後の日本が、このような意味での戦後型「独裁国家」=形式的「民主主義」国家=であることは、小沢事件や福島県の前知事・佐藤栄佐久氏の福島県汚職事件、また最近の「低レベル放射能安全神話」報道でも明らかである。
マスゴミが国民を騙すには、まずは国民の信頼を得なければならない。だから、マスゴミは、普段は真実も報道して国民の信頼を得つつも、原発事故直後のような非常時や重要な政治問題では、捏造報道で国民を騙して支配層の核心的利益を守る役割を果たしてきた。
もちろん、この体制も建前的にではあれ「民主主義」を標榜しているので「表現の自由」を認め、国民の動向も完全には無視出来ない弱さもある。だから、2009年のような支配層内部での政権交代は可能ではあるが、左派への政権交代は絶対に起きないように世論は操作されてきたし、左派は日本が実質的な「独裁国家」であることを知っていたので党の機関紙など独自媒体の拡大に努力してきた。
しかし、不思議なことに左派が大々的にマスゴミ批判をしたことはなかった。日本でのマスゴミ批判は、小沢事件を契機に少数のジャーナリストたちが始めたのである。 左派政党はマスゴミからの反撃を心配
してマスゴミ批判を抑制し、マスゴミに妥協してきたのではないか。
エジプトやチェニジア、リビアなどの独裁国家と比べると、欧米や日本のような国の国民は、形式的「民主主義」国であるが故にマスゴミへの信頼が高い。だから、日本では「原発安全神話」や「特捜神話」、そして最近では「低レベル放射能安全神話」が蔓延し、支配層の意思がマスゴミに誘導されてほぼそのまま世論となってきた。
しかし、マスゴミの世論支配力が弱いエジプトやチェニジア、リビアではネットを利用した政治革命が起きたが、日本のような偽装「民主主義」国では、マスゴミの世論支配力が高いので相対的にネットの影響力が弱く、革命が起きにくい。だから、日本や欧米ではマスゴミ批判が重要であり、マスゴミは肝心な点では真実を伝えない機関であること、日本が実質的な「独裁国家」であることを、一人でも多くの国民に伝えることが重要である。
●特捜部は、隠退蔵物資を摘発するためにGHQが創設した組織であり、幹部には駐米大使館に勤務した者が多い。特捜部の暴虐非道ぶりは、郷原信郎元検事が著書で、特捜部内では「自殺者が出る事件はスジがいい」と言われていると証言したことや、特捜部の捜査で数十名もの自殺者を出していることからもわかる。この自殺者の中には、ウソを強要されて板挟みとなり、自殺した人がかなりいると思われる。
原発のプルサーマル計画に反対したため、冤罪で失脚させられた福島県の保守系前知事・佐藤栄佐久氏は著書で、特捜部の森本宏検事から「佐藤知事は日本にとってよろしくない、抹殺する」と取り調べ中に言われたと証言している。また、小沢事件では、小沢氏を起訴しなかった検察が検察審査会に提出する有印公文書を偽造してまで起訴するように誘導した。これは、制度上、有り得ない異常な事態で弁護団も抗議したが、裁判所はこの異常な制度に反する起訴を認めた。
戦後でも、芦田内閣の崩壊を狙った昭和電工事件や、特捜部が国策捜査と認めた住専事件のような事件もあるし、何と、捜査の結果「共産党政権になっては困る」と述べ、「すべての捜査は国策捜査」と公言した元特捜検事までいるし、最近でも、国策捜査と批判されている事件には、安田弁護士の事件、長銀事件、日債銀事件、住専事件、三井環事件、鈴木宗男事件、それに先述した佐藤栄佐久氏の福島県汚職事件や、民主党幹部石井一氏を標的にした村木事件などがある。
裁判所も、佐藤栄佐久氏の事件では、土地を市価通りに売ったことを裁判所も認めたのに、有罪とするような理解不能な判決を下した。西松建設事件も、反小沢キャンペーンが頓挫するので、裁判所は検察側の「訴因変更」要求を認めて、裁判そのものを「消滅」させてしまった。だから、裁判所も謀略組織の一部である。
しかし、もちろん司法機関は国民の国家への信頼も維持しなければならないので、冤罪ばかり産み出してきたわけでもない。小沢事件のような国策的事件では、検事は罪を捏造して起訴し、そして裁判では、最高裁の最高権力機関である「事務総局」は担当裁判官に圧力を掛け、国策に沿った判決を下してきたのである。
●左派やリベラル派が小沢事件を批判・傍観してしまったのは、おそらくはロッキード事件で形成された「特捜神話」の影響である。それで、小沢事件も、これまでの一連の汚職事件と同じと考え、特捜部を信頼して小沢氏を批判したり、どちらも信頼できないと傍観・沈黙してしまったのではないか。
