7.8原発の再稼働を許さない全国集会報告
- 2013年 7月 10日
- 評論・紹介・意見
- 原発再稼働反対田中一郎
7月8日,北電,関電,四電,九電の各社は,多くの市民が反対・抗議する中で,5原発・10基の原発再稼働の申請書を原子力「寄生」委員会に提出いたしました(東京電力は柏崎刈羽原発の申請を見送り)。他方では,原発再稼働に反対する市民らが中心になって,参議院議員会101において,記者会見並びに「原発の再稼働を許さない全国集会」,及び原子力「寄生」庁交渉が行われました。北は北海道の泊原発から,南は鹿児島の川内原発まで,地域で原発の稼働に反対している方々が参集し,原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が8日より開始した,いい加減極まる「新規制基準」に基づく原発再稼働へ向けた「審査」についての抗議記者会見が行わ
れ,その後,全国各地からの状況報告,続いて今後の再稼働阻止行動のあり方などが話し合われた後,原子力「寄生」庁との交渉となりました。当日の参議院議員会館は,参議院選挙運動期間中ということで,ほとんど人がいない閑散とした状態でした。
集会では,①原子力「寄生」委員会が定めた新規制基準がそもそもおかしい,②そのおかしな規制基準を,最初から満たしていないことが明らかな原発が4社・5原発・10基も再稼働申請されている=こんなものをなぜ受け付けるのか,つき返せ,③福島第1原発の事故の収拾もできておらず危険なままで,被害者の救済もしないで放置状態,かつ福島第1原発事故の教訓もほとんど活かされていない,④各原発の立地地域自治体による「原子力防災計画」が実効性を持たない「単なる作文」にすぎない。このまま原発が事故を起こせば,多くの立地地域住民は逃げることもできず,放出された大量の放射能によって猛烈な被曝を余儀なくされ「棄民」されてしまう。要するに過酷事故が起きたら地域住民は「死ね」ということだ,⑤基準も何もないプルサーマルが同時申請されている,危なくて見ていられない,など,多くの懸念が出さ
れていました。
一方,原子力「寄生」庁の方は,交渉の場において,あいも変わらず「個別原発の審査の中身については,具体的なことを申し上げられない」と,いつものごとく終始一貫して「のたら,くたら」を繰り返し,福島県から避難されておられる被害者の方から「あなた方原子力「寄生」庁の姿勢はあまりに不誠実である」と,怒りの叱責をかっておりました。
具体的に出された原子力「寄生」庁への質問についても,たとえば,
(1)最近,政府の地震調査研究推進本部(推本)が九州の活断層調査結果を発表したが,そこでは川内原発周辺に新たな活断層が見つかり,九州電力の活断層調査があまりにずさんでいい加減であると批判されていた,地震や津波,あるいは原子炉構造などについて,シロウトばかりの集まりである原子力「寄生」委員会・「寄生」庁では,原発再稼働の審査はやり切れないはずで,今後,こうした専門家の意見はどうくみ上げるのか,の質問に対して,原子力「寄生」庁は「専門家の意見をどういう形で求めて行くかは未定だ」と回答した(⇒ そういう状態で,何故,審査の受付を開始するのか,と怒りの疑問が多発)。
また,川内原発では,火山活動による火砕流の危険が現実的であることが判明しつつある。地元市民団体の人の話によれば,原発敷地のすぐそば数十メートルのところに火砕流の痕跡のようなものまで発見されているというのに,九州電力は敷地内には火砕流の痕跡はないとしてこれを無視,火山の心配は無用だとしているという。しかし,原子力「寄生」庁の役人達は,このことも知らなかったし,知ろうともしていない様子だった。
(2)伊方原発で事故が起きれば。佐田岬半島にある原発の西側に住む住民数千人は逃げられないが,どうするのか。また,高浜や大飯の原発が地震・津波に襲われれば,唯一の海沿いを走る国道は海水の下に沈んで使えない,山越えの道路もがけ崩れ等で使えない,住民はどうやって逃げるのか。また,防災計画では事故を起こした原発に向かって一目散に走って駆け抜けろ,となっているが,こんなものが「防災計画」と言えるのか,との厳しい質問に,「防災計画は原発再稼働の法的条件ではない,政府は自治体がつくる防災計画のお手伝いをするだけ」(田中俊一原子力「寄生」委員長が「防災計画の整備は必要不可欠」などと言っていることは単なるリップサービス)と,完璧な逃げの姿勢に終始した。(会場参加者が激怒,ヤジと怒号)
