大飯原発の停止を求める規制庁交渉報告
- 2013年 5月 4日
- 交流の広場
- 大飯原発阪上武
みなさまへ(転載歓迎)
先日行われた大飯原発の停止を求める院内集会と政府交渉について報告させてい
ただきます。
http://www.jca.apc.org/mihama/News/news122/news122koushou.pdf
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4月30日原子力規制庁交渉報告
大飯原発の運現継続に法的根拠なし
活断層3連動による耐震安全性評価は当然と認める
阪上 武
4月30日に参議院議員会館にて、大飯原発の3連動評価と原子力規制委員会に
よる3・4号機の「現状に関する評価会合」を巡り、院内集会と原子力規制庁と
の交渉が行われました。連休の谷間でしたが、関西、首都圏の市民約60名が集ま
りました。規制庁側は、安全規制管理官付(PWR・新型炉担当)管理官補佐の布
田洋史氏と安全規制管理官付(地震・津波安全対策担当)企画担当の牧野祐也氏
が対応しました。
◆大飯3・4号機の新規制基準施行後の運転継続に法的根拠なし
原子力規制委員会は現在新基準の策定作業中ですが、他の原発とは異なり、大
飯3・4号機については特例扱いにして、7月に新基準が策定された後でも、次
の定期点検(9月)までの継続運転を許し、代わりに「大飯発電所3・4号機の
現状に関する評価会合」で新基準との適合性を評価するとしています。しかしそ
の法的根拠は曖昧です。まずはその点について質問しました。
規制庁の布田氏は、3月19日の原子力規制委員会定例会合の資料として出された
「田中私案」に記載があり、それが委員会で議論され、承認されたと説明しまし
た。しかし、法的な位置づけについて確認すると、「現状評価」は正式な安全審
査ではない、現状で大飯原発が動いている法的根拠は、現行法令に基づく許可だ
と説明しました。では、7月になって新規制基準が施行された場合に、大飯の運
転を継続する法的根拠について聞きましたが、田中私案の説明を繰り返すだけで
明確な回答はありませんでした。新規制基準施行後の運転継続に法的根拠がない
ことが明らかになりました。
◆活断層の3連動評価により基準を超えたら耐震安全性の再評価が必要だと確認
続いて4月19日の「評価会合」に原子力規制委員会から提出された資料1-4及び
そのときの島崎委員長代理の発言により、3連動することを前提とした評価をす
べきだとの考え方について確認しました。関電が現行の700ガルが3連動では
1.46倍(約1000ガルに相当)になると福井県に説明していることについては「承
知していない」という回答でしたが、関電に3連動の評価をさせること、それに
より現行の基準地震動を超えた場合に、大飯3・4号機の耐震安全性の評価し直
しが必要となることについては、「当然である」との回答を得ました。
◆制御棒挿入時間2.2秒を超えたらどうなるのか
大飯3・4号機の制御棒挿入時間の評価について、評価基準値2.2秒は、設
置変更許可申請書の添付書類八及び十に書かれており、それで審査されて設置許
可を受けていることを確認しようとしました。布田氏は、事故解析における評価
基準値であることを認めた上で、設置変更許可申請書にある事故解析は地震を前
提としておらず、地震時の制御棒挿入性能は、詳細設計にあたる工事計画認可書
で受ける、そこでは2.2秒は「目安値」であり、電気協会の耐震設計技術指針
により、挿入時間の評価値が2.2秒を超えた場合でも、過渡解析を行うことに
より安全が確認できればよく、直ちに止めなければならないというわけではない
旨を回答しました。
市民側は、地震時には評価基準値が突然に目安値となるというのは理解しがた
く、保安院から得ていた文書回答の内容とも矛盾すること、設置変更許可申請書
の添付資料十は事故解析だが、添付資料八は制御棒駆動装置の仕様であり、そこ
に挿入時間2.2秒以内との記載があるが、これは明らかに地震時かどうかに関
わりないものであることなどを根拠に、2.2秒は地震時も基準値とみるべきだ
と主張しました。また、工事計画認可書にしても認可の手続きが必要で、具体的
にどうなるのかについても聞きましたが、現時点で2.2秒を超えた訳ではない
と逃げ、回答はありませんでした。再評価により2.2秒を超えた場合には、そ
の時点で運転の法的な根拠を失うのは明らかだと思います。
◆破砕帯の調査中であるのにどうやって「現状評価」を行うのか
7月の新基準策定後の再稼働申請について、破砕帯調査を実施中の原発につい
ては、規制委員会での結論が出るまでは申請さえ行うことができないことになっ
ていますが、大飯だけは特例で運転継続を許そうとしています。「破砕帯調査の
実施中であるのに、なぜ新基準適合性の評価が行えるのか?」この質問は、規制
委・規制庁による現状評価のもつ矛盾を端的に表すものとなりました。
規制庁側はまず、破砕帯については調査中であり、活断層かどうかについて結
論が出ていない、だから原発を止めることはできないとの論を繰り返しました。
しかし結論が出ていないということは、活断層であることを否定できないという
ことであり、運転継続を認めることこそできないことになります。次に規制庁が
強調したのは、現状評価会合で関電から資料を出させ、それにより安全上重大な
問題が出れば止めることにしているというものです。しかし、関電からは、F-6
破砕帯は活断層ではないという従来の資料が出るだけであることは明らかで、そ
れを詳細に検討している規制委の調査団がまだ結論を出していないという状況で
あり、判断のしようがありません。規制庁は、破砕帯については調査を継続し、
現状評価では基準地震動と基準津波について確認を行うとも述べましたが、それ
では、新基準の適合性を確認するとの「田中私案」にも反することになります。
しまいには、「大飯原発は運転しているから」と本音も出てきました。
このような対応に市民側はいらだち、原発から数十キロのところに住んでいる
が、そうした人の気持ちを考えてきちんと規制して欲しいとの訴えもありまし
た。いずれにしろ、破砕帯調査中の現状評価について、安全上重要な部分で判断
の根拠がなく、現状評価を行うこと自体に無理があることが明確になりました。
新基準に「地すべり」が盛り込まれた件については、「地すべりが基盤に及ん
でいるかどうかの結論がまだ出ていない」との回答でしたが、これについても疑
わしきは黒との判断基準に立てば、即刻原発を止める判断をすべきものです。
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