「朝日新聞」の紙面コメントで言いたかったこと~TPPをめぐって~
- 2013年 6月 30日
- 時代をみる
- TPP醍醐聡
今朝(2013年6月30日)の「朝日新聞」3面に、「安倍政治を問う 2013参院選4」として参議院選挙の争点の一つになっているTPPの問題が取り上げられた。その紙面の一部に「識者はどう見る」というコラムが設けられ、TPP推進派の原田泰・早稲田大学教授(経済政策論)の「自由貿易 国の繁栄に必要」という見出しが付けられたコメントと並んで、私のコメント(「農業生産激減、マイナス大」:編集部がつけた見出し)が掲載された。全文は次のとおり。
紙面に掲載された私のコメント
「農業生産を激減させ、農家の所得を減らすなどマイナス面が大きい。それなのに政府が農業所得倍増をうたうのはごまかしだ。薬価が高くなる可能性も指摘されており、医療の財政負担を減らす政策に逆行し、保険料にもはね返る。農家と消費者は食品表示の徹底や地産地消で食の安全と食料自給率の向上を図るために連携すべきだ。お互いの利益になる。」
もともと、限られた紙面の中で意を尽くすのは至難のことだ。また、読者に読みやすい平易な文章になるよう編集部が手を入れるのは必要なことだ。しかし、編集部内で種々、手が入るうちに、私の所期の論旨がぼやけた感がある。その点を復元するため、私が担当記者に送ったコメント用原稿(改訂版)を掲載したい。
私のコメント用原稿~所期の論旨を復元するために~
「農業生産を激減させ、大多数の農家の所得を細らせるTPPへの参加を表明しながら、農業所得倍増を謳うのは欺瞞だ。食料自給率の向上をめざす国の政策にも逆行する。先発医薬品の特許期間の延長を図るTPPに参加するのは、安価な後発医薬品を普及させ、医療財政を改善しようとする薬価政策に逆行する。農業者と消費者の利害は対立するわけではない。生産履歴や食品表示の徹底、地産地消で食の安全と自給率の向上を図るために連帯できる課題は多い。」
農家の不安をリアルに伝えた紙面は一読の価値あり
とはいえ、北海道十勝の芽室町のテンサイづくり農家と山形県南陽市の米・さくらんぼづくり農家の取材にもとづいて書かれた紙面は、政府のTPP参加表明によって不安を募らせる農家の実態をリアルに伝える記事である。特に、芽室町の農業は5月に私たち大学教員2名が視察に出かけた地方でもあり、記事に共感するところ大である。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/tpp-a9d1.html
北海道庁と帯広/十勝へ、TPPの現地調査と意見交換にーー大学教員影響試算作業チームーー
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/tppiwj-64c3.html
TPP影響試算作業チームの北海道現地調査の模様~同行取材したIWJの録画で~
また、記事の中で、政府が掲げる農業所得倍増計画に懐疑的な農家の声を伝えた箇所は私のコメントとも重なり、多くの国民に知ってほしい点である。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座
http://www.chikyuza.net
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