注:原子力「寄生」庁によれば,防災計画を策定すべき原発30km圏内の自治体のうち,道府県は福井県を除いて全部が策定済み,基礎自治体の市町村では136自治体のうち114自治体が策定を終了(未了は22自治体:2013年6月末)とのことだった。しかし,策定されたとされる防災計画のほとんどは「実効性」をもたず,実際に原発に過酷事故が起きれば,ほとんど住民は逃げることができないまま,猛烈な放射能の被曝に曝されることとなる。地震・津波の災害と原発事故が同時並行で起きれば,事実上,お手上げ状態であることが,この防災計画の中身が顕著に示していると言える。また,福井県の原発での1つの過酷事故は,若狭湾沿岸の15の原発・核燃料施設の「将棋倒し」を招き,全機が冷却不能の「恐怖の死神ゾーン」となる可能性や,放出された放射能によって琵琶湖の水が汚染され,関西地区の飲料水がなくなる懸念も出されていた。
(3)原子力「寄生」庁は,大飯原発再稼働までの「審査」期間中に,関西電力と80回以上にわたる「裏談合」を繰り返していたにもかかわらず,この「裏談合」については「非公開」とする姿勢を変えないと強弁,返す刀で,福島県民をはじめ,福島第1原発事故で被害を受けた人々や,審査に係る原発の立地地域住民の声を聞く場を設けるべきだとする声に対しては,回答せず。
(4)免震重要棟や防潮堤の確保などについては,今回の新規制基準見直しの目玉的な重要要件であり,猶予期間も設けずに即時適用とされているにもかかわらず,これらがなければ再稼働はあり得ないのだな,との確認質問に対しては,「機能的に見ているから,想定される目的が達せられるのであれば,必ずしも設置が絶対条件となるものではない」などと答弁した。このままでは,大飯原発同様,重要免震棟も防潮堤もないまま再稼働が認可されかねない様子がうかがえた。(参加者全員呆れてしまった)
(大飯原発3,4号機では,隣の1,2号機の建屋の中にある面積の狭い会議室が重要免震棟の代わりとされた。代わりとなれるはずもないが,それを原子力「寄生」委員会は認めて運転継続にGOサインを出した。福島第1原発事故の際は,免震構造でつくられていて放射能が中に入ってこないように設計されていた重要免震棟がなかったら,ほとんど事故対策が打てず,大変な事態に陥っていたと言われている。その「原発の命綱」とも言える免震(放射能遮断)重要棟を,大飯原発でやったように,狭い会議室で代替して「安全上,重要な問題はない」などとしていて,ほんとうにいいのか。また,防潮堤については,多言を要しないだろう)
(5)ウラン原子炉でプルトニウムを燃やすことにより,格段に原子炉としての危険性を増すプルサーマルについては,特段の新規制基準はない状態のまま,恣意的な審査を繰り返す様子がうかがえた。今から10年以上も前の原子力安全委員会時代の古文書を参考にするだの,しないだのというやりとりがあったが,ほとんど無意味。福島第1原発3号機事故では,プルトニウム燃料が核爆発を起こしている可能性もあるとされているにもかかわらず,事故3号機の検証もしないで,プルサーマルも同時並行で認めて行きそうな雰囲気だった。
また,プルサーマルについては,使用済み(MOX)燃料の後始末をどうするのかも決まっていない(質問事項)。経済産業省の若い役人が交渉の場に同席していて,再処理方針を続けます,などとふざけたことを繰り返し発言して,さっさと引き上げて行った。プルトニウムが多く含まれている使用済みMOX燃料は,原発のウラン使用の使用済み核燃料に比べると,格段に汚い=扱いにくい放射能がたくさん含まれている,にもかかわらず,その後始末を決めないで,いい加減なままプルサーマルを続けて行くという。プルサーマルは,経済的に見ても,ウラン燃料原発に比べてかなりの高コストである。いったい何のために,そのような馬鹿なことを続けるのか。
まだ,個別問題ではいろいろあるが,それらを総じて申し上げれば,もはや原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は,福島第1原発事故前の原子力安全委員会・原子力安全保安院の時代と同レベルか,場合によってはそれよりもひどい状態に転落しつつあり,福島第1原発事故の教訓を踏まえて厳しく規制するなどというのは,単なる紙に書かれた「お題目」か,原子力「寄生」委員の「リップサービス」にすぎない状態にされようとしている。
