安倍首相の独断と偏見を危惧
- 2013年 9月 23日
- 時代をみる
- 池田龍夫
安倍晋三首相は9月19日、福島第1原発を訪れ、汚染水漏れの現場を視察した。汚染水が漏れた貯蔵タンクなどを視察後、記者会見に臨んだ。朝日新聞20日付朝刊がもっとも的確に扱っていたと思うので、同紙の記述を紹介し、問題点を探っていきたい。
「汚染水は完全にブロックされている」繰り返す
安倍首相は記者団に対し「7日の会総会での東京五輪招致演説と同じ表現で、汚染水の影響は(港)構内の0・3平方㌔㍍以内の範囲で完全にブロックされていると強調、福島への風評被害を払拭していきたい。汚染水処理については国が前面に出て、私が責任者として対応したい」と語った。13日の東電フェロー(技術者)が「今の状態はコントロールできていない」との発言に照らしてみても、汚染水の制御は難題だ。
防護服を着て現場を見た首相はどうして自説にこだわるのだろうか。ますます拡大する汚染水の流失が収束してない実態を見たのだから、五輪での発言を潔く修正すべきだったと思う。集団自衛権の容認発言にしても、首相には自説を押し通す癖があって、他の助言に聞く耳を持たない性格のようだ。これでは困る。もっとオープンに重要課題を熟議しないと、暴走の危険性を払拭できない。
汚染水対策こそ喫緊の課題だ
ここで、在京6紙の20日付朝刊を点検してみよう。朝日は1面トップに「首相、再び『汚染水ブロック』」との大見出しで報じた。そして前文あとに「5、6号機、廃炉へ」との3段見出しを掲げている。他の5紙はすべて「首相5,6号機の廃炉を要請」との主見出し。視察後の記者会見は本文に書き込んでいたものの、見出しを立てていない。価値判断は新聞づくりの要諦だが、この日の紙面をどう評価するか。福島の県民感情からみても、5、6号機も廃炉せねばならないと観測されていた。首相の廃炉要請は遅きに失したとみるのが当然だ。従って、朝日の紙面が光ったと思える。
汚染水問題に関しては毎日新聞9月4日付社説は「陸側から建屋に流れ込む地下水を遮る凍土遮水癖壁(地下ダム)と、汚染水から放射性核種を取り除く『多核種除去装置』の2つ。今、政府が最も力を入れるべきことの一つは、汚染水の源である地下水建屋に流入する前に汲みあげて海に流す『地下水バイパス』の可能性を追求することだろう。…海外の関心も非常に高い。国のトップである首相自らが国内外に向けて現状と対策を説明すべき局面だったはずだ」と、厳しく指摘していた。
原発輸出のトップセールスとは…
朝日新聞3日付社説は「安倍首相は、就任直後から原発再稼働を掲げ、成長戦略の一環として原発輸出の『トップセールス』に邁進してきた。だが、最優先すべき課題は第1原発の事故処理であり、汚染水対策であるはずだ。汚染水問題が解決できなければ、日本の原発技術の安全性をいくら強調しても絵に描いた餅になる。対策の陣頭に立つことこそ首相の役割だ」と、首相の危機管理の無さに警告を発した。
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