TPP交渉の秘密性に国民的反撃を
- 2013年 8月 3日
- 評論・紹介・意見
- TPP醍醐聡
甘利TPP担当大臣のフランクな解説
7月23日から日本が参加したTPP交渉の秘密性が大きな問題になっている。この件について、甘利明担当相が去る7月26日に放送されたフジテレビのプライムニュースに出演してフランクに実情を語っている。わが国の交渉担当のトップの発言を映像で記録したものとして有用と思えるので、以下、番組のアドレス、ならびに私が放送を聞きながら起こした原稿(抄録)を掲載することにした。
————————————————————————–
BSフジLive プライムニュース(2013年7月26日)での甘利大臣の発言
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html
(画面の番組一覧の中の「甘利経済再生相に問う。TPP初参加の手ごたえ」の前篇の3:55~8:40あたり)
次のサイトはこの部分をアップしたもの
http://twitpic.com/d4txkz
―――「TPP発効後4年間、交渉内容を公表してはならないと言われています
が、それはそうなんですか?」
甘利:「そうですし、交渉中は特に相手が何を言ったか、自分が何を言った
かも含めて外には出しませんという守秘義務の誓約書にサインして初
めて入会が認められるんです。」
「それを破ったら即退場という可能性もあるんです。」
「私も以前、経済産業大臣をやっている時にWTO交渉を徹夜でやりま
したけど、全く違ううなと。なんでこんなにうるさいの、というとこ
ろがありますよ。」
―――「なんでだと思われます?」
甘利:「情報がどんどん漏洩していくことによって、利害関係者が周りにい
ますから、反対だ、賛成だがあって動きがとれなくなるということで
しょうね。」
「政府の中で情報を共有する人間は具体的に決めています。守秘義務
をかけてですよ。・・・大臣、副大臣、政務官も情報にアクセスでき
る人間を制限しています。全員じゃないんです。極めて限定していま
す。
それから情報をお伝えする人も限定しています。しかも機微にわたる
情報は文書では渡さない。口頭で言うだけで、その人から外に出るこ
とはダメですよということで相当な縛りをかけています。」
―――「同じ政府の中でもあそこは利害関係者と思ったら情報は流さない、
そういうことで今回、臨まれているのですか?」
甘利:「このポストの人には7割まで。この人には2割まで、そうやって情報
管理をしています。」
衆参農林水産委員会の価値ある決議
しかし、本年4月18日に参議院農林水産委員会が、翌19日に衆議院農林水産委員会が採択した「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に関する」決議の第<項では、政府に対する次のような要望が決議されている。
十分な情報公開で国民的議論を
「七 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」
また、この決議は、農産品5品目の例外扱いを求めただけでなく、①残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品の表示義務等、遺伝子組み換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、に係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心に関する規制の維持及び食料の安定生産を損なわないこと、②木材自給率向上のために不可欠な措置(合板・製材の関税維持)に最大限の配慮を払うこと、③漁業場補助金等における国の政策決定権を維持すること、③条項に合意しないことなど、非関税分野の事項にも及ぶ広範な要望を含んだものとなっていることである。
段階的関税撤廃も認めない さらに決議は、農林水産分野の重要5品目を例外扱いとする要求が実現できないと判断した場合は交渉からの撤退も辞さないことを政府に求めるとともに、「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も認めない」と念を押している点に注目する必要がある。
とすれば、参両院の農林水産委員会は、政府がTPP交渉に参加するにあたって守秘義務を課す協定に署名したことを理由にして、TPP交渉の過程で日本が参加各国との間でどのような協議を交わしているのかを公開できないと返答したとしても、国権の最高機関の威信にかけて、自らが採択した決議を政府が遵守しているかどうかを究明する責任を免除されるわけではない。
この点で私たち国民は、TPP交渉の異常性を端的に表す交渉の秘密性を許さない2重の意味での政治監視―――一つには、政府に対し、TPP交渉の経過を国民に対して十分に開示し、TPP交渉に関する幅広い国民的議論を行うよう求めると同時に、衆参農林水産委員会に対し、各々の決議を厳格に履行するよう求める行動―――が急務である。
限られた利害関係者を集めた説明会を開いただけで情報公開をしたなどという政府の弁明に甘んじてはならないのである。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion1392:130803〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。