自民党には従米派が多い清和会系と、独立派が多い旧田中派系の二つの勢力があり、前者からの逮捕者は非常に少ないのに、旧田中派系からは大量の逮捕者が出ている。旧田中派が金権的であったのは間違いない。しかし、金権的なのは旧田中派だけではなく、清和会系も同じだったが、特捜部は独立派である田中派議員を集中的に摘発してきたのである。
だから、西松建設事件でも、特捜部が逮捕した議員は独立派の政治家だけであった。従米特捜部は主に旧田中派を摘発することで、<田中派=小沢派=金権というイメージを形成し、国民に<小沢派=悪という先入観を植えつけた。ロッキード事件では、特捜部が主張した通り田中氏の5億円が全日空からの賄賂だとしても、賄賂の総額は30億円であり、残りの25億円は解明されないまま捜査は打ち切られてしまった。だから、対米独立派の田中氏だけが狙い撃ちされた謀略事件である。
この事件については、ある米国の有名記者がキッシンジャーに、ロッキード事件はあなたが起こしたのか?と質問したら、「もちろんだ」と答えたとか、中曽根康弘氏も自著で、キッシンジャーが「ロッキード事件をあのように取り上げたのは間違いだった」と語ったと証言している。
中曽根氏は田中氏が狙われた原因を、田中氏の石油政策と述べているのだが、これは、田中氏がソ連などから石油を調達して日本独自の石油供給ルートを確保しようと動いたこと指している。この政策は、米国が戦後も日本が反抗しないように米国系石油メジャーだけから石油を供給できないように制限していたことへの対抗策であった。 これらのことから、米国は従米謀略組
織を使って田中氏を失脚させ、小沢氏も田中氏の意思を継ぐ政治家として「失脚」させられたのである。
4:「三宝会」と小沢派
●小沢事件が政権交代と小沢政権の誕生を阻もうとした国策的な謀略事件であることは、「ニューヨークタイムズ」や「ニューズウィーク」、その他の多くの海外の報道機関が報道した。また、小沢事件はこの国の政治制度の根幹である「議会制民主主義」を否定する深刻な大事件であり、今のところ、この謀略はほぼ成功し、謀略組織は生き残っている。
小沢氏のブレーンである平野貞夫氏によると、小沢事件を起こした謀略組織は、1996年故竹下登氏が小沢一郎氏の政界における影響力排除を目的として結成した「三宝会」である。そして、その背後にはジャパン・ハンドラーと呼ばれている米国人のリチャード・アーミテージ、ジョゼフ・ナイ、マイケル・グリーンなどがいると推測されている。
米国は、日本の独立後も軍事的には在日米軍(「瓶の蓋」論)で、また政治的には日本の中枢に従米組織を作り上げ、軍事と政治の両面で日本が再び米国に刃向かうことがないように制御して日本を事実上の属国にしてきたと推測できる。だから、独立直後から日本の中枢には従米のネットワーク組織が存在したはずであるが、そうした組織と、この1996年に結成された「三宝会」との関連は不明であり、「三宝会」はそうした謀略組織を再編した存在か、あるいは下部の実行部隊的存在の一つかもしれない。
「三宝会」は、同じ旧田中派系の組織という点では疑問もあるが、もともと田中派は左派政党の分派のような共通の政策や理念で結成された集団ではなく派閥なので、対米独立派であった田中氏の周囲に、従米派も含めて様々な理由で集まった議員集団であった可能性が高い。あるいは、ロッキード事件で、竹下氏は従米派に転向し、独立派の金丸信氏=小沢氏系と対立関係になった可能性もある。
「三宝会」には、ほとんどの全国紙やテレビ局、電力会社などの大企業の幹部と学者などを構成員として結成された組織で、「三宝会」に前身組織があったかどうかは不明であるが、平野氏によると2009年までは確実に活動していたと言う。
小渕政権の官房長官であった野中広務氏も、官房長官だった頃は、前日中に翌日の新聞内容を全て知っていたと証言している。竹下派系である野中氏は全国紙の各社に情報源を持っていたということだが、この情報源は「三宝会」のメンバーであろう。また、「三宝会」には電力会社も参加しているので、「三宝会」は原発推進勢力でもあるはずである。
<「三宝会」の主な会員、
朝日新聞(5人)、毎日新聞(3人)、読売新聞(3人)、日経新聞(3人)、共同通信(3人)、TBS(1人)、日本テレビ(2人)、フジテレビ(1人)、テレビ朝日(2人)、講談社、文芸春秋、、プレジデント、選択、朝日出版社、日本電気、川崎電気(株)、日産自動車(株)、伊藤忠商事(株)、東京電力(株)、関西電力(株)、中部電力(株)、中部ガス(株) 、西日本旅客鉄道
