ゴータ化学攻撃:「人道的」軍事介入を正当化するためシリアの子どもたちを殺害、米国支援のニセ旗作戦か?
- 2013年 10月 6日
- 時代をみる
- シリア問題松元保昭
期せずして9月16日、シリア東ゴータの化学兵器攻撃にかんする二つの報告書が公 表された。ひとつはセルストローム団長率いる国連調査団の報告書であり、もうひとつが修道女アグネス・マリアムとISTEAMSの報告 (グローバル・リサーチ誌の公表は16日であるがオリジナルは9月11日)である。この両報告書の性格を 対比して論じたものが、ジュリー・レベック、ミシェル・チョスドフスキィ教授共著によるこの記事である。拙訳ですが、紹介させていただき ます。
全世界に一斉配信された8月21日のビデオを観たとき、私は直感的に「不気味な作為」を感じ、 そう書いた。予想された通り、それらが作為的に演出されたものであり、誘拐された子どもたちが利用されていたということが、アグネス・マ リアムとISTEAMSの報告によって白日の下にさらされた。アラウィ派の集住しているラタキア周辺の村々で8月5日に「400人以上」にのぼる大虐殺があり、さ らにその後「何百人」もの人々が誘拐されていた、というのである。今後、第三者機関によってこれらの関連が緊急に厳正に捜査されるべきだ と、チョスドフスキィ氏も述べている。
依然特徴的なことは、使用者特定は「国連の任務ではない」としていながら、国連報告書が公表される前 から、西側主要メディアが「アサド政権の使用が裏付けられた」とリーク報道し、また公表後には米英仏の政府当局が、それぞれ「アサド政権 に責任がある」とした声明を一斉に発表してアサド「悪魔化」の世論作りを継続してきたことである。日本でも、この国連報告書で「事態は明 らかになった」と安堵しているむきもある。
典型的なのはワシントン・ポスト紙が、軍用品として入手・使用しうるのは誰か、弾道発射経路、備蓄能 力、砲弾のキリル文字、国連事務総長のコメント、の5点をあげて、「アサド政権の責任」 と決めつけていることである。しかし、カシオン山の方角には旅行者さえ出入りする広い地域があるとか、小型トラックで化学兵器ミサイルを 発射している反乱軍の映像があったり、5点ともアサドが「自殺行為」をする ほどの決定的な証拠にはならないことも明らかになっている。Tony Cartalucci:http://www.globalresearch.ca/five-lies-invented-to-spin-un-report-on-syrian-chemical-weapons-attack/5350111
ちなみに、ワシントン・ポスト紙のエルサレム特派員は、ユダヤ国家のために常時ロビー 活動をやっている大物シオニストの妻であるという。「世界の世論」はこういうところからつくられる。
米国、イスラエル、NATOの「ニセ旗作戦」とは、シリア、イラン、北朝鮮などを「悪 魔化」して、自らの「悪魔性」を「ニセの人道性」で覆い隠そうという戦略である。絶えず韓国・朝鮮・中国という隣国を敵がい視して、自ら の反人道性を覆い隠そうとしている日本は、このいびつな構図の上に成り立っている。
日本では、この米国戦略にのっとって、いまなおアサド制裁論が幅を利かしている。今 日、イスラエル、米国の「悪魔性」を余所にした、特定国の悪魔化言説には慎重な警戒を要する。(松元記)
※【訳者注】著者の本文を明朝体に、解説および引用文をゴチック体に字体を区別しています。
●出典:Url of this article:
http://www.globalresearch.ca/the-ghouta-chemical-attacks-us-backed-false-flag-killing-children-to-justify-a-humanitarian-military-intervention/5351363
The Ghouta Chemical Attacks: US-Backed False Flag? Killing Syrian Children to Justify a “Humanitarian” Military Intervention
ゴータ化学攻撃:「人道的」軍事介入を正当化するためシリアの子どもたちを殺害、米国支援のニセ 旗作戦か?
