「平和の鐘、一振り」が約60カ所に 長崎原爆の惨禍を忘れまい
- 2013年 9月 6日
- 評論・紹介・意見
- 原爆岩垂 弘長崎
今夏も「長崎原爆の日」の8月9日、原爆が破裂した午前11時2分に全国各地の寺や神社、教会で、「長崎を最後の核兵器使用の地とし、これからは核のな い世界を築こう」との祈りを込めた鐘が鳴り渡った。長崎出身の作家、鶴文乃さん(茨城県つくば市)が提案した「平和の鐘、一振り運動」に寺や神社、教会側 が応えたものだ。
鶴さんは、長崎原爆で家族を失った。それだけに長崎原爆へのこだわりが強く、これまで専ら長崎原爆をテーマとした小説やノンフィクションを書いてきた。
執筆活動のかたわら、2006年に次のようなニュースレターを内外の友人・知人へ英文と和文で送った。
「うち鳴らそう、世界中の鐘を! それもたった一振りの鐘でいいから、毎年8月9日AM11:02(日本時間)に!
1945年8月9日11時2分にアメリカによって、長崎の浦上に投下されてから61年になりました。当時3、4発しかなかったとされる原爆(核兵器)は、今や3万発を超えていると言われます。幾度となく完全に地球を破壊するのに十分な数です。
数限りなく生命を育んでいる地球を、人間の勝手で破壊していいわけありません。そこで、最後の被爆地、長崎の悲劇を忘れず、これから核なき平和な地球を祈 願して、全世界の平和の鐘(教会、諸施設など)を、毎年8月9日11時2分(日本時間)に合わせて、一斉に鳴らせましょう! たった10秒間で約7万の犠 牲者を出した、その一瞬を実感するために、たった一振りの鐘で結構です。
犠牲者を多く出した浦上地区はカトリック信者の町でした。どうか全世界 の教会がリードして、この『平和の鐘、一振り運動』が広がりますように。このニュースレターを受け取ったあなた、あなたの町の教会やお寺に働きかけてくだ さい。世界では真夜中に鐘が鳴る地域も出てくるでしょう。うるさいと怒らず平和のために祈ってください。日本も戦争ができる国になろうとしています。平和 を願う人々が連帯することが、最後の希望になると信じます」
ニュースレターを出すまでには、鶴さんに二つの思いがあった。鶴さんには、 それまで海外で生活する機会があったが、そこで痛感したのは、アメリカの宣伝が行き渡っていて、原爆の使用により戦争の犠牲者が少なくてすみよかったと信 じている人が多かったことだった。「このままでは、核兵器を使用してもいいいうことになりかねない」と思った。
もう一つは、日本国内でも、年を経るにつれて、8月9日に長崎で何が起きたかを知らない人たちが増えてきたことだった。
どうすれば長崎で何が起きたかを知ってもらえるだろうか。どうすれば核兵器の怖さを知ってもらえるだろうか。そう悩んでいた時、たまたま目に止まったのが NHKテレビで放映された『原爆投下・10秒の衝撃』というドキュメンタリーだった。それは、炸裂した原爆が広島の街を壊滅させるのにわずか10秒しかか からなかった、と伝えていた。「そうだ。この10秒間の恐ろしさを世界の至るところで、体感することはできないものだろうか」。そこで思いついたのが「平 和の鐘、一振り運動」だった。
寺、神社、教会、公の施設などにお願いして、あの瞬間に、鐘や鈴、あるいはサイレンを鳴らしてもらうとい う運動だ。おそらく、これを耳にした人たちは、「いったい何だろうと」と思案するにちがいない。運動の趣旨を説明すれば、それが、核兵器がもつ非人道的な 残虐さを伝える警鐘であり、長崎原爆の犠牲者への鎮魂と「核なき社会」実現への祈りを込めた響きであることを理解してくれるのではないか、というのだ。
そうした運動を広げたい。が、一人では限界がある。そこで、運動の趣旨に賛成する人を増やし、その人たちが自ら近くの寺、神社、教会、公の施設などに足を 運んで「平和の鐘、一振り」を頼む、というやり方はどうだろうか、と考えた。そこには「こうすれば、ヒロシマ・ナガサキを被爆者のみの問題に終わらせず、 市民1人ひとりが自らの問題としてとらえることができるはず」「平和運動は特定の人たちに委ねるのでなく、日常生活の中で市民のだれもが無理せず関われる ものでなくてはならない」との鶴さんの思いが投影している。
鶴さんとしては、「平和の鐘、一振り」が何カ所で行われているか把握していないという。もともと、この運動を市民個人による行動と位置づけているので、報告の義務もない。だから、正確な数はつかめないという。
それでも、「一振り」に参加しているところは、日本では茨城、東京、静岡、長崎、宮崎などの都県で計60カ所ぐらいではないかと鶴さんは推計している。お 寺、天理教の教会、カトリックの教会、保育園、養老施設などだ。東京では、大塚の護国寺、浅草の長昌寺、調布市の深大寺、横浜の総持寺が鐘を鳴らしている という。
海外からもニュースレターに対する返信が届く。それによると、アメリカ、オーストラリア、フランスなどで教会、個人による「一振り」が行われているという。
「平和の鐘、一振り運動」の連絡先
BATTEN NETWORK(ばってんネットワーク)
E-Mail umezono-fumino@w6.dion.ne.jp
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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