再処理工場新規制基準のパブコメ用資料です
- 2013年 8月 1日
- 交流の広場
- 再処理工場新規制基準小倉かなへ
永田です。
核燃施設(再処理工場)新規制基準骨子案をひと通り見て、再処理工場での重大事故を防ぐため問題点をまとめてみました。時間がなく、不十分なものですが、パブコメ応募のご参考までお知らせします。
☆忙しい方は下記6項目だけでもご覧いただき、適宜パブコメにご意見をお願いできれば幸いです。
1)再処理工場の高レベル廃液の貯蔵限度をゼロに規制せよ
2)再処理工場は最も過酷な地震に耐えられるように設計せよ
3)再処理工場はミサイル攻撃に耐えられるのか
4)再処理工場ではクリプトン85,炭素14,トリチウムについては一切除去せず、全量垂れ流しをしているがこれでは環境汚染を前提にしているのではないか。トリチウムの海洋放出はせめて原発並の規制をすべき。世界一厳しい規制をするということだったのではないか。
5)再処理工場は最悪時でも放射能を閉じ込める深層防護手段を講じるべきではないか。福島原発事故で起こっていること(炉心溶融冷却汚染水の放出無策)を教訓にせよ。
6)重大事故の環境影響評価を実施し、汚染マップを公開するべきではないか。
パブコメは以下からできます。
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130724_1.html
☆以下、時間のゆとりのある方(上記URL資料を基に)
核燃施設等(再処理施設、核燃料加工施設、使用済み燃料貯蔵施設、廃棄物埋設施設等)に係る新規制基準の骨子案が公開され8月15日(水)までの短期間のパブコメ募集中です。(「工場」と呼ばず「施設」という言い方をしている)
パブコメの対象は原発事故を踏まえ次の2項目です
A)設置許可/事業許可(指定)基準の法令化(強化)
B)重大事故対策を新たに要求(再処理施設、核燃料加工施設)
上記について既に許可を得ている再処理工場ですが、バックフィット(新基準への適合の義務付け)制度を導入する。また事業者による安全性の総合的評価の実施、その結果等の国への届出及び公表の義務付けをする。
以下問題点を列記します。
A)設置許可/事業許可(指定)基準の法令化(強化)について
以下「使用済燃料再処理施設の新規制基準(設計基準)骨子案」を基に
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130724_1/01.pdf
1)【地震・津波】p8「適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられる設計」ではなく考えられる最も過酷な地震に十分耐えられる設計」にするべきではないか。東海村の再処理工場は海抜6mに位置しており、福島原発事故を引き起こした津波に襲われていたなら高レベル廃液の沸騰・爆発により首都圏は今頃どうなっていたかわからない。
2)【外部人為事象】p12「想定される偶発的な外部人為事象によって、再処理施設の安全性を損なうことがない設計」「第三者の不法な接近等に対し、これを防御するため、適切な措置を講じること」となっているが「想定されるあらゆる人為的事象も対象」にしなければいけないのではないか、ミサイル攻撃(戦争)を想定しても放射能の飛散を防げるものでなければいけないのではないか。
3)【閉じ込めの機能】p19、p46「一般公衆に対して著しい放射線被ばくリスクを与えないよう、十分な気体の閉じ込めの機能が確保されていなければならない」とあるが、「著しい放射線被ばく」とはどれほどか、これでは「著しくない」被ばくを公衆に与えることを前提にした設計思想ではないか。
4)【検査・修理等】p28「定期的試験等ができること。ただし、運転中の試験等によって再処理の運転に大きな影響を及ぼす場合はこの限りではない」このような例外規定は都合よく解釈されいい加減な対応になってしまう。正確かつ具体的な表現にするべきではないか。
5)【放射性廃棄物処理施設】p38「周辺環境に対して放出される放射性物質の濃度及び量を十分に低減できること」「これらの施設からの液体状の放射性物質の漏えい及び敷地外への管理 されない放出を防止できること」「合理的に達成できる限り低くする」となっているが具体的に再処理工場からはクリプトン85,炭素14,トリチウムについては一切除去せず、全量垂れ 流しが認められている。除去技術があるにかかわらず、このようなことが認められていることは改めるべきでないか。除去技術が未完ならばそのような施設は稼働を認めないようにするべきだ。トリチ ウムの海洋放出に関しては少なくとも原発並の規制基準を課すべきだ。
このことを「管理されない放出」「十分な拡散効果を有する放出口」といった言葉でごまかすべきでない。
ここは何としても厳重に行わなければ国民の理解が得られない。六ケ所村再処理工場が本格稼働されると1日おきに原発規制基準の 約2700倍のトリチウム廃液が海洋へ放出される、福島原発汚染水に 加え、このような海洋環境の破壊につながる規制は認められない。 世界一厳しい基準にするはずだったはずだ。
6)【深層防護】「深層防護の考え方とは、異常の発生が防止されること、・・、さらに異常が拡大すると仮定してもその影響が緩和されることをいう」とあるが、設計基準事故を超える事故、想定を超える事故が大事故に発展する。高放射線下放射能放出管理ができなくなった
場合の最終手段を求めるべきではないか。現に福島原発事故では高濃度汚染水の放出を防止できず海洋放出が続き、何ら有効な対応が出来ない状態になっている。最悪の場合高レベル廃液の沸騰や水素爆発を抑える深層防護としての最後の手段を設計基準として求めるべきではないか。