大飯原発がその典型的な事例となって危険なままで「先駆けし」,続いて今回,最初から新規制基準を満たさないことが分かっているのに再稼働申請された5原発・10基が,その後を追いかけて行く。そして,更にその後,国民が福島第1原発事故を忘れた頃に,法定寿命40年を超えた老朽化原発のなし崩し的稼働継続や,全く稼働の意味をなさないにも関わらず,危険極まりなくて,放射能丸出しの核燃料サイクル施設の再稼働が続いていくに違いない。
日本列島は地殻変動期に入り,太平洋側のみならず日本海側や北海道・沖縄も含め,いつ巨大規模の大地震・大津波が起きてもおかしくない時期に突入した。狭い国土に50基以上の原発・核燃料施設をならべ,代替手段ならなんぼでもあるのに,発電のために危険極まりない原子力=核分裂エネルギーをもてあそび,福島第1原発事故の事も忘れ,事故被害者は切捨て,いい加減な規制基準でさえも棚上げにしながら,これからやっていくのだという。その旗振りの親方=自民党と安倍晋三達こそが,(間一髪で最悪事態を免れた)福島第1原発事故を引き起こした張本人達ではなかったのか。日本の原発は「世界一規制の厳しい安全な原発」という「虚偽表示」された「世界一危険な原発」に生まれ変わろうとしている。
原子力ムラとの「最終戦争」は「生き残り勢力」が劣勢のまま,いよいよ滅亡へ向けてのカウントダウンに入った。原子力ムラとの妥協などありえず,また,自分だけが原発・核燃料施設と無関係であることもできない。もしもの事故の際に逃げる場所も存在しないし,逃げたところで,その後,放射能汚染列島で生活し続けることも出来なくなるだろう。まさに,彼らに放射能まみれにされて殺されてしまうのか,彼らを社会的に葬り去るのかの,2つに1つの「最終戦争」が激戦となってきた。我々一人一人の命の行方を決めるのは,まさに我々一人一人なのである。
原子力ムラを撲滅・一掃せよ。それ以外に,我々が生き残る方法はない。
<録画>
(1)2013070008 UPLAN 原発の再稼働を許さない・記者会見&全国集会
http://www.youtube.com/watch?v=14EDdm_un78
(2)20130708 UPLAN 原発の再稼働を許さない!規制庁交渉
http://www.youtube.com/watch?v=8qbF4caynF0
(1)原発の再稼働を許さない全国集会(2013年7月8日)
(2)原発の再稼働を許さない! 7・8声明(2013年7月8日)
(3)原子力規制を監視する市民の会ニュース「再稼働への申請」(2013.7.8)
(4)「国民の多数は原発再稼働を望んでいない」(阻止ネット 2013.7.8)
(5)5原発10基再稼働申請(1)(東京新聞 2013.7.8夕刊)
(6)5原発10基再稼働申請(2)(東京新聞 2013.7.9)
(7)5原発10基再稼働申請(3)(毎日新聞 2013.7.8夕刊)
(8)5原発10基再稼働申請(4)(朝日新聞 2013.7.9)
*例えば2013年7月9日付東京新聞朝刊1面には次のように書かれている
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013070990071328.html
(1)地震・津波の想定について
a.北海道電力は泊原発の想定津波の高さを従来より2.5m低くした
b.関西電力大飯原発3,4号機では,①周辺の3つの活断層の連動を考慮するよう原
子力「寄生」委員会より指示されていたが,今回申請時は従わず2連動で計算(9月
までの運転継続時は3連動で計算),②津波の高さは,海底地滑りによる従来より高
い値を想定せよと原子力「寄生」委員会に指示されたが,今回申請時はそれを無視し
て従来のままとした。
c.残りの今回申請原発も,地震・津波の想定は新基準前とほぼ同じ水準
(2)今回の4電力・5原発・10基以外に,早期申請が明らかな2原発(玄海・柏
崎刈羽)を加えた7原発の周辺62市町村の原発事故への備えについてヒヤリング他
a.原発の新規制基準は,地域の防災体制が整っているかどうかを審査する仕組みに
なっていない(原子力「寄生」委員会が逃げている)。
b.避難計画は,63%の39市町村がまだ策定していない。
c.住民がどこのどの施設に避難するかは,65%の40市町村が詰め切れず
d.福井県や鹿児島県は,住民避難先を県内に限定するというおかしなことをやって
いる。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1365:130710〕
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