IPPNWドイツ支部アレックス・ローゼン(Alex Rosen)博士への質問とその回答
- 2013年 11月 11日
- 時代をみる
- アレックス・ローゼン博士グローガー理恵
2013年11月6日、私は、鮫川村焼却炉問題や木質バイオマス発電所問題、その他の問題に触れ、3.26政府交渉ネットの杉山義信さんや、私と情報交換をし合って下さっている岡山県在住の上田三起さんからの内部被曝に関連した質問も含めて書き上げました英文の手紙をメールに添付してIPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン博士に送付しました。
そして、私が先生にこの手紙を送付してからたったの2時間後に、私は、こちらから提示された質問に対する回答がびっしりと書かれてあるローゼン先生からのメールを受けとりました。
小児科医として反核医師団「IPPNW」の役員として、極めてご多忙なスケジュールの中、先生が誠意をこめて私たちのためにと書いてくださったアドバイスでした。
この先生からのアドバイスを皆様が多くの仲間達と分かち合っていって下さることを望みます。:
アレックス・ローゼン博士からのメール 2013年11月6日
親愛なるグローガー理恵さん
メールを本当に有り難うございます。私は、自分の書いた物が日本語に訳され、それを多くの日本人が読んで下さっているということを聞く度に光栄だと感じています。貴女が、複雑な論文などを翻訳することに懸命に取り組まれて下さっていることに、私はとても感謝しています。
提示された質問には、でき得る限りベストを尽くしてお答えするように努めます。でも、もし、私が回答する上で何か見逃してしまったような点がありましたら、どうかもう一度、私に訊いて下さい。
提示した質問とローゼン博士からの回答:
1. (杉山義信氏の質問): IPPNWドイツ支部として内部被曝問題に関して更に研究調査に取り組んでいかれるような計画はありますか?
ローゼン博士: はい、もちろんです。 事実、私たちは現在、10人の科学者達による、低線量被曝がもたらす健康被害をテーマとした「専門家としての見解を示す簡潔論文」の作成に取り組んでいます。私たちは二週間前、ウルム(Ulm)でミーティングを持ちましたが、ミーティングの内容はレベルの非常に高い、実りの多いものとなりました。 この論文が出来上がり次第、あなたに送ります。
2.( 杉山義信氏の質問): 子供たちを内部被曝から守るため、私たちはこのような極めて困難な状況にどのように対処していくべきなのか、ローゼン先生が小児科医として、アドヴァイスを下さるのでしたら、大変ありがたく思います。
ローゼン博士:これは大変に難しいテーマです。なぜなら、先ず、私たちは、私たちが知りたいと願っている全てのことを知らないからです。それから、私が言う全てのことが、いとも簡単に全体のコンテクストから切り離され、前後関係を無視されて引用されてしまうことがあり、それで誤解されてしまうような可能性もあるからです。
そこで、理解し易いように、それをひとつひとつ分類して説明しますと;
ⓐ先ず最初に重要なことは、放射線というものは、いかなる量であっても健康に対して潜在的な危険性を持っていることを認識することです。被曝線量が高ければ高いほど、もしくは被曝する時間・期間が長ければ長いほど、健康被害を受けるリスクが高くなっていきます。
ⓑ特に子供たち、そして未だ生まれてきていない胎芽/胎児は特に、その生理機能のため敏感で、放射線に影響されやすいのです。
ⓒこのことは、特定のグループに属する人々の被曝線量を減らすことが、特に重要になってくることを意味しています。従って、若年世帯は、高レベルの放射線の環境に住むことで自分達の子供達の健康を相当なリスクに晒していることを認識すべきです。
ⓓ除染が期待されていたよりも、ぐずついていることや、フクシマ原発から放射性物質が放出され続けてていることにより、被災地域に住む人々が、これからも引き続き被曝していく可能性は非常に強いのです。
ⓔまた、更なる核災害が発生する危険性が未だなくなったわけではありません。
ⓕ放射能汚染された食品を消費しないように注意し、ホット・スポットとして知られる場所には近寄らないようにして、余分な被曝を避けるように努めることに、重大性を置くべきです。
