IPPNWドイツ支部議長アンゲリカ・クラウセン女医の「フクシマ視察訪問」
- 2013年 11月 1日
- 時代をみる
- グローガー理恵
10月、UNSCEAR(原子放 射線の影響に関する国連科学委員会-United Nation Scientific Committee on the Effects on Atomic Radiation)が、年間報告書を国連総会に提出しました。その中でのフクシマ報告書に関して、社会的責任を果たすための医師団(PSR)-米国、核戦争防止医師団会議-IPPNWドイツ、戦争防止国際会議-スイス、-イタリア、人類の福祉のためのナイジェリア医師会-ナイジェリア、社会的責任を果たすための医師団-マレーシア、オランダ医学戦争学協会-オランダ、Independent WHO-原子力と健康への影響が、共同で作成した論評を発表しています。この論評の和訳文がIPPNWドイツ支部のサイトに掲載されています。彼等は、 UNSCEARの過小評価されたフクシマ健康被害報告に対して極めて厳しい批判をしています。
下が論評の和訳文へのリンクです。
また、この論評発表に関して、IPPNWドイツ支部議長であるアンゲリカ・クラウセン(Angelika Claußen)女医が、ご自身のフクシマ視察訪問の体験に基づいた興味深いコメントをIPPNWドイツ支部サイトに寄稿していますので、それを和訳したものをご紹介させて頂きます。下が原文へのリンクです。
http://www.ippnw.de/commonFiles/pdfs/Atomenergie/Fukushima/statement_claussen.pdf
日本政府は被爆犠牲者を見捨てている。
筆者:アンゲリカ・クラウセン(Angelika Claußen)女医-IPPNWドイツ支部議長
(和訳:グローガー理恵)
例えば、コンピュータートモグラフィー(CT)検査のような、マイクロシーベルトの値が一桁の数値内の範囲にある非常に低い放射線量を被爆することは、発癌または遺伝的変異を引き起こすリスクを高めることになる。
我々医師たちは、このことを最近の科学的研究調査から分かるようになった。このような認識は、フクシマ原発事故を通して日本市民が晒されているリスクに関して、どのようなことを意味するのであろうか?
日本政府や日本の放射線防護最高責任者(放射線健康リスク管理アドバイザー )である山下俊一教授が表明した告知とは反して、福島県から東京との境に接する多数の地区に住む市民たちが危険状況に置かされている。
既に今、放射能被爆地域からの子供たちが免疫機能低下の兆候を示している。既に今、18人の子供たちが甲状腺癌に罹患し、更に25人の子供たちに甲状腺癌の疑いが持たれている。
私が福島市、郡山市、いわき市、福島県にある被災地の市町村を訪れたこと、そして医師たちや避難者の方々、自助グループの人々と語り合ったことが、あることを私にはっきりと物語っていた。それは、如何に、非常にシステマティックに日本政府が、自分たちの国民を当然危惧すべき状況に置き去りにしたまま見捨ててしまっているのかということである。
学校の授業で、放射線をテーマにして批判的にじっくりと討議してほしいと願う、懸念を抱く親たちは、学校長から有無を言わさず撥ねつけられている。
血液像検査や超音波検査で、自分たちの患者(大人と子供 )を対象にした健康診断を丹念に行いたいと願う医師たちは、これらの検診を実行することを、福島県当局や健康保険によって度々、禁止されている。
民衆からの批判的な意思表示に対する当局からの抑圧は大きい。以前の政府のアドバイザーそして放射線防護最高責任者である山下教授は断固として、被曝量が100mSv以下ならば健康へのリスクは少しもないと主張していた。
急性放射線症や癌、白内障を対象にした医療保険制度が、専属企業医のプログラムにない。しかも医師達の報告によれば、彼等は自発的に無料で急性放射線症の疑いのある作業員を治療することを引き受けていたという。その理由は、社内健康保険制度が、これらの疾病は保証対象にはならないことを明らかにしたためである。どれだけの被曝量から、そして放射線によって誘発されるどのような疾病に対して賠償金を得られるのかといった情報が、伝えられるようなことは殆どない。
作業員達の労働条件はかなり酷く、彼等は短期間の間、東電の下請業者を通して雇われ、20%の賃金カットを受け入れなければならなかった。
私が話をした殆どの人達が異口同音で要求していたことは: もうとにかく、日本政府が、この国家大災害の責任を引き受けなければならないことである。
原子力災害をもたらせた東京電力自身が、原子力災害を解決できないでいる。そして、政府だけでは、もうこれ以上、災害処理対策を進めていくことができないのなら、緊急に、海外からの専門家の援助が必要である。
2013年10月10日から13日まで東京で開催された「懸念する市民科学者」の国際会議で、様々な動物集団、鳥類、蝶における遺伝子突然変異の発生が報告された。
今すでに、フクシマ原子力災害が環境にはっきりとした影響を及ぼしていることが明示されている。
フクシマ原子力災害後に、環境や人間に及ぼされた可視的な影響結果はないというUNSCEARの主張は、根拠が薄弱で筋道の立たないものである。
市民科学者国際会議の参加者達は、UNSCEARの言明を撥ねつけ、独立した科学者達による研究調査を要求した。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2433:1301101〕
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