By Julie Lévesque and Prof Michel Chossudovsky
Global Research, September 25, 2013
ジュリー・レベック、ミシェル・チョスドフスキィ教授(松元保 昭訳)
2013年9月25日
グローバル・リサーチ
写 真:問題になっているISTEAMSリポートの著者、クルワー(la Croix)の修道女アグネス・マリアム(Mother Agnes Mariam)
2013年8月21日の東ゴータ(Ghouta)で起きた化学攻撃は、歴史上もっとも恐るべきニセ旗作戦の 可能性がある。
現在まで入手可能な証拠は、攻撃 をシリア政府の責任にする目的で、「反政府勢力」によって多数の子どもたちが殺害され、その死体に細工が施され撮影されていたことを 示している。こうして帝国アメリカが主導する新たな血みどろの戦争を引き起こすために、世界中の世論に衝撃を与え憤激を起こさせたの だった。
Alpha
民間人に対する化学兵器の使用を確認 する一方、国連の報告書は攻撃の張本人を確認しなかった:
非 政治的な調査および研究分析ではなく、シリア内部の神経ガス攻撃と疑われる出来事にかんする国連調査は、その研究および政治的・軍事的関 係の周辺が秘密のベールに覆われている謎の男エイク・セルストローム(Ake Sellstrom)教授に導かれていた…。
こ のうわべだけを取り繕うスウェーデンという国の中立性は、「湾岸症候群」の化学・生物学的な原因およびサダム・フセイン政権への米国化学 兵器の積み荷にかんする否認を含む、国連でのセルストロームの仕事のいたるところで嘘をつくことで、イスラエルおよびNATOによって巧 みに利用されてきた…。
セ ルストロームにかんして公的に知られていることは、スウェーデン北部のウメア(Umea)大学でスウェーデン国防省 (FOI)がスポンサーになっているヨーロッパCBRNEセンターの先頭に立っている生化学者である…。[CBRNE:化学、生物学、放 射線、核兵器、および爆発物質による特別重大事故での、社会的安全保障および弱点にかんする先進研究センター]CBRNE
ウ メア大学は、イスラエル国防軍(IDF)およびその諜報機関に最先端技術を提供しているハイファに拠点を置くテクニオン(Technion、イスラエル工科大学)との共同研究 に深く関与している。かなりの学科が、セルストロームのCBRNEセンターにおいて学際的研究に参加しイスラエルとの共同研究に関わって いる…。
ア メリカ国連大使サマンサ・パワー(Samantha Power)は、「シリアで使われた神経ガス は、イラクの神経ガスよりもさらに濃縮されていた」と、明らかに断言した。彼女の声明は言い換えられるべきだ:「サダムは、米国が供給し た神経ガスをシリアに移送したかもしれないのだが、それはシリア民間人に対して使用されたわれわれが調査した神経ガスではなかった」と。
(善 意のクリントン時代の期間に)イスラエル、エジプト、リビヤ、イラク、およびかなりの可能性でシリアを含め、貯蔵システム、技術提供、調 合、神経ガスの前駆物質の中東への主要な供給元であるワシントンを窮地から脱け出させること、それがセルストローム報告書の重要な点であ る:
シ リアの化学兵器にかんする国連報告書は、政治的、財政的にあらゆるレベルで折衷したその主任調査官エイク・セルストロームの二枚舌の資料 のために基本的な信頼性を欠いている。(島 津洋一「セルストローム報告書」:国連のシリア調査官はNATOとイスラエルのサクラ)(Yoichi Shimatsu, The Sellstrom Report: The United Nations’ Syria Inspector Shills for NATO and Israel)
国連使節団報告書の発表の一日前、ク ロワ(la Croix)の修道女アグネス・マリアム(Mother Agnes Mariam)と「シリアの和解のための国際サポート・チーム(ISTEAMS)」とによって別の入念に検証された報告書が、ごく狭い範囲の報 道で公開された。(To read the full report in pdf click here large pdf slow download)
その検証結果は明白である:米国とそ の同盟国によってシリア政府を非難するための証拠として使われたビデオは、演出されたものであった。
その詳細な検証は語っている:
誘 拐された子どもたちの何人かの家族が、東ゴータの化学攻撃の犠牲者としてビデオに登場する人々の中に自分たちの子どもたちがいるのを確認 したと、私たちに知らせようと連絡してきたその瞬間から、私たちは徹底的にそれらのビデオを調査することに決めました…。
私 たちの第一の関心ごとは、映像の中に見た子どもたちの運命でした。これらの天使たちは、武装したギャングの構成員と思える成人男性たちの 取り扱いの中でいつも独りぼっちです。子どもたちは、彼らの家族もなく罪を犯され埋葬の白装束で巻きつけられるまで終始身元不明のままで す。さらに私たちの検証は、映像上の外観のために芝居じみた配列でそれらの小さな体が巧みに操作され並べられていたことを、いかなる疑い もなく強調しています。
も し検証された映像が、東ゴータの化学攻撃を犯したとしてシリア国家を非難するために証拠の情報を誇示しようと編集され公表されたのであれ ば、私たちの発見は、身元不明の子どもたちを死に至らしめる工作によって捏造された諸事実の編集者と出演者に罪を負わせます。(ク ロワの修道女アグネス・マリアムと「シリアの和解のための国際サポート・チーム(ISTEAMS)」:東ゴータの化学攻撃はシリアの軍事介入を正当化するために 利用された)The Chemical Attacks in East Ghouta Used to Justify a Military Intervention in Syria)