B) 重大事故対策を新たに要求(再処理施設、核燃料加工施設)について
以下「使用済燃料再処理施設の新規制基準(重大事故対策)骨子案」を基に
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130724_1/02.pdf
1)【重大事故】p2「セル内に設置された放射性物質を内蔵する・・事故対策として
1、冷却機能の喪失による蒸発乾固対策
2、放射線分解により発生する水素の爆発対策
3、溶媒等の火災・爆発対策
4、臨界事故対策
5、その他の事故対策(セル内)」が上げられているこのうち1、の表現は事の本質をゆがめるものである、高レベル廃液の「蒸発乾固の対策」ではなく、高レベル廃液の沸騰により、揮発しやすい放射性物質が環境へ放出されることが大問題である。ここは「沸騰防止対策」とすべき。蒸発乾固したものも、硝酸塩等が含まれており爆発性の物質であり問題だが・・。セル外設置の事故対策として「使用済み燃料貯蔵プールの燃料損傷対策」が上げられている。
2)【設計基準を超える外部事象】p29「大規模な自然災害、又は意図的な航空機衝突等のテロリズムにより、施設が大規模に損傷した状況に対処するため・・手順書を作成」とあるが、ミサイル攻撃(戦争)を想定しておくべきではないか。
3)【重大事故対策の有効性評価】p31~32「事業者は、重大事故の発生防止、拡大防止及び影響緩和を図るための適切な措置を講じなければならない」「適切な措置とは、それぞれの重大事故について、・・手段が有効に機能するか確認すること。確認にあたっては、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定して評価すること。」「放射性物質の放出量がセシウム137換算で100テラベクレルを十分下回るものであって、かつ実行可能な限り低いこと」とある。評価のためには国内原発事故評価で行われたがそれと同様に重大事故時の汚染マップが作成され公表されるべきではないか。そしてこの面からも再処理工場の存続について国民の判断を仰ぐべきではないか。 現にノルウェー政府は英国セラフィールド再処理工場の高レベル廃液について最悪時10%放出の影響評価マップを作成し公開している。
セシウム137が100テラベクレルとは六ヶ所村再処理の貯蔵高レベル廃液中セシウム137の量は520000テラベクレルであり、その約0.02%に相当する、また東海再処理工場の高レベル廃液中貯蔵セシウム137の量は1200000テラベクレルでありその約0.008%に相当する。ちなみに福島原発事故による大気放出セシウム137の量は15000テラベクレルであった。
4)高レベル廃液の沸騰(蒸発乾固)や水素爆発の対策を講じさせているが、その高レベル廃液をガラス固化し安定化させることについて触れられていない。高レベル廃液は発生の都度ガラス固化し少しでも安全な形にするべきである。貯蔵量をゼロにするならば沸騰、水素爆発の心配がなくなる。なぜ高レベル廃液の形状管理(固化する)の規制をしないのか、貯蔵ゼロ規制をするべき。
C) パブコメ実施について
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130724_1/gaiyou.pdf
1)7月25日~8月15日までの募集期間は短すぎる。パブコメの趣旨に反するのではないか。
2)六ケ所再処理工場の「アクティブ試験におけるガラス固化試験結果等に係わる報告書」が7月26日に提出されたが、このような重要な報告書を検討せずに基準案が出せるのか。
*ガラス固化がうまくいかずアクティブ試験において10回竣工が延期されてきた。
3)「改正された原子炉等規制法の規定により本年12月18日までに核燃料施設等に係わる新規制基準を策定する必要がある。」とあるが、スケジュール優先ではないのか。
4)国の審議委員(核燃料施設等の新規制基準に関する検討チーム)に市民側の代表する委員を複数選任すべき。
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/kaku_shinkisei/data/0001_meibo.pdf
(以上)
◎ パブコメに間に合わせるため、最も心配している再処理工場の高レベル 廃液の安全対策を中心に急いで作成してみたものです。
個人的見解であり、かなり抜け落ちているものがあると思われます。みなさんから追加補足をお願いします。
安全対策が複雑になればなるほど、事故になれば計測器の故障、今度は人間の誤判断、誤操作など出てきます。さらに再処理工場はプルトニウム製造化学工場であり放射性物質に加え危険物がパイプラインを流れており常に漏洩・火災・爆発などの危険が潜在しています。
大地震で同時多発的に火災や爆発がさまざまな場所で発生する可能性が否定できません。さらも高線量下での作業は遠隔操作であり、大事故のときには電源喪失などによりお手上げになるのではないかと予想しております。何としても事故を起こさせないように監視・要求していかなければなりません。そのためにもパブコメへ一言お願いします。
【参考】 東海再処理工場の高放射性廃液で最も早く沸騰が開始されるのはプルトニウム溶液貯槽で27時間後、水素爆発の下限濃度にまで達するのはプルトニウム溶液貯槽で9.3時間と報告されています。また六ヶ所再処理工場では高レベル廃液貯槽で24時間程度で沸騰が始まり、高レベル廃液混合貯槽で水素爆発下限になる時間が35時間程度と報告されています。
みなさんからの声で高レベル廃液の貯蔵をゼロ規制にさせましょう。(高レベル廃液貯蔵量は東海再処理工場394m3、六ケ所再処理工場202m3)
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