本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(53)
- 2013年 12月 3日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究財政金融
異次元の超低金利
現在、世界の「10年国債金利」において、日本だけが、「異次元の超低金利状態」となっている。具体的には、「アメリカが2.5%台」、「ドイツが1.8%台」という状況でありながら、「日本は0.6%台」というように、依然として、「1%を、はるかに下回る状態」となっているのである。そして、この理由としては、「日銀による大量の国債買い付け」が指摘できるようだが、現在では、「約172兆円」にまで、「日銀が保有する国債残高」が増えているのである。
つまり、現在では、「国債の買い手」が、主に「日銀」となっており、「黒田総裁の就任以来、約7か月で、47兆円も国債保有残高が増加した」という状況になっているのである。別の言葉では、「年間の国家債務のほとんど全て、あるいは、それ以上の金額が、日銀によって供給されている」という状況でありながら、誰も、この点を危惧していないようにも思われるのである。
別の言葉では、「アメリカがデフォルト(債務不履行)の状態になろうとも、日本だけは大丈夫だ」と考えているようであり、また、「消費税率を上げれば、国家財政は安泰だ」とも理解されているようである。しかし、実際には、「10月20日」現在で、「日銀のバランスシートが、約212兆円にまで大膨張している」というように、日本は「火の車状態」となっており、今後、「信用崩壊の波」が、「アメリカ」から「日本」に押し寄せてきた時には、「急激な金利上昇」が起きることも予想されるのである。
このように、現在の「異次元の超低金利」は、歴史上、稀に見るほどの「日銀の無謀な金融政策」によって、「かろうじて、維持されている状況」とも言えるようだが、この点については、「日本人の意識変化」が、重要なポイントになるものと考えている。つまり、「国家」や「通貨」への信頼感が存在する限り、「どれほど異常な金融政策も可能である」ということが、今回の「日本の超低金利」によって証明されたようだが、問題は、「どこまで、この状態が維持できるのか?」ということである。
具体的には、「覇権国家であるアメリカ」が、間もなく、「デフォルト」に陥る可能性が高まっている時に、「増え続ける国家の借金」に対して、「日本人の神経が、どこまで持つのか?」ということである。別の言葉では、「対岸の火事」だと思っている間は、「預金神話」が崩壊せず、「ゼロ金利の預金」を持ち続けることが可能だったようだが、今後は、「ある日突然に、この信頼感が崩壊する」という可能性が高まっているのである。
2013.10.15
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天の母
中国の明代に、「王陽明」という著名な儒学者が存在したが、彼の人生観は、「いかに喜び、いかに怒り、いかに哀しみ、いかに楽しむか、ということが人生のすべてである」ということだったようだ。つまり、「喜怒哀楽が重要だ」と考えていたようだが、この点には、更なる解説や理解が必要なようであり、実際には、「喜び」にも、「人智」という「自分自身の受け止め方」と、「天意」という、「神」や「自分の母親」は、「どのように思うのか?」という、「二つの受け止め方」があるようにも思われるのである。
具体的には、「事業で成功した」とか、あるいは、「会社で地位が上がった」という時には、「ほとんどの人が喜び、浮かれた状態になる」ということが理解できるのだが、かりに、「亡くなった母親が、あの世から、自分の姿を見ると、どのように感じるのだろうか?」を考えると、別の受け止め方も存在するのである。つまり、「長い人生においては、良い事の後に悪いことが起きる」という点を心配しているようにも思われるのだが、反対に、「苦労」や「悩み」などを経験している時には、「自分自身は、大変だ」と感じるのだが、一方で、「天の母親」にとっては、「人間的に成長する時期であり、安心して眺めているのではないか?」とも考えられるのである。
そして、このことを、「現在の日本」に当てはめると、「失われた20年」の後に、「大震災」や「大津波」、あるいは、「原発事故」や「未曽有の国家債務」、そして、「史上最速の少子高齢化時代の到来」など、「人智」で考えると、きわめて危機的な状況にあることが理解できるのだが、「天意」からは、別の考えも存在するようである。つまり、これほどまでの「試練」が、現在の「日本人」に与えられていることには、「大きな意味」が存在する可能性のことである。
具体的には、これからの「大混乱の時期」を乗り越えた時に、「日本人が、今までにないほど、大きく成長しているのではないか?」ということであり、このような観点から言えることは、「現在、我々に必要なことは、現実を直視して、徐々に、問題を解決する」ということでもあるようだ。別の言葉では、「問題の存在」を明らかにしながら、「全員で、解決策を考え、実行する」という態度に変化した時に、本当の意味で「新たな時代」が、幕を開ける可能性のことである。また、このような観点からは、現在の「アメリカのデフォルト騒動」に関して、「決して、この問題は、対岸の火事ではない」と考える人が増えることが重要だと思われるのだが、現時点では、「まだ、きわめて少数派」とも言えるようである。