報告書を調査したマハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ(Mahdi Darius Nazemroaya)が書いている:
独 立したISTEAMSの検証は、アメリカ合州国によって証 拠として出されたビデオ素材の単純な観察による…オバマ政権およびあらゆる米国情報コミュニティーの断定をきっぱりと否定している。
ISTEAMS報告は、化学兵器が使われたことや罪のないシリア人が殺害され たことを否定してはいない。検証結果は実証可能な証拠であり、その観察によって論理的に指摘していることは、米国情報コミュニティーが分 析し本物の場面と見なしたビデオ・サンプルは、効果的に演出されていたということである。東ゴータで起きたシリア政府による化学兵器攻撃 の証拠を、彼らが本物だというビデオが提供している、と証言した米国情報機関の代表者の断定を論破する以上、これは重大な影響をもつ発見 である。(マ ハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ「あなた自身の眼で確かめてください:シリアの化学攻撃のビデオは、不正に操作された場面を示してい る」)(Mahdi Darius Nazemroaya, Look With Your Own Eyes: The Videos of the Chemical Attacks in Syria Show Tampered Scenes)
米国政府に紹介された映像の中では、 多くのことがつじつまが合わない。
画像1[左右2つの異なる画像]キャプション:赤い服を着た同じ小さ な子どもが二つの違う場所にいる。
画像2[左右2つの異なる画像]キャプション:少なくとも9人の子どもたちが、違う場所で違う場面に登場している。
画像3[左右上下4つの画像]キャプション:二つの違ったシナリオで二つの違うビ デオに登場する小さな男の子。(画像の中のキャプション:両方のビデオに同じシャツを着た同じ子どもがいる。)
攻撃が1400人もの人々を殺害したと言われているにもかかわらず、一連の重 要な発見の中では、大部分の子どもたちがビデオに登場していることにISTEAMS報告は注目している。そして、かなり多くの死体が様々な場所で 撮影されたうえ違うビデオの中に現れている。
シリア政府が攻撃の背後にいたという 断定にこの報告が深刻な異議を唱えている一方で、依然証拠と確実性を欠いているワシントンの主張をおうむ返しにし帝国の方針に沿って歩ん でいる西側の主流メディアでは報道されなかった。
加えれば、サウジ情報筋に提供された 化学兵器を使った反乱軍が攻撃に責任があったという供述に関連して若干の議論が起きた。これらの供述を含む記事article containing these allegationsの共著者デール・ガヴラック(Dale Gavlak)は、現在、彼女自身記事との関係を断ちたいと望んでおり、脅 迫に直面している。彼女の経歴が危険に晒されている:
東 ゴータで反乱軍、家族メンバー、および住民へのインタビューを通して、反体制派の中の一団が8月21日のいわゆる化学兵器攻撃に責任を負 うべきだし、それらの化学軍需物資はサウジの情報局長バンダル・ビン・スルタン王子(Prince Bandar bin Sultan)によって供給されたとしたミントプレス(MintPress)の記事が8月29日に公開された…。
デー ルは、この記事を書いたため第三者によって増大する圧力の下にある。彼女は、8月30日と31日にemailと電話でミントプレスの編集者と私自 身に知らせてきた。第三者は、記事をめぐって膨大な回数の圧力で彼女を追い込んでおり、また彼女の経歴を終わらせると脅迫してきた。この 第三者は、化学兵器を反乱軍に供給したと記事で供述されているサウジ情報局の長バンダール王子の圧力の下に彼自身がいたと考えていると、 彼女は私たちに話し続けた。
彼 女の経歴と評判が危険に遭っていると言って、8月30日に、デールは署名欄から完全に彼女 の名前を削除するようミントプレスに頼んだ。これらの第三者は、その記事または彼女の経歴を終わらせるような関係者と彼女自身が断絶する ことを要求していると、彼女は話し続けた。8月31日に、私はemailでデールに次の説明を加えたいと知ら せた。彼女は記事を書く記者であり研究者であったし、さらにヤハヤ[アバブネ](Yahya [Ababneh])は現地のリポーターであった、これ はジャーナリズムの倫理に違反するので彼女の名前を削除することはしないと私はガヴラックに知らせたのだった。(フィ ル・グリーブズ「シリア:ミントプレスの化学兵器ゴータ・リポートをめぐる議論」)(Phil Greaves, Syria: Controversy surrounding MintPress Chemical Weapons Ghouta Report)
伝えられるところによる、サウジ情報 局がゴータ化学攻撃に責任があったという情報は、匿名を希望したひとりの国連当局者が言及していた:
シ リア問題に直接対応しているひとりの国連上級当局者が、シリア政府はいわゆるゴータ化学兵器攻撃になんら関与していなかった、とアル・ア クバル(Al-Akhbar)に話していた:「彼(バッシャー ル・アル・アサド大統領)が、自殺行為を犯すなどとは、もちろんありえない。」
