本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(49)
- 2013年 9月 6日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究金金融
ナチスの金塊
日本では、麻生副総理の発言により「ナチス憲法」が話題になっているが、今回、驚かされたことは、「イギリス」においても「ナチスの金塊」が、大きな物議を醸しているということである。具体的には、今年の「7月1日」に「英国中央銀行総裁」に就任した「カーニー氏」が、「第二次世界大戦の前後に、ナチスが他国から金塊を略奪した事件において、英国中央銀行が手を貸した」という公文書を公表したのである。そして、この点について、「FT紙」が詳細なコメントを発表するとともに、「現在でも、同様の事態が、世界的に展開しているのではないか?」とも述べているのである。
つまり、「1923年のハイパーインフレ」と、その後の「1929年の大恐慌」により、経済的に壊滅状態となった「ドイツ」が、「その後、どのようにして国力を回復したのか?」ということだが、実際には、「武力により他国を侵攻し、力ずくで金塊を奪った」とも言われているのである。そして、「金塊を奪われた国々は、その後、ペーパーマネーに頼らざるを得なくなり、結果として、ハイパーインフレなどの経済的な混乱に見舞われた」という状況でもあったようだが、この点が、現在の金融情勢と、似たような展開になっているのである。
具体的には、「現在、中国が、なぜ、合法的に金を大量に集めているのか?」という点において、「ナチスの金塊略奪事件」が「過去の事例」として挙げられ始めており、結論としては、「金(ゴールド)が、富の源泉である」という「歴史的な事実」が、改めて、認識され始めているのである。別の言葉では、現在の「金融商品」に対して、いろいろな問題点が出始めるとともに、今後、「金利の上昇」が世界的に起きた時に、「どのような事態が訪れるのか?」が、真剣に考えられ始めたようにも思われるのである。
このように、「2007年」から始まった「世界的な金融混乱」については、現在、ようやく、その「本性」を表し始めるとともに、いよいよ、本格的な混乱期に突入することが考えられるようである。つまり、今までは、「目に見えない金融戦争」が起きていたために、ほとんどの人は、その存在に気付くことがなかったようだが、今後、「金融のメルトダウン」や「金利の急騰」が本格化すると、世界中の人々が、大きな影響を受けることが想定されるのである。そして、このことは、「明治維新」や「第二次世界大戦」の時に、「戦時中の興奮状態」を経験した後に、「敗戦」などにより「本当の苦難を味わった状態」とも言えるようだが、不思議な点は、「ほとんどの日本人が、国債価格の暴落に備えておらず、また、真剣に、この点を憂慮していない」ということである。(2013.8.6)
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耳順の歳
論語では、「六十歳が耳順の歳」と言われているが、私自身も、この年齢に近づき、ようやく、この意味が、少しだけ理解できたようにも感じている。特に、今回のように、「権力の暴走」が起き、「天地自然の理」が歪められたような相場を見たために、より一層、この思いが強くなっているのだが、基本的には、「世の中で起きること」や「自分自身に関する出来事」を、すべて受け入れることが、「耳順」が意味することだと考えている。
別の言葉では、「天は、その人に必要なものは、全て与えてくれる」ということであり、その時に、「人智」と「天意」の「違い」を理解することが、「耳順」のようにも思われるのである。つまり、「自分にとって都合の悪い出来事」が起きると、今までは、「なぜ、このような非合理な事が起きるのか?」と考えがちになっていたのだが、具体的には、「日米のゼロ金利政策」や、「LIBORの不正操作」などのことである。
しかし、現在では、「全てのことには意味がある」という考え方に変化し、今回の「権力の暴走」にも、大きな「天意」が存在したようにも感じられるのだが、具体的には、「世界中の人々に、大きな気付きを与えるためだったのではないか?」ということである。別の言葉では、「老子の第36章」にあるように、「最初に権力を与え、強くするものの、力がピークに達した時に、その力が失われる」という状況が起きているようにも思われるのである。
具体的には、「明治維新」の時の「官軍から賊軍へ」という変化のことであり、また、「第二次世界大戦」の後の「軍国主義から民主主義へ」という大転換のことだが、今回も、「お金の力」を極大化し「世界の金融がコントロールされた」という状況を見せた後に、「大きな転換」が起きる可能性が高まっているようだ。つまり、「世界中の人々が、単なる数字を、最も大切なものである」と考えている状況から、一挙に、「現代の通貨や金融商品は、絵に描いた餅にすぎない」ということが理解できるような「大事件」が起きる可能性のことであり、そのために、今まで、「人智では考えられないほどの、きわめて異常な相場」が発生した可能性があるものと考えている。
特に、現在の日本人にとっては、「世界の金融商品が、一握りのメガバンクによって、コントロールされている」ということなどは、まったく想定外のことでもあるようだが、これから「大きなショック」を受けることにより、「気付き」が「築き」へと変化し、「新たな時代が」始まることが考えられるようようである。(2013.8.6)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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〔opinion1443:130906〕
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