本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(50)
- 2013年 9月 29日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究財政金融
商品市場のデフォールト
現在、海外では、「商品市場における債務不履行(デフォールト)」が、大きな注目点になっている。具体的には、「シカゴ」や「ロンドン」などで、「現物の受け渡しができなくなる可能性」が指摘され始めているのだが、この理由としては、大量の「空売り」が存在することに根本的な原因があるようだ。つまり、今年の「4月」から「6月」にかけて起きた「金価格の暴落」に際して、「ペーパーゴールド」という「先物やデリバティブなどによる、数字上の取引」が、大きな「売り要因」になった可能性があるわけだが、この結果として、「貴金属」などの在庫が大幅に減少するとともに、「決済」に関して、「現物の受け渡し」ができなくなる可能性まで出てきたのである。
そして、「なぜ、このような事態に陥ったのか?」という点については、「国債」と「金」とを巡る「金融大戦争」の存在が指摘されているのだが、具体的には、「国債を守る陣営が、デフレを演出するために、無理矢理に、金価格を押し下げた可能性」のことである。別の言葉では、「中国」や「金」に対する「ネガティブ・キャンペーン」を実施することにより、「世界経済の悪化」や「金価格の値下がり」が、大々的に宣伝されてきたのだが、この結果として、現在では、多くの「鉱山会社」が、赤字操業に陥り始めているのである。
このように、現在では、「貴金属の価格が、不当な水準にまで売り叩かれた」という疑念が存在するとともに、「需給関係」に「大きな歪み」が発生した可能性があり、結果として、「現物が、市場から消え始める」という状況が発生しかかっているようである。つまり、「買い手」が、数多く存在し、一方で、「売り手」が激減するような状況が生み出されているわけだが、かりに、「債務不履行(デフォールト)」が、貴金属市場で発生した場合には、大きな混乱が引き起こされることになるようだ。
具体的には、「LIBORの不正操作」に続き、「金価格までもが不正に操作されていた可能性」が発覚した場合には、世界中の投資家が、「貴金属価格の異常な割安さ」に気付き始めるということである。そして、一方では、現在の「通貨」に対して、大きな疑念が出始めることにより、世界中の投資家が、一斉に、資金を「貴金属市場」に移動し始める可能性が存在するのである。
つまり、「無いものねだりの価格急騰」が、今後、「貴金属市場」で起き始める可能性が出てきたのだが、このことが、いわゆる「ボトルネック・インフレ」という「劇場で、突然に、火事が起きる状態」のことである。
2013/08/15
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夢の扉
8月11日に放映された「夢の扉」という番組で、ようやく、「光触媒による人工光合成」が紹介されたが、このことも、「iPS細胞」と同様に、「日本発の、世界に誇れる技術の一つ」だと考えている。具体的には、「光触媒」に「日光」などの光を当てることにより「二酸化炭素と水からメタンが発生する」というものだが、この技術が広く利用されるようになると、「エネルギー」や「環境」などの問題に対して、大きな解決策の一つになるものと考えている。また、この「光触媒」については、「壁などに塗装することにより、抗菌作用がある」という点は、広く知れ渡っているのだが、現在の株式市場では、ほとんど、注目されていないようである。
このように、現在では、数多くの「新しい技術」が開花し始めているようだが、このことが、「技術」の面において、著名な経済学者である「シュンペーター」が提唱する「企業家の行う不断のイノベーション(革新)が経済を変動させる」ということだと考えている。そして、このような「革新」については、技術だけにとどまらず、「新しい財貨や生産様式、そして、組織形態」なども含まれているようだが、「シュンペーター」は、基本的に、「創造的破壊」という言葉のとおりに、「官僚化し、活力を失った企業や組織は、いったん、崩壊する」とも考えていたようである。
つまり、現在の「金融大混乱」に表されているように、「マネーの大膨張」が限界点にまで達し、また、「世界の金融が、数行のメガバンクによってコントロールされている」と言われているような状況下では、「経済全体に逼塞感が充満する」ということである。別の言葉では、多くの人がサラリーマン化した結果として、実体経済の停滞が起きるということだが、その時に生み出されたのが、「経済の金融化」という「行き過ぎた金融資本主義」だったのである。そして、現在では、異常に大膨張した「金融システム」自体が、崩壊の時を迎えようとしているのである。
このように、今後は、「第二次世界大戦」の時と同様に、「戦争の後に、新たな技術が、本格的に開花し始める」という状況を想定しているのだが、このことは、「戦争」や「その後の統制経済」などにより、「個人の力が抑制されていた」という点にも、大きな原因が存在したようである。しかし、「戦争」が終了し「個人の自由」が取り戻されると、一転して、「活気ある社会」が生み出されたようだが、今回も、基本的には、60数年前と同様の状態を想定しているが、問題点は、「金融大戦争」の存在に気付いた時に「お金の価値が激減する」という危機の発生でもあるようだ。
2013/08/15
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「4000本」対「8000本」
