特定秘密保護法案は廃案とせよ
- 2013年 11月 26日
- 時代をみる
- 「リベラル21」編集委員会特定秘密保護法
2013年11月26日
「リベラル21」編集委員会
私たちは、今国会で審議中の「特定秘密保護法案」をただちに廃案とするよう政府、国会議員に求めます。
廃案を求める理由は、まず、この法案が日本国憲法の理念と規定に反するからです。
日本国憲法の前文には「ここに主権が国民に存することを宣言し」とあり、さらに第一条で「主権の存する日本国民」とうたわれています。
国家の主人公が国民であるならば、その政治も国民の意思に基づくものでなくてはなりません。政治形態が代議制であるならば、国会、政府によって行われる政治は、国民の意思が十二分に反映されたものでなくてはならないはずです。
国民が自らの意思を政治に反映させるためには、あらゆる情報が国民に公開されていることが、なんとしても必要です。つまり、あらゆる情報が公開されていてこそ、国民は自分たちの政治のありようについて正しい判断をくだすことができるのです。
良く知られているように、日本国民は「知る権利」をもっています。この権利は、日本国憲法第一三条で保障されています。そこには「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあります。もっとも、安全保障に関する面では一般に漏れては困るという情報はあり得るでしょう。ただし、それは最小限の範囲に留められるべきです。
今回の「特定秘密保護法案」では、国民に対し非公開となる情報の範囲があまりにも広く、非公開の期間も長すぎます。特定秘密の指定が恣意的に行われる可能性も指摘されています。これでは、国民の「知る権利」は著しく制限されるおそれがあります。そんなことは、断じて容認できません。
戦前の日本では、さまざまな法律によって、国民は自由な情報交換の機会を奪われ、その結果、日本が戦争に突入してゆくことを阻めませんでした。そのことを改めて想起したい。
廃案を求める理由の第二。それは、私たちとしては、この法案が憲法改定への一里塚となるのではと懸念するからです。
この法案の国会提出にあたっては、米国政府から強い要請があったと言われています。日本との軍事同盟をさらに強化したい米国政府としては、安全保障に関する情報が日本側から漏れることを強く警戒し、軍事機密が漏れないための措置を日本側に求めているわけです。安倍政権がこの法案の成立を急ぐのもこうした米国側の要請に応えたいからでしょう。
そればかりではありません。安倍政権側にもこの法案をなんとしても成立させたいという動機があります。安倍政権の最終的な目標は日本国憲法の改定(とりわけ第九条の改定)にあります。それも、米国との軍事同盟を一層強化する方向での9条改定という路線を推進しています。安倍政権は、そのための前段階として、集団的自衛権行使容認に向けた作業を進めるなど、条件整備を急いでいます。特定秘密保護法案はそうした条件整備の一つであり、さらに安倍政権がやはり今国会で成立を目指す「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」もその一環とみていいでしょう。こうした一連の流れを見ると、私たちは、特定秘密保護法案に強く反対せざるを得ません。
廃案を求める理由の第三。それは、今回の特定秘密保護法案が国際的な批判を浴びているからです。
例えば、日本外国人特派員協会は「『特定秘密保護法案』は報道の自由および民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告する」との会長名の声明を発表。世界各地の作家らでつくる国際ペンは、日本ペンクラブと共同で「市民の表現の自由を弱体化させる」との法案反対声明を出しました。国際ペンが日本の国内法案に反対声明を出すのは異例です。さらに、ジュネーブにある国連人権理事会のフランク・ラ・ルー特別報告者は「(法案が)内部告発者や秘密を報じる報道関係者にとって深刻な脅威を含んでいる」との声明を発表しました。
日本国民としては、こうした批判に真摯に耳を傾けたい。これらの声を無視すれば、日本国民が「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占め」(日本国憲法前文)ることなど望むべくもなく、むしろ、嘲笑の的となりかねません。
一国の平和と安全は、それぞれの国の独自の努力にかかっているとはいえ、同時に国際社会との協調も平和と安全の維持に不可欠です。国際社会との協調を推進するためにも、私たちはこの法案の廃案を要求します。
編集委員・執筆者
阿部治平 (もと高校教師)
伊藤力司 (ジャーナリスト)
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)
杉本茂樹
田畑光永 (ジャーナリスト)
丹藤佳紀 (ジャーナリスト)
半澤健市 (元金融機関勤務)
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
松島光男
松野町夫 (翻訳家)
盛田常夫 (経済学者)
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