麻生副総理の「ナチスの戦術を手本に」発言の波紋
- 2013年 8月 5日
- 評論・紹介・意見
- ナチス合澤清麻生
当然のことながら、この麻生副総理のナチス発言はドイツでは大変な波紋を起こしている。すぐさま「DIE ZEIT」紙が連日にわたってこの記事を載せて批判、「Die Welt」紙も同じく直ちに批判を掲載、そのほか各紙が、この麻生発言を大きく報道している。もちろん、このような報道は、ドイツ国内だけにとどまらないだろう。ネットの世界でも、「Aso Nazis」と入れてみれば分かるように、文字通り「枚挙に遑がない」ほどの反響と批判が相次いでいることが分かる。
それにしても、このことを本人や自民党の幹部連中、あるいは日本のマスメディアはどう考えているのだろうか。これは単なる国際的な「恥」とか、「いつもの軽薄な発言」とか言って済ませられるものではないのではないだろうか。およそ、国際的な信用の失墜であり、麻生太郎本人にとどまらず、政府自民党も、あるいは日本国さえも国際的な立場を危うくしているのだということの認識をもっと強く持つべきなのではないだろうか。
おまけに、麻生のこれまた火に油を注ぐだけのように思える「言い訳」が、これまた世界の批判の的になっていること、全くこういう人物を副総理兼財務大臣に頂く国とはどんな国なのであろうか。こういう人が国際人として、日本の顔としてわれわれの代表としてまかり通っているのである。こんな人を、またこんな人から成る政党を、政権与党として選んだわれわれ国民の側も大いに反省すべきではないだろうか。日本のマスコミは、ただただ政権側にぺこぺこしているだけでなく、こういう事態に対して毅然たる態度をとるべきではないだろうか。
以下、ドイツの代表的な報道機関(新聞)の「DIE ZEIT」に掲載された文章の大意を簡単にご紹介しておきたい。いつものように稚拙なドイツ語力であるため、おかしな言葉使いをしている点はお許し願いたいと思う。(原文は以下でお読みいただきたい。太字は論者がつけた)
„DIE ZEIT“ 2013.7.31
http://www.zeit.de/politik/ausland/2013-07/japan-aso-nazis-verfassung
タイトルはこうなっている。
Japans Finanzminister nimmt sich Nazi-Reformen zum Vorbild
日本の財務大臣、ナチの改革を手本とする
麻生太郎はナチドイツによるワイマール憲法の秘密裏な取り換えを日本にとっての現実的な手本(模範)であるとした。
日本の財務大臣麻生太郎は、ナチス時代への肯定的な発言(Aesserung)でもって、国際的な憤激を招来した。日本は大きなセンセーションを惹き起こすことなく憲法を変え得るよう、ナチ‐ドイツから学ぶことができうるのではないか。
首相代理(副総理)でもある麻生は、自国の平和憲法のことを考えていたのであろう。「ワイマール憲法は、それと気づかれることなしに、ドイツのナチ憲法にとって代わられた。なぜわれわれは彼らの戦術(die Taktik)を学ばないのか?」麻生はメディアによると、保守派のシンクタンクの前で週の初めに行われた講演会の際にこう言ったという。おまけに、彼はその憲法を当時の最も進歩的な憲法の一つと説明している。
彼の事務所は「ウォールストリートジャーナル」laut dem Wall Street Journalに発表された(laut)その発言を確認したようだ。もちろん、麻生がナチの方式(Umgang)を日本に適用したいなどということは公式に否定された。おまけに、関連する発言も破棄され、財務大臣はナチスを称揚しようとはしていなかったとなっているようだ。
麻生の発言は直ちに批判された。韓国外務省のスポークスマンは、この発言は「多くの人々を傷つける」ことになるだろうと語った。彼の国は、かつて日本の軍事帝国主義の下で特に苦しめられてきた。日本の政治家たちは、その言葉や行動に注意深くあらねばならない。
ロスアンゼルスのシモン・ヴィーゼンタル・センターは、直ちに麻生の釈明(Klarstellung)を求めた。「どんなテクニックをわれわれはナチスから学ばなければならないのか?どんなつもりで民主主義を、秘密裏に台無しにさせようとするのか?」、これはユダヤ人人権団体の意見にある。
Stellungnahme der jüdischen Menschenrechtsorganisation.
安倍晋三首相の政府自民党は、目下のところ憲法改定を検討している、第二次世界大戦以来、日本はアメリカの圧力で、平和的な外交政策を堅持している。だが、中国や韓国との間の現実の領土紛争を考慮すれば、日本の防衛力は現政権与党の意志によって通常軍事力を高められうるであろう。
このような報道を知ってか知らぬか、またもや、8月15日に自民党主要閣僚が、「靖国神社参拝」へと動き出している。中国や韓国など、第二次大戦中の日本軍により大きな被害をこうむらされてきた被害国の人々はこれをどう見ているのだろうか。私にはますます国際的な信用を落とす結果になるとしか思えないのだが。 2013.8.5記
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion1395:130805〕
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