TPP/政府と北海道の試算:どちらにリアリティがあるか?
- 2013年 3月 20日
- 時代をみる
- TPP醍醐聡
日本がTPPに参加することによって、関税が撤廃された場合の影響を試算したデータが政府と北海道から公表された。これについての元資料を紹介したうえで、それらに関する私の、ごくごく初歩的であるが、コメントを記すことにしたい。
「関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算」(内閣官房、2013年3月15日)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130315_touitsushisan.pdf
「関税撤廃による北海道農業等への影響試算」(北海道農政部、2013年3月)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/eikyosisan_hokkaido20130319.pdf
(北海道農政部農政課 政策調整グループに依頼して送ってもらった試算文書である。同グループの担当者の話では、今現在、道のHPにはアップしていないとのこと。)
なお、2011年11月に北海道が公表した次のような文書がある。
TPP協定の影響に関するQ&A(北海道)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ssa/ssk/TPP_QA2.pdf
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政府の試算のポイントは、新聞でも報道されているように、
(1)日本経済全体への影響(GDPベース)
輸出 +0.55%(+2.6兆円) 輸入 ▲0.60%(▲2.9兆円)
消費 +0.61%(+3.0兆円) 投資 +0.09%(+0.5兆円)
(2)農林水産物生産額 ▲3.0兆円
というものである。
他方、北海道の試算のポイントは、
生産減少額(12品目)▲ 4,762億円
影響額合計 ▲15,846億円
農業生産額 ▲ 4,931億円
関連産業 ▲ 3,532億円
地域経済 ▲ 7,383億円
雇用への影響 ▲ 11.2万人
農家戸数への影響 ▲ 2.3万戸
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それぞれの試算については、その方法まで立ち入った詳細な検討が必要であるが、大枠でみた時の決定的な違いは、農林水産業への影響が及ぶ範囲の捉え方の広狭である。
政府の試算が、農林水産物生産額の減少という、いわば第一次的影響の試算にとどまっているのに対して、北海道の試算はそうした第一次的影響に加え、関連産業に及ぼす影響、さらには地域経済に及ぼす影響(それぞれの試算の方法の概略は添付した文書の3ページで説明されている)も試算している。
しかも、北海道の試算では、第一的影響が▲4,931億円であるのに対して、関連産業への影響が▲3,532億円、地域経済への影響が7,383億円となっており、第一的影響よりもはるかに大きいマイナスの影響となっている。
しかし、TPPの影響は、北海道関係者などが早くから指摘してきたように、農林水産業の生産に及ぼす直接的即物的影響にとどまるものではなく、農林水産物を加工する関連産業、さらにはそうした産業を主たる基盤にした地域経済に及ぼす影響まで考慮しなければ、生きた影響試算にならないことは明らかである。
この点で、政府の試算(DGPベースの影響試算)は国全体のマクロ経済への影響試算といいながら、農林水産業となると、関連産業や地域経済に及ぼす影響を視野に入れない、極めてずさん、かつ、首尾一貫しない試算といえる。
こうしたデタラメな数字が独り歩きしないよう、徹底した批判の広報が必要である。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2217:130320〕
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