2013.10.15
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預金神話の崩壊
総務省の発表によると、「9月の全国消費者物価指数(CPI)」は、「価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比0.7%上昇した」とのことである。しかも、「上昇は4か月連続」という状況でもあり、このことは、「日本が、本格的なインフレ時代に突入した」ということを表しているようである。つまり、今までは、強引な「超低金利政策」や「円高政策」などにより、「人為的に、物価が低く抑えられていた可能性」があったようだが、現在では、「アベノミクス」や「黒田日銀総裁の金融政策」により、「実体経済」においても、「インフレ」が、はっきりと見えてきたようである。
換言すると、今までは、「日本人の預金神話」が存在したために、「ゼロ金利」であろうとも、「日本人は、決して、預金を手放そうとしなかった」という状況だったのである。そして、この点については、確かに、「消費者物価が下落している間は、預金の価値が上昇した」とも言えるのだが、このことは、「実体経済」だけの理論であり、「マネー経済」を考慮すると、「的外れの考え方」とも言えるようである。
つまり、「膨大な金融商品」が生み出される過程では、「既存の預金」は「知らないうちに価値が減少していた」という状況だったのだが、「日々の生活に、問題が起きなかったために、ほとんどの日本人は、この点を考慮しなかった」とも言えるのである。しかし、現在では、「預金のゼロ金利」に対して、「消費者物価の上昇」が始まったために、「預金の目減り」が起きているのだが、この点については、「間もなく、大きな混乱を引き起こす可能性」があるようだ。
具体的には、「10年国債の金利が0.6%前後」という状況下で、「消費者物価が0.7%の上昇」という事態は、「どのような経済理論からも、正当化できる状況ではない」とも言えるのだが、現在の日本では、まったく、この点が忘れ去られているようである。そして、間もなく、「大事件の発生により、この歪みが、世の中を揺るがす事態へ変化する」という状況が考えられるのだが、基本的には、「長期金利は、短期金利に物価上昇率を加えた数字」が妥当な水準とも言えるのである。
このように、「長期間のゼロ金利」に慣らされ、また、「日本国債の異常な買い支え」にも、まったく憂慮しない日本国民が、今後、「大幅な円安」や「更なる物価上昇」に直面した時に、「預金神話の崩壊」という事件が起きることが予想されるとともに、「多くの人々が、慌てて、換物運動に走り出す」という事態も考えられるようである。
2013.10.25
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おもてなしの精神
今回の「阪急阪神グループ系列レストラン」による「偽装表示問題」には、たいへん驚かされたが、この最も大きな要因が、「リッツ・カールトンホテルまでもが、この問題に関与していた」ということである。つまり、私自身が、今から7、8年前に、「リッツ・カールトン大阪」で「おもてなし研修」を受けた経験があり、当時は、「海外にも、日本人以上の素晴らしい精神を持ったホテルが存在する」と感激したからである。
しかし、今回、あまりにも愚劣な偽装問題が発覚したことにより、「リッツ・カールトン大阪に対する評価」を変えなければいけないようにも感じているのだが、同時に、「なぜ、これほどまでの堕落が起きたのか?」という点にも、大きな関心を抱いているのである。つまり、「利益追求」という「お金の魔力」により、「おもてなしの精神」が崩壊した可能性のことであり、また、「従業員のサラリーマン化」や「権力の暴走」などが、「どれほどの悪影響を与えたのか?」ということである。
このように、現在では、「資本主義」という「お金が、最も大切である」という考え方が世界中に広まった状況とも言えるようだが、当時、「リッツ・カールトンホテル」で感じたことは、「いよいよ、時代が変化するのではないか?」ということだった。つまり、「利益だけを追い求める企業」は、当然のことながら、「顧客の満足度を無視する会社」ということであり、今後は、「このような企業は、決して、社会に受け入れられないのではないか?」とも考えたからである。
換言すると、「顧客と共に栄える企業」というのは、お客様の「喜び」や「満足度」を優先しながら、「企業の従業員が、人間的に成長し続ける会社」だと理解したのだった。しかし、今回の事件は、「時代の逆行」という「人々が、ますます、お金の魔力に悪影響を受ける姿」を現しているようであり、実際に、現在では、「誰も信用できない社会へ、変貌を遂げたのではないか?」ということだが、一方では、反対に、「世の中が窮まった状況」を意味している可能性もあるようだ。
具体的には、「易経」にある「窮まれば変じ、変じれば通ず」という言葉のとおりに、「間もなく、人々の意識が大変化を遂げ、その後は、良い社会が訪れる可能性」のことである。そして、今回の事件は、人々に「気付き」を与えるためのものであり、これから起きることは、本当の「築き」であり、今後は、より一層、「思いやり」を持った「おもてなしの精神」が「日本社会で、重要度を増すのではないか?」ということである。
2013.10.25
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楽天が教えてくれたもの
