アベノミクスと為替・株価の相当因果関係
- 2013年 5月 3日
- 交流の広場
- とら猫イーチ
アベノミクスについては、マスコミを中心として意識的に、または無意識的にか、どちらかは分からないものの、客観的では無い報道が目立ちます。 特に、為替と株価の変動を、恰も関係があるかのように論ずる傾向が政権への迎合としてあるように見受けられます。 この事実は、今まで何度も指摘して来ましたので重ねての記述は無用かも知れませんが、データを挙げて再論したいと思います。
それは、端的に云いまして、昨年来の円安と株価高騰がアベノミクスの効果に依ると、御本人も追随される方々も主張されるのですが、全くの誤謬と云いたいからです。 こんな馬鹿らしい論を真に受ける証券アナリストや、金融関係者、それに投資家は、殆ど居ないことと思われます。 それは、投資関連情報として関係先企業や投資家に提供される高度な金融情報では、安倍政権の金融・財政政策に対する警戒感こそあるものの、無邪気な高揚感は無いからです。
さて、株価です。 TOPIXのチャートで観ますと、昨年秋から、世界的な株価上昇への転機があり、その後は一貫して上昇していることが分かります。 東証が公開していますデータ(株価指数ヒストリカルグラフ -TOPIXコンポジット-)を例に採りますと、2012年6月4日に879.49で底をつけた指数は、その後反転上昇していることが分かります。
株価指数ヒストリカルグラフ -TOPIXコンポジット- 東証株価の上昇は、何も日本だけではありません。 昨年、初夏から秋にかけて投資環境の転換点があったのです。 それは、米、英、独、それにインドの市場のデータを参照すれば、一目料然です。 参照先には、より多くのデータが蓄積されていますので併せて御覧いただければ幸いです。
http://jp.advfn.com/p.php?pid=qkquote&symbol=DJI^I\DJI
NYダウ 指数 価格 (DJI) ADVFN
http://jp.advfn.com/p.php?pid=qkquote&symbol=FT^UKX
FTSE100 指数 価格 (UKX) ADVFN
http://jp.advfn.com/p.php?pid=qkquote&symbol=DBI^DAX
DAX指数 指数 価格 (DAX) ADVFN
http://jp.advfn.com/p.php?pid=qkquote&symbol=BSE^SENSEX
BSE SENSEX指数 指数 価格 (SENSEX) ADVFN
為替も同様ですが、世界的なリスクオフからリスクオンへの転環(リスクを避けた投資から、リスクを採った投資への流れ)があったのが理由です。 ですから、この時期にポートフォリオのリ・バランス(投資先の再考と再編)を行ったヘッジ・ファンドを始めとする機関投資家が、世界第三位の経済・日本を投資先として見直すのは当然のことでしょう。
株でも為替でも、買えば上がる、売れば下がる、と理由は簡単です。 欧州ソブリン危機で比較的安全と(当時は)思われた円に逃げたマネーの所為で円高になり、小康状態になった欧州へ円が環流した結果で円安になったのです。
今や、日本の株式市場では、出来高の四割強にも達している外国人の売買傾向が大きく影響しています。 その外国人が、連日の買い越しなのですから、株価が上昇しない訳がありません。 反面、日本人は売り越しが基調ですので、リーマンショックで損した分を取り返したら、さっさと逃げ売りが勝ちと思っている証拠です。
外国人動向―MSTG
最後に、経済を論じるのに、今の株価を引き合いに出すのは見当違いです。 かのジェレミー・シーゲル(Jeremy J. Siegel)は、1987年の暴落を例に採り、「経済と株価の動向はあまり一致しないということである。 多くの投資家が株式投資の戦略を立てる際に景気予測を参考にしないのは、驚くことではない。」と指摘されます(「株式投資」Stocks for the Long Run )。 ましてや、実際に政権に就いてもいない内に、実績の無い首相の発言のみが株価動向にまで影響を与えることなど在り得ないことでしょう。 グローバルになった今日の市場では、世界を観ないと為替も株価の傾向も分からないのです。 アベノミクス等は、法律学で云う「相当因果関係」は無いものと云うしかありません。
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。