ⓖもし何らかの理由で被曝線量を減らすことが不可能なのであれば、放射能汚染度がもっと低い地域に移住することが、一番賢明なことかもしれません。
ⓗこれが、もう長期疾病に罹患することを憂慮することのないようなある年齢に至った高齢者や、自分たちの生活様式において(健康に対する)有害要因を持つ人々( 例えば-職業上の危険的要因、喫煙、アルコール摂取、不健康な食事など)にとっては、重要ではないかもしれないことを心に留めておきましょう。
ⓘということは、私たちの選択が、それぞれ、個人的な自分自身の選択となってくることを意味します。-どのぐらいアルコールを飲もうか、タバコを吸い始めようか、どのぐらいのスピードで車を運転しようか、自転車にのるときはヘルメットを被ろうか……-といったような選択を自分自身がしていることと全く同じです。
ⓙ他の複数の健康被害リスクを抱えている人にとって、放射線によるリスクが加わることは大したことではないかもしれません。しかし、正しい飲食生活で、子供たちを危害から守り、健康な生活を営んでいる人にとっては、被災地における余剰放射線量は、彼らの健康のために、最もコントロールできる唯一のリスクとなります。
ⓚ人々は、賢明で個人的なインフォームド・チョイスをできる機会/可能性を与えられるべきです。被災地に居残るようにと、人々に圧力をかけることは正しくありません。人々を感化することは正しくありません。もし人々が放射能汚染度の低い地域に移ることを選択したのなら、彼らがそう出来るような手段(財政援助)を与えてあげないことは正しくありません。
ⓛ誰もが選択肢を持てるようにすべきです。: 自分の子供達が砂遊びをしたり、野原を駆け回ったり、池に落っこちたり、茂みからベリーを採って食べたりする度に、心配しなければいけないような汚染区域に自分は住みたいのか?
ⓜ最後に、健康診断を受けて癌のような病気の早期発見をすることも重要です。
当局が、甲状腺異常のある患者がセコンドオピニオンを求めるのを抑圧しようと試みるとき-検査の結果や画像が患者に手渡されないとき-検査時間がたったの数分に限られているとき-健康検査が甲状腺異常検査だけに限られているとき-これらは正しいことではありません。
3.(杉山義信氏の質問): これは私の意見ですが、日本に現在存在している清掃工場が、放射能汚染を広め、このことが内部被曝に繋がっていくことに寄与している主因のひとつになっていると考えています。この問題に関してIPPNWドイツ支部としては、いかなる見解をお持ちなのでしょうか?
ローゼン博士:私は、IPPWドイツ支部が、このことについて多くの情報を持っていず、これに関しての実質的な研究調査を行ったことがないということを認めざるを得ません。しかし、もしあなたが、このことに関する何かよいソース・情報源を持っているのでしたら、それを厳密に観てみたいと思います。
4.(上田三起さんが福島県から避難している方を代表して質問):粒子線や陽子線などの癌治療は、被曝した人に有害な影響を及ぼしますか?
ローゼン博士:どんな余剰の放射線量も、健康に累積的影響を及ぼします。- それが、屋内のラドン放射線の上昇でも、大西洋横断飛行して受ける宇宙放射線であっても、不必要な医療用放射線からであっても(-これは本当に実質的な要因です!特に日本では)、放射性降下物からであっても、です。医学治療上必要性があるとされる放射線は、有害な影響よりも、有益性の方があるかもしれませんが、これは両為行為であり、私たち医師が常に、自問していかなければならないことです。:これだけの被曝線量は本当に必要なのか?そして、これを防止することは出来ないのだろうか?と。
日本の社会自体も「フクシマのフォールアウト」について同じ事を自問していくべきです。
以上、貴女が提示なさった質問に十分に回答できたことを望んでいます。貴女に告げましたように、もし私が何か答え忘れているような点があったら知らせて下さい。
ベルリンからごきげんよう!
アレックス・ローゼン
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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