BBCニュース:フクシマでの放射能汚染水漏出は途方もなく深刻な問題である
- 2013年 8月 26日
- 時代をみる
- グローガー理恵極めて深刻な放射能汚染水漏出福島の地下水汚染
過去、英国のBBCはフクシマ原発事故に関わるイシューについて、どちらかというとオブラトで包んだようなソフトな弱々しい報道をしてきた印象がありましたが、今回はいつもと違い、まず専門家たちの見解を基にしながら、フクシマ現場での危機的汚染水問題をハードに突き、クリティカルな報道をしています。それで記事を全訳したものをご紹介したかったのですが、コピーライトを考慮して抄訳にしてあります。
原文へのリンクです。:
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-23779561
フクシマでの放射能汚染水の漏出は「我々が信じ込まされていたよりも遥にずっと酷い」
BBC オンラインニュース (2013年8月21日)
筆者:BBCニュース環境担当記者-マット・ムックグラス(Matt McGrath)
(抄訳:グローガー理恵)
ある核専門家がBBCに、「フクシマにおける現在の汚染水漏出は、当局によって述べられている状況よりも遥に酷いものであると思う」と語った。Mycle Schneider氏は以前、フランス政府とドイツ政府に助言を与えたことのある独立したコンサルタントである。彼は、「汚染水はフクシマ現場のありとあらゆる場所から漏出していて、正確な放射線レベルの数値がない。」と述べる。
一方、日本の原子力規制委員会委員長は、今後も更に汚染水漏出があることを恐れていると語った。最近になって東京電力が、およそ300トンの汚染水が現場にある貯水タンク(複数 )から漏出したことを認めたことで、 フクシマ原発で進行中の問題(複数 )は増大した。
危機時
日本の原子力規制委員会は漏出事故を、原子力事故の過酷度を測る国際原子力事故評価尺度に基づき「レベル1」から「レベル3」に引き上げた。これは、フクシマ原発が2011年に起こった津波の後に原子炉メルトダウンして以来、最大の危機に瀕していることを認めたことになる。
しかし、何人かの核専門家たちは漏水問題が、東電および日本政府が自発的に認めているよりも、遥にずっと酷いものであると懸念している。彼らが懸念するのは、炉心を冷却するために使われる莫大な量の汚染水が、現在、現場に貯蔵されていることである。
汚染水を保っておくために約1,000基の貯水タンクがつくられた。しかし、タンクに貯蔵された汚染水量は、これらのタンクの総容積量の約85%に達しているものとみられ、その上に更に、毎日毎日400トンの汚染水が追加されていっている。
「フクシマ現場で対処しなければならない汚染水の量というのが、あまりにも膨大だ。」とMycle Schneider氏は言った。彼は、核問題に関して広く様々な機関や国々に専門的アドバイスを与えてきた。「更に悪いことには、汚染水の漏れが貯水タンクからだけでなく、フクシマ現場のいずこも同じ状態だということだ。地下室からは漏水し、ありとあらゆる場所の亀裂からも漏水している。この過酷度を測ることは誰にとっても不可能なことだ。」「汚染水漏出問題は、我々が信じ込まされてきたよりも遥にもっと酷い、もっと、もっと酷い。」と、世界原子力産業ステータス・リポートのリーダー作成者でもあるSchneider氏は述べる。
フクシマ周辺の海域を調査したのは、ウッズ・ホール海洋学研究所(Woods Hole Oceanographic Institution)の上席研究員であるKen Bruesseler博士である。:
「事故は全く終わっていない。チェルノブイリは、いろいろな面において一週間の火災-爆発事故であったし、フクシマのように海洋にまで放射能汚染をもたらすようなリスクは伴わなかった。」
「我々が2011年からずっと言ってきていることは、原子炉現場は未だに漏水している。それが、建屋からにしろ地下水もしくは新設の貯水タンクからにしろ、汚染水が放出されている。全ての放射性汚染水を実際に現場に封じ込め収容する方法なんてあり得ない。」
「汚染水が一度地下水に入り込んだら、川のように海に流れ込んでいき、地下水の流れを止めることなんて実際にできない。ポンプで水を汲み出すことはできるけど、いったい何基の貯水タンクを現場に増やし続けていくことができるというのだろうか?」
また、何人かの科学者たちは、現場に貯蔵された莫大な量の放射性汚染水が、新たに発生した地震に対して脆弱であることを憂慮している。
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新たな健康上の懸念
貯水問題は、周辺の丘陵から地下水が流れ落ち入来してくることによって悪化されている。入来した地下水は原子炉(複数 )の最下部から漏出している放射能汚染水と混合され、東電が流れをせき止めようと必死に試みているにもかかわらず、その混合水の一部は海の中へ浸出していっている。
水の中に含まれた、セシウムのような一部の放射性元素は土によってフィルターすることができる。他の放射性元素は通過果せてしまうので、事態を監視をしている専門家を懸念させている。
「現時点における我々の最大の憂慮は、ストロンチウム90のような特定のアイソトープはもっと可動的であり、地下水中のセディメントを通り抜ける傾向性がある。」とBruesseler博士は述べた。
「これらのアイソトープは、─海産物に蓄積していき、新たな健康上の懸念をもたらことになる─というほどの汚染濃度で海洋に流れ込んでいっている。」
更に、現場の核燃料プールに冷却され収容されている使用済み燃料棒についても不安がある。Mycle Schneider氏は、「これらの使用済み燃料棒には、チェルノブイリ爆発事故の間に放出された放射性セシウム量よりも、もっと多量の放射性セシウムが含まれている」と語る。
「使用済み燃料プールの壁にひび割れがひとつもないという絶対的な保証はない。塩水が核燃料プールに入れば鋼材が腐食されることになる。」
フクシマにおける「益々悪化している状況」は、元スイス駐在日本大使であった村田光平氏の東京のオリンピック招致の撤回要請を促すことになった。国連事務総長に宛てた手紙の中で村田光平氏は、東電によって発表された公式の放射線量の数値を信用することはできないと述べている。村田氏は、日本や海外における危機感の欠如を非常に憂慮していると語っている。
フクシマの国際対策チームを要求しているMycle Schneider氏の見解も同様である。「日本人は、援助を求めることを問題とする。それは大きな間違いだ。今こそ日本人は援助を絶対に必要としているのだから。」
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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