今回、日本一になった「楽天」の活躍を見ていると、まさに、「東洋学の教え」に関する「実践的な教科書」でもあったようだ。つまり、「謙譲の美徳」という「常に謙虚である態度」が「一年を通して貫かれた」ということであり、また、「慈愛」という「他人のために行動すると、自分が考える以上の力が出る」ということである。特に、「マー君」の活躍には、たいへん目を見張るものがあったのだが、「神の子」と言われるように、今年の「田中投手」には、「人智を超える不思議な力が働いた」とも言えるようである。
より具体的には、「現状に満足せず、常に、より高い境地を目指して努力を続ける」という態度のことであり、また、「東北の人々を思いながら、夢に向かって、自分たちが挑戦し、努力する」ということである。その結果として、「日本一」という夢がかない、また、この事実を見た人々が、本当の「感動」という、「奇跡的な事実に感じて、自分も動き始める」という現象が起き始めているようである。
このように、数千年の歴史や経験を通して、人類が導き出したものが、本来の「教え」であり、この点については、「洋の東西」を問わず、多くの人々が、心の底で感じている「真理」とも言えるようである。また、「教えを実践した時に、神の奇跡が訪れる」ということが、今年の「楽天」により、実証されたようだが、このことが、本当の意味での「宗教」であり、実際には、「宗教組織に属さなくとも、全ての人々が、自分の生活を通して、常に、教えを実践する」という状況が望まれるようである。
しかしながら、過去数百年の歴史を振り返ると、いつの間にか、「お金」が「神様」となり、現在では、「お金儲けのためなら、他人を犠牲にしてもよい」と考える人が、知らないうちに増えていたのである。あるいは、「人智が全てであり、神様などは存在しない」と考える「技術至上主義」の人々が増えたために、いつしか、「未曽有の天災」が頻発するような状況にもなったようである。
このように、現在では、「いじめ」や「自殺」などが、「社会の隅々にまで蔓延した」という状況となり、また、「地震や雷などの天災に怯える日々」が続いているのだが、この時に大切なことは、「東洋的な考え」が復活することでもあるようだ。具体的には、「自然との共生」であり、また、「人智の限界を悟りながら、常に、新たな目標に向かって挑戦を続ける」ということだが、このことが、「文明法則史学」が教える「2000年頃に、西洋の時代が終焉し、東洋の時代が始まる」という転換の意味だと考えている。
2013.11.6
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亡国の金融政策
現在、「日本の信用乗数」が急低下中である。具体的には、「マネタリーベース」という「日銀が供給する資金」が「約190兆円」という金額に対して、「民間銀行の資金供給量」を表す「M2+CD(マネーストック)」の残高が「約885兆円」という状況のことである。そして、この点を、「信用乗数=マネーストック÷マネタリーベース」の公式から考えると、現時点の「日本の信用乗数」は、「約4.6倍」という、実に危機的な水準にまで落ち込んでいることが理解できるのである。
つまり、「1990年前後の日本のバブル時」には、この数字が「約13倍」という状況だったのだが、その後は、「失われた20年」という言葉のとおりに、「民間銀行の信用創造能力」が低下しているのである。しかも、一方で、「日銀の資金供給」が、未曽有の規模で急増しているのだが、具体的には、「古典的な信用創造」とも言える「日銀のバランスシート拡大」が、現時点の「唯一の信用供給方法」とも言えるのである。
そして、このことは、「亡国の金融政策」とも考えられるようだが、具体的には、「1991年のソ連」を始めとして、「信用乗数の急低下」が行き着く先は、「金融システムの崩壊」、あるいは、「国家財政の破綻」が想定されるからである。つまり、「膨大な不良債権」を抱えた国家が「最後の手段」として取る方法が、「日銀による信用創造」とも言えるのである。また、「信用乗数が1にまで低下する」ということは、「民間銀行」が「機能不全の状態」となり、「全ての資金が、紙幣によって日銀から供給される」という事態を意味しているのである。
このように、現在では、「デリバティブ」や「債券」などの「市場による信用創造能力」が行き詰まりの状況下で、さらに、「民間銀行による信用創造能力」が、急速に低下しているのである。そのために、「日銀のバランスシート」が、「黒田総裁の就任」以来、「約7カ月間」で、「165兆円から217兆円にまで大膨張している状況」となっているのだが、この間に行われたことは、「当座預金」という「民間銀行からの借入資金」を増やしながらの「国債の大量買い付け」でもあったのである。
しかし、今後は、「日銀の資金調達」において、本格的な「紙幣の増刷」が想定されるようだが、この時に起きることは、更なる「信用乗数の低下」であり、その結果として、「大幅な円安」が予想されるのである。ただし、一方では、「円安」による「株価急騰」も予想されるのだが、このことが、本当の「インフレ時」に起きることである。
2013.11.06
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion4673:131203〕
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