8月22日に、「イチロー」が、日米通算で4000本安打を達成したが、この時のコメントには、たいへん感激するものがあった。具体的には、「4000本安打の裏側には、8000本以上もの失敗がある」というものであり、この時に感じたことは、「イチローにとって、本当に興味や関心があるのは、成功よりも失敗の方ではないか?」ということだった。つまり、イチローが追求し続けたことは、「なぜ、ヒットが打てなかったのか?」ということであり、「常に、失敗を反省し続け、また、常に、改良を続けた」という結果として、今回の「4000本安打」が存在するようにも思われるのである。
別の言葉では、「野球」だけに限らず、「投資」や「ビジネス」、あるいは、「人生」においても、「失敗は宝物」という言葉が、たいへん重要だと考えているのだが、このような態度を取り続ける限り、「成長の限界点」は存在せず、「常に、進歩を続けることができる」ようにも思われるのである。つまり、イチローが「引退」する時が訪れようとも、「後輩」や「後世の人々」に、「常に挑戦する態度」を教えることができたわけであり、世界中の人々が、このような態度を身に着けた場合には、「いろいろな分野で、新たな挑戦が継続される可能性」が存在するからである。
しかし、翻って、現代社会を見てみると、「人々のサラリーマン化」が、広く行き渡った結果として、「ほとんどの人が挑戦を忘れ、単に、表面上の成功だけを追い求める社会」になったようにも感じられるのである。つまり、「4000本安打」にだけ注目し、「8000本以上もの失敗」については考えようともしなかったということであり、また、「自分自身の生活」においても、「目先の成功」だけを追い求め、「臭いものには蓋をしながら、失敗の理由については、考えようともしない」という態度のことである。
そして、このような人々が、世の中に広く蔓延した結果として、「結果」や「成功」の象徴とも言える「お金」が、人々の「最大の関心事」になったのだが、現在では、「数百年に一度」の「大逆転現象」が起きようとしているのである。具体的には、「文明法則史学」が指摘する通りに、「西洋の時代から東洋の時代へと、大きく転換している」ということだが、この時に、触媒の役割を果たすのが、「マネーの大膨張」と「経済の金融化」だったのである。具体的には、「西暦400年前後のローマ帝国」や「西暦1200年前後の宋の時代」と同様に、「通貨制度の崩壊により、世の中が、大きく変化する」ということだが、基本的には、「先送りされた借金爆弾の破裂」が起きた時に、世界中の人々が、「なぜ、このような事態に陥ったのか?」を考えることになるようだ。
2013/08/25
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ピークゴールド
現在、海外では、盛んに「ピークゴールド」という言葉が使われ始めているが、このことは、「世界の金生産量が、すでに大天井を付け、今後は、急速に減少する」というものである。具体的には、「人類が、有史以来、掘り出した金が約17万トンであり、また、埋増量は、6万トンから8万トン程度にすぎないのではないか?」ということである。しかも、この時に、「鉱山の品位」が急速に低下しており、現在では、「世界の10大金鉱山」において、「中間品位が、トン当たり1.1グラムにまで低下した可能性」まで指摘され始めているのである。
つまり、「通貨の根本」とも言える「金(ゴールド)」や「銀(シルバー)」において、現在、「生産量」に関して重大な変化が起きるとともに、「世界的な奪い合い」が発生しているのだが、現在の日本人は、ほとんど、この点に無関心であり、また、「自分には関係のないこと」だと考えているようである。別の言葉では、「通貨の歴史」が忘れ去られた結果として、「一万円札」や「預金の数字」だけに関心が集中しているようにも思われるのだが、お隣の「中国」を始めとして、「インド」や「ロシア」などの国々は、現在、「今まで以上に、金(ゴールド)を集めている」ということが見て取れるのである。
そして、この理由としては、現在、世界の「金融システム」や「通貨制度」が、「きわめて危機的な状況に陥っている」という点が指摘できるのだが、残念ながら、現在の日本では、この点が、ほとんど無視されているようである。つまり、「消費税率を上げれば、国家の財政問題は片付くのではないか?」というような意見や、あるいは、「経済を成長させれば、国家債務は減少するのではないか?」というような意見が主流となっており、「世界的な金融混乱」については、ほとんど理解されていないようにも思われるのである。
別の言葉では、今回は、「自然災害」ではなく、「人災」である「金融の大地震」と「インフレの大津波」が訪れるものと考えているのだが、実際には、「ほとんどの日本人が、聞く耳を持たない状況」とも言えるようである。つまり、「3・11の大震災」の前に、「原発は安全である」という意見や「津波が来ても、原発が壊れることはない」という考えに染まっている人が多く、結果として、甚大な被害に繋がったという状況が、現在に重なって見えるのである。そのために、今回の「金融大混乱」については、同じ失敗を繰り返さず、できるだけ多くの人が、「備えあれば憂いなし」という状態になることを望んでいるのだが、現時点での感想としては、「実際に被害に遭わないと、実情が理解できない」という状況でもあるようだ。
2013/08/26
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4622:130929〕
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