【猶予期間にNO!】規制委が「新安全基準」運用方針を提示
- 2013年 3月 27日
- 交流の広場
- 原発「新安全基準」杉原浩司
3月19日午前に開かれた規制委の定例会合で、田中委員長の私案として
「原発の新規制施行に向けた基本方針」が示され、委員間で議論が行わ
れました。短いやり取りを経て、大枠は合意となったようです。
原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0033_12.pdf
文書には「新規制導入の際には、基準への適合を求めるまでに一定の施行
期間を置くのを基本とする」と書かれています。更田豊志委員は「一律、即時
の適用は硬直的で教条主義的」「一定の施行期間を置くのは国際的にも常識」
と述べ、「日本をまたガラパゴスに後戻りさせないためにもこの方針は守られ
るべき」と強調しました。さらに、「新規制導入に当たっての取扱い」の項には、
(1)今年7月の新規制の施行段階で、設計基準事故対策及びシビアアクシデ
ント対策(大規模自然災害やテロに起因するものを含む)として必要な機能を
すべて備えていることを求める、
(2)シビアアクシデント対策やテロ対策の信頼性向上のためのバックアップ対
策については、施行後5年までに実現を求める」
との区分けがなされています。「施行後5年まで」の猶予期間を認めるのは、
まさしく再稼働への布石でしょう。これに関して、更田委員は、(1)の中に沸騰
水型軽水炉(BWR)のフィルター付ベントを入れ、一方で加圧水型軽水炉
(PWR)のフィルター付ベントは(2)に含めています(下の動画参照)。
PWRは西日本に多く、そのため、伊方、川内、玄海の各原発が今秋以降の
再稼働有力候補として報じられ、「年内に再稼働出来るのは伊方の1基と川
内の2基くらいではないか」との経産省幹部の発言も伝えられています(発売
中の『週刊ダイアモンド』3月23日号)。
◆上記関連の更田委員の発言は
(1時間32分45秒~1時間35分45秒)(1時間44分00秒~1時間49分00秒)です。
ぜひご確認ください。
↓
【動画】第33回原子力規制委員会(3月19日)
http://www.youtube.com/watch?v=gQeL0VNa_L8&list=UU5_urTtPY2VjNc1YOI4rBCg
<参考:更田委員による区分けの文字起こし>
①設計基準として要求しているもの、地震・津波への防護機能、溢水への
防護対策、火災防護対策、非常用冷却装置の配管などの静的機器の多様
化、シビアアクシデント対策に関しては、炉心損傷防止のためにスクラムを
失敗した場合の未臨界確保の機能、高圧時低圧時の冷却、圧力容器を減
圧するための機能、最終ヒートシンクへの熱移動、格納容器損傷防止対策
(減圧、冷却、放射性物質低減機能など主に可搬機器で求めているもの)、
BWRのフィルターベント、電源系統の強化など
②特定安全施設、可搬施設でとっているシビアアクシデント対策やテロ対策
に対して、さらに後ろの備えとして、信頼性を向上させるためのもの、主には
恒設ポンプによる格納容器スプレーとか、別の策を事業者が提案することも
可能だが例えばPWRのフィルターベントとか、3つ目の恒設の直流電源など。
田中委員長は更田委員による区分け方針を受けて、「どれをどちらにするか
はこれからもう少し議論してほしい」と述べていました。
これに対して、私たちがどのような要求をどう伝えていくべきか、28日の次回
の新安全基準検討チームでのパブコメ審議に向けて、考えどころだと思います。
「猶予期間を認めず、可能なすべての安全対策を義務付けよ」という主張を、
いかにして広めて、規制委にプレッシャーをかけられるかが再稼働を止める
ために不可欠だと思います。知恵を出し合って具体的な取り組みを作りまし
ょう。
【関連記事】
大飯原発は新基準導入後も運転継続へ、9月以降に原発ゼロも=規制委
(朝日:ロイター、3/19)
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR201303190132.html
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。