(株)、東海旅客鉄道(株)、 東日本旅客鉄道(株)、 日本航空(株)、全日本空輸(株)、千代田生命 保険(相)、 セコム(株)、大成建設(株)、 日本電信電話
(株)、全国朝日放送(株) 、サントリー(株) 、 日産不動産(株)、 マルハンコーポレイション、徳 洲会、帝京大学、(株)ホリプロ。これ以外に10社以上が参加して
いる。
<「三宝会」事務局
東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル (株)フジインターナショナルアート内
●小沢氏は、自民党の幹事長であった頃から、記者会見を記者クラブ以外の一般の記者にも開放していた政治家である。記者クラブの記者たちは、官房機密費で政権に取り込まれた腐敗ジャーナリスト集団なので、記者会見の時には、記者クラブの記者には厳しい態度を見せるのだ思われる。
小沢氏は、今回の冤罪事件でもジャーナリストが政治家を批判する記事が書きにくくなる弊害を考慮して、小沢批判記事を書いたジャーナリストたちに謝罪も、損害賠償も求めない。また、小沢氏は党の所属議員に党議拘束をかけずに、自由に投票できるようにした。このように、小沢氏は保守系ではあるが、資質的には驚くほどリベラルな政治家である。
小沢氏の力の源泉は、おそらく資金力とか人脈が豊富というようなことではなく、独自の「綱領」を持ち、絶えず更新していることであろう。だから、小沢氏はほとんどの政治的課題について、いつでも即座に自らの政策を提示して理由も説明できるのである。政党でも「綱領」が無い政党があるのだが、小沢氏は自らの「綱領」を持つ非常に珍しい政治家であり、このような政治家は、今の保守系政治家にはほとんどいないであろう。
小沢氏は民主党代表だった2006年と昨年、共産党に選挙での共闘を申し込んだ。保守政治家で共産党に選挙での共闘を申し込むような政治家は、小沢氏以外にはいない。この点でも、小沢氏はどこにでもいるような普通の保守政治家のイメージでは捉えられない型破りな政治家である。
●小沢派の岩手県達増拓也知事は、「(小沢は)田中角栄さんや金丸信さんの政治とは決別し、クリーンな政治を貫いている」と証言し、小沢氏の師匠である田中氏や金丸氏が、必ずしもクリーンな政治家ではなかったことを認めている。
小沢氏は、田中氏や金丸氏らの先輩が形成した人脈を引き継ぐことで、違法行為をしなくとも一定の政治資金が集めら立場にいる。そして、対米独立派として検察に狙われていることも知っていたので、特捜部に摘発されることを警戒してきた。実は小沢氏ほど、政治資金を明確に公開している政治家は他にはいないのである。だから、「特捜部」は子供騙しのような屁理屈でしか立件できなかった。
2011年、小沢氏自身の裁判が始まると「陸山会」への献金が急増して、この年に100万円以上の個人献金をした人は全国で109人、そのうち上限の150万円献金した人が9人もいたという。これらの大口献金者の中には、何らかの利害関係から支持している人もいるだろう。しかし、小沢氏は常に特捜部から狙われている政治家なので、小沢氏の大口献金者も特捜や国税から狙われる可能性がある。
だから、小沢氏の大口献金者の多くは他の政治家と異なり、それなりの覚悟で献金している人、つまり小沢氏を日本を真の独立国にしようとしている政治家として支持する「民族資本家」とでも言うべき人たちではないだろうか。このように解釈しないと、なぜこの国の支配層でもある大口献金者たちが、今でも熱狂的に小沢氏を支持しているのか理解できないのである。
●菅元首相が講演で、小沢派の反原発は人気取り政策と述べたそうであるがこれは誤解である。というのは、小沢氏の第一のブレーンである元参議院議員の平野貞夫氏は、法政大学時代は共産党の活動家だった人で、しかも日本の反原爆運動の創始者の一人であった安井郁法政大学教授(原水爆禁止日本協議会・初代理事長)の愛弟子であった経歴の持ち主だからである。
しかも、平野氏は民主党・高知県連代表の時、当時の民主党代表であった小沢氏と相談して高知県に中間貯蔵施設を造ろうとした策動を潰している。だから、小沢氏と平野氏のコンビは、3・11以前から実際に反原発運動もしていたのである。こうしたことも、小沢氏の「罪状」となり、小沢氏への冤罪攻撃が企てれたのであろう。
5:左派やリベラル派の歴史的<大失態と「未来の党」分裂の背景