ゴー タの化学軍需物資を使った責任は誰にあると考えるかと尋ねられたとき、身元の公表は許可しないというその国連当局者は、「サウジ情報局が攻撃を支援していたが、残念ながら誰も それを言う勇気がないでしょう。」と語った。当局者は、この情報はゴータの反乱軍によって提供されたと強調している…。
そ の国連当局者の告発は、国連の別の上級人物カルラ・デル・ポンテ(Carla del Ponte)によって今年前半に出された声明を 反映している。彼女は、ハン・アル・アサル(Khan al-Asal)、シェィク・マクスード( Sheik Maqsood )、およびサラケブ(Saraqeb)でのいわゆる化学兵器攻撃の直後の 時期、5月に、 反乱軍がその攻撃を実行して いたという「まだ議論の余地のない立証ではないが、強い具体的な疑いが」あったと、スイスTVに語っていた。デル・ポンテ女史もまた、国 連調査団はシリア軍が化学兵器を使用したという証拠は何もないことが分かっていたと述べて、さらなる調査が必要だったとつけ加えた。(シャ ルマイン・ナルワーニとラドゥアン・モルターダ「プラハ国連報告書の問題、東ゴータ化学兵器攻撃の背後に誰がいたか?」)(Sharmine Narwani and Radwan Mortada, Questions Plague UN Syria Report. Who was behind the East Ghouta Chemical Weapons Attack?)
上記のすべては、この攻撃が現代史で 犯されたもっとも恐るべき犯罪のひとつであったとわれわれに考えさせる。小さな子どもたちを殺害することで成り立つ残忍に計画された作 戦、偽造されたビデオ場面および死体の写真作戦、そのすべては、人道的権限よる軍事介入の口実を捏造することを目的としていた。
これらの犯罪をわかりにくくさせた主 流メディアは、責任の重荷を背負っている。ニューヨーク・タイムズは、修道女アグネスと彼女のチームが発見したことを中傷し、「政権を擁 護している」さらに「キリスト教徒という切り札をもて遊んでいる」と彼女を非難した。ニューヨーク・タイムズは、不用意にも、ビデオが でっちあげ(捏造)であるという証拠を捨て去っている。ISTEAMS報告を読んで自分自身で判断してほし い。
この悪魔のように演出された作戦を計 画し開始した戦争犯罪者を、正義に直面させるべきである。
シリア政府に向けられた国連安保理の 措置は、一時停止されるべきである。
私たちは、ISTEAMS報告と同じく以下のグローバル・リサーチの記事とビデオ作 品を調べるよう読者に勧めます。ISTEAMS報告とこれらの記事を共有してく ださい。
GR(グローバル・リサーチ)TV VIDEO: How the Syrian Chemical Weapons Videos Were Staged By James Corbett, Mother Agnes Mariam, and Prof Michel Chossudovsky, September 19, 2013
The Full ISTeam Report The Chemical Attacks in East Ghouta Used to Justify a Military Intervention in Syria, Mother Agnes Mariam and the International Support Team for Mussalaha in Syria (ISTEAMS), Geneva, 15 September 2013 [pdf slow download]
The Chemical Attacks in East Ghouta Used to Justify a Military Intervention in Syria By Mother Agnes Mariam, September 16, 2013
One Nun Puts the US Intel Community to Shame Over “Stage-Managed” Syria Footage By Mahdi Darius Nazemroaya, September 24, 2013
Syria: Fabricating Chemical Lies. Who is Behind the East Ghouta Attacks? By Prof Michel Chossudovsky, September 17, 2013
The Sellstrom Report: The United Nations’ Syria Inspector Shills for NATO and Israel By Yoichi Shimatsu, September 18, 2013
The Syria Chemical Weapons Attack: Human Rights Watch is Manipulating the Facts By Richard Lightbown, September 24, 2013
Saudi Arabia’s “Chemical Bandar” behind the Chemical Attacks in Syria? By Mahdi Darius Nazemroaya, September 06, 2013
Syria: Controversy surrounding MintPress Chemical Weapons Ghouta Report By Phil Greaves, September 22, 2013
(以上、翻訳終り)
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