本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(47)
- 2013年 7月 31日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究財政金融
イタリア政府のデリバティブ
6月26日付の「英紙フィナンシャル・タイムズ」の報道によると、「イタリア政府が、1990年代後半に金融機関と結んだ国債取引などのデリバティブ(金融派生商品)契約に絡み、80億ユーロ(約1兆200億円)規模の損失が発生している恐れがある」とのことである。そして、この取引が発生した理由としては、「ユーロ加盟条件を満たすため、債務残高などを粉飾した可能性がある」とも報道されているのだが、このことは、今後、大きな波紋を広げる可能性があるようだ。
具体的には、「同紙が入手した資料によると、政府は外国金融機関との間で、想定元本ベースで317億ユーロ(約4兆260億円)のでリバティブ契約を締結した」とのことだが、このことが意味することは、「想定元本の約30%が毀損した可能性がある」ということだからである。そのために、現在、世界に存在する「約10京円のデリバティブ」についても、同様の状態になっている可能性が指摘され始めたのである。
つまり、「デリバティブ」については、「2009年」以降、ほとんど、実態が隠された状況となっており、実際には、「関係者でも、実情が分からない状況」とも言えるのである。そのために、「10京円の約3割が毀損している」という推測が正しいとすると、全体の損額は、「約3京円」という「天文学的な数字」となり、このことが、実際に表面化した時には、世界の「金融システム」や「通貨制度」は、大きな混乱状態に陥ることも予想されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「かりに、このような事実が発表された時に、世界の金融界で、どのような事が起きるのか?」を、正確に理解することだと考えている。つまり、「誰が、このデリバティブを保有し、その損失は、どのようにして埋められるのか?」ということだが、今までの推移から言えることは、実際には、「欧米のメガバンク」が、「全体の9割程度」を保有しており、また、「損失」が出た時には、「世界の中央銀行が助ける」という状況が想定されるようである。
つまり、日本で、すでに始まった可能性がある「マネタイゼーション(国債などの現金化)」が「一挙に、世界的に行われる」ということである。そして、この時には、「預金神話」に縛られた「日本人」も、さすがに、自分の資産である「銀行預金」や「一万円札」などに不安感や疑問を抱き始めるものと思われるが、現在では、すでに手遅れの状態となっており、大量の預金の受け皿が無くなりつつある状態とも言えるのである。----------------------------------------
金融の大地震
今年のキーワードは「サイバー空間から現実へ」だと考えており、この点に関する大事件が「8月から9月頃」に発生するものと予想しているが、現在では、その「予兆」となる事件が発生しつつあるようだ。具体的には、「イタリアのデリバティブ問題」であり、また、「日銀のバランスシート」などのことだが、これから想定される出来事は、世界中の人々が驚くほどの「金融の大地震」ではないかと考えている。
つまり、「英米の銀行が保有するデリバティブ」に関して、何らかの事件が発生する可能性のことだが、現在の状況としては、「イギリスが約3.4京円」、そして、「アメリカが約2.2京円」という驚くべき金額の「デリバティブ(金融派生商品)」を、依然として保有しているのである。そして、この点に関して、「イタリアと同様の損失が発生している」と仮定すると、それぞれ、「約1京円」や「約6600兆円」という、とんでもない金額の損失が計算できることになるのである。
また、今まで、「これほど大規模の金融商品が生み出され、かつ、その存在を隠すことができた」ということの原因としては、ひとえに、現在の通貨制度が「信用本位制」となっており、また、「主要な通貨」が「デジタルマネー」へ変化したという点が指摘できるようである。しかし、今後の注目点としては、「現代のお金」である「デジタルマネー」は、「サイバー空間の中でしか、力を発揮できない」ということであり、その結果として、この事実が、今後の混乱を引き起こす直接の原因になりうるのである。
このように、現在では、「デリバティブ」と「国債」という「目に見えない金融ツインタワー」がそびえ立っている状態でもあるのだが、この時に、「マネタイゼーション」という「紙幣の増刷」が始まると、「コンピューターネットワークの中は、紙幣は流れることができない」という厳然たる事実に突き当たらざるを得なくなるのである。そして、その時には、「金融ツインタワーの崩壊」という激震が起きることが予想され、その結果として、「インフレの大津波」が、世界中を襲う可能性があるものと考えている。
つまり、「3・11の大震災」のような状況が、間もなく、「世界の金融界を襲う」という可能性のことだが、基本的には、世界中の人々が、「お金さえあれば大丈夫だ」と錯覚したことに、「金融大混乱」の根本的な原因が存在するようだ。そして、その後に、「人々の覚醒」が起き「新たな時代」が始まるものと考えているが、これから想定される「金融の激震」も、ほとんどの人が気付かないうちに発生する可能性があるようだ。
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1386:130731〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。