TPPからの脱退も辞さずを公約を掲げて当選した国会議員は政府に情報公開を求める責務がある~例外扱いがどうなっているかを監視するために~
- 2013年 7月 24日
- 評論・紹介・意見
- TPP醍醐聡
2013年7月24日
TPP交渉への日本の正式参加の日に合わせた抗議のリレートーク
昨日7月23日、日本はマレーシアで開催されているTPP交渉に正式に参加した。これに対し、抗議の意思を示そうと、「国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)」と「STP TPP!!官邸アクション実行委員会」の共同主催で、昨日夕方、新宿西口駅前で「TPP交渉参加大抗議 宣伝とリレートーク」が開かれた。リレートークには全国保険医団体連合会の住江憲勇会長、主婦連の山根香織会長、国公労連の宮垣忠委員長、農民運動全国連絡会の笹渡義夫事務局長、TPPに反対する弁護士ネットワークの宇都宮健児氏、福島県南相馬市で農業を営む亀田俊英さんらが参加された。私も「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の呼びかけ人としてこのリレートークに参加した。
なお、リレートークの途中で、マレーシアの参加国交渉会議の取材に出かけているアジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さんの現地レポートも流された。
時間が1人6分と限られていたので、前もって原稿を用意し、それを読み上げる形でスピーチをした。その読み上げ原稿をこのブログに掲載することにした。
なお、リレートークの模様は現場取材をしたIWJが次のとおり録画で配信している。生のスピーチをご覧いただけると臨場感があるのでぜひ、各スピーカーの肉声を聴いていただきたい。
Part1 主催者あいさつ / 全国保団連会長 住江さんのスピーチ
http://www.ustream.tv/channel/iwakamiyasumi4?utm_campaign=ustre-am&utm_source=6876846&utm_medium=social#/recorded/36240699
Part2 主婦連会長・山根さん/ 宇都宮弁護士 / 内田さんの現地レポート(回線不良)/ 醍醐 / 国公労連・宮垣忠さん
http://www.ustream.tv/recorded/36241053
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私のリレートーク スピーチ原稿
(下線部分は時間の関係でスピーチを割愛した箇所)
大学教員の会の呼びかけ人の醍醐聰です。
私たち大学教員の会は3月28日に17人の呼びかけ人で会を立ち上げ、4月9日には安倍首相宛てにTPP参加交渉からの即位脱退を求める要望書を提出しました。これには全国の様々な専攻分野にまたがる大学教員870名の賛同署名を添えました。現在賛同者は約900名となっています。
TPP推進を公約に掲げて当選したのは121人中わずか16人
皆さん、21日投票の参議院選挙で121人が当選しましたが、その中でTPP交渉推進を公約に掲げたのは2つの政党に属する16人だけです。大勝した自民党も重要品目を関税撤廃の例外とすることができなければ、交渉からの撤退も辞さずという公約を掲げて当選したのです。民主党の海江田代表も選挙戦の中で同様の主張を繰り返しました。
しかし、フロマン米国通商代表部代表は、7月18日に下院歳入委員会が開催した公聴会で、「日本は5品目を交渉の対象外にするよう求めているがどうなのか」という質問に対して、「日本の農業に関し、〔特定の品目について〕前もって除外することに同意したことはない」と発言しています。また、今朝のNHKニュースでも、アメリカは日本の参加により交渉全体に遅れが生じないよう、関税撤廃などで日本に強く妥協を迫る意向と伝えています。
であれば、聖域が守られなければ脱退も辞さずという決議をした衆参農林水産委員会の委員はもとより、例外扱いができないなら脱退も辞さずを公約を掲げて当選した自民党議員は、例外扱いがどうなっているのかをチェックできるよう、交渉の途上での情報公開を政府に求める責務があると考えるのが当然です。
かりにも、参加国間の協定により交渉途中での情報公開はできないと言われたと称してすごすごと、引き下がるのであれば、脱退も辞さずという公約は実行できるあてもない空約束だったということになります。
そもそも、1国の主権を揺るがすような国際協定の交渉過程に国会議員さえ関与できないというなら、そうしたTPPはわが国の立憲民主主義、議会制民主主義と全く相容れない異常な協定交渉というほかなく、この一事を以てしても交渉から即時脱退すべき十分な理由になると私は考えます。
さまざまな交渉テーマを天秤にかけるバーター取引は売国の言い訳作りに過ぎない
皆さん、日本政府はTPP交渉に臨むにあたり、農業分野での関税撤廃交渉と非関税分野でのルール撤廃交渉にブリッジをかけ、ある分野で譲歩するのと引き換えに別の分野で日本の要求を認めさせるバーター交渉をもくろんでいるとも伝えられています。
しかし、長年にわたって日本国民が培い、定着してきたさまざまなルールや慣習を切り刻き、天秤にかけて取引の材料にすることなど「交渉力」でも何でもありません。それは肝心の分野でアメリカの強硬な要求に屈服するのと引き換えに、ごく限られた分野でおこぼれ的に日本の要求を認めてもらおうとする屈辱交渉以外の何物でもありません。そんなおこぼれを材料に国益を守ったなどというのは詭弁であり、日本の国民益を冒涜するものです。
そもそも、日本の法律や規則を決めるのに、どうしてアメリカや外国企業の指図を受けなければならないのでしょう? 日本の法律や規則は日本の主権者である私たちが決めるのではなかったですか。
数百万の国会請願署名を目標に掲げたTPP阻止の一大国民運動を
最後にTPP阻止に向けたこれからの運動について提案をさせていただきます。大学教員の会は日本がTPP交渉に参加した今でも交渉からの即時脱退を求める立場は変わりませんが、百歩譲って交渉が進行し、いよいよ国会での批准となった場合も視野に入れ、それに備えて、TPP阻止の国民運動を盛り上げるため、今日、ここにお集まりの各界の団体、個人の方々が中心となって、さらにその輪を広げたTPP阻止の国民運動ネットワークを結成して、数万人規模の大集会や、数百万人の賛同者を目標に掲げた国会請願署名を企画されるよう要望して私のスピーチを終わります。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net
〔opinion1379:130724〕
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