●2009年3月、当時の自公政権は文字通りの末期的状態に陥り、謀略事件でも捏造して民主党に打撃を与える以外には、政権交代を阻む術は全く無い情勢であった。そのような情勢で、ほぼ次期首相が「内定」していた野党第一党の党首小沢一郎氏を標的にした、余りにも自公政権に好都合な「西松建設事件」が起きた。
この事件はその後、特捜部の証拠の捏造や有印公文書の偽造など、あきれた実態が暴露されたことからもわかるように、民主党による政権交代と小沢政権の樹立を阻止するための謀略的冤罪事件であったことは明白である。 この事件
は、「議会制民主主義」というこの国の根幹となる政治制度を損なう歴史的重大事件でり、3年半も政治を混乱させてきたので「特捜部廃止論」まで出ているが、違法行為を行った検事は一人も起訴されず、真相解明されないまま闇に葬られようとしている。 ところが、小沢氏を批判した共産党はもちろん、社民党も、昨年の総選挙ではこの重大事件に関する司法改革などの政策は何も取り上げていない。「未来の党」だけが、「司法官僚による国民の権利侵害を止めさせる措置を早急に講ずる」と「行政・司法苦情処理第三者委員会を国会に設置する」の二つの政策を掲げて戦っただけであった。 この謀略事件を糾弾すべき左派とリベラル派の大半は傍観・沈黙するか、あるいは共産党や第四インターのように、特捜部やマスゴミと足並みを揃えて小沢氏を批判する側にまわってしまったため、左派とリベラル派は、その後、特捜部のあきれた実態が暴露されても、ほとんど批判らしい批判が出来ない立場に陥ってしまったのである。 小沢氏を標的した小沢事件は、選挙による政権交代を謀略により、阻もうとした事件であった。しかも、これらの事件で、この国の最高権力である特捜部は有印公文書の偽造、違法な取調べを行っていたのが暴露されたのである。また、民主党幹部石井一氏を標的にした村木事件では、特捜部による証拠の捏造も暴露された。しかも、この国のマスゴミは3年半もの間、小沢氏を犯罪者扱いして洪水のような批判報道を行ったのである。それなのに、この国の左派政党は何事も無かったかのように沈黙している。 これは!
、2009年当時の日本では、「特捜神話」や<田中派=小沢派=金権派というイメージが強固だったことが影響したのだろうが、日本の左派やリベラル派の政治史に残る歴史的<大失態であった。 ●小沢派の支持者はこの4年間、少数のジャーナリストや孫崎亨氏のような小沢氏を擁護する評論家もいたが、ほぼ孤立無援のまま、何度も独自デモを行うなどして事件に抗議してきた。そして、この孤立感が、常日頃、民主主義とか人権とか語っていた左派やリベラル派が小沢事件を傍観・批判したことへの激しい怒りを引き起こし、この小沢派の怒りが、嘉田派=リベラル派=への過剰な不信・批判となって現れ、「未来の党」の相互不和を増長し、分裂を引き起こした背景的原因となったのは間違いない。 小沢派と「未来の党」の両派は一つの政党として活動することを前!
提に投票を呼びかけたので、分裂しても両派は極力、協力する義務がある。また協力しなければ「円満に分かれた」という弁明までもウソということになり、更に両派の信用は傷つく。だから、両派は何らかの形で協力すれば、「未来の党」が媒介となり、小沢派と左派が協力する体制ができるかもしれない。 小沢氏は、昨年共産党に「オリーブの木」結成を提案した時も、共産党に自己批判は求めなかったので、左派と「生活の党」が共闘する場合も、謝罪とか自己批判を求める可能性は全く無い。しかし、小沢支持者は、傍観・批判した左派やリベラル派に対して激しく怒っているので、「未来の党」の場合のような摩擦が起こるかもしれない。 だから、小沢氏を批判した左派やリベラル派は、冤罪に加担した倫理的・道義的!問題だけでなく、小沢派支持者と円滑に連帯するためにも自発的に自己批判し謝罪すべきではないか。おそらく、一番先に誤りを認め、自己批判・謝罪をしたものは、その勇気を称えられるのではないか。 原発事故後のマスゴミ報道は、多くの国民にこの国は報道が統制された国家であることを認知させ、山本氏らのような事実上の「独裁国家」論者も生み出した。しかし、相変われずテレビや新聞は福島第一の事故を過小評価させようとして、「低レベル放射能安全神話」を垂れ流しているので内部被曝が進行し、福島では心配されていた被害が出始めている。だから、小沢事件だけでなく原発事故の件でも、一人でも多くの国民に、マスゴミを信用しないように訴えるのは緊急の課題ではないだろうか。 「阿修羅」掲示板 http://www.asyura2.com/
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