特定秘密保護法が通って、戦争準備と原発再稼働に向かう憂鬱な年の瀬!
- 2013年 12月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎原子力秘密保護法
◆2013.12.15 はや、年の瀬ですが、なにやらきな臭い、憂鬱な師走です。思えば去年の今頃、総選挙で民主党野田内閣がオウンゴールで大敗し、自民党が大勝して第二次安倍内閣が成立したのが始まりでした。東京都知事選挙での猪瀬知事誕生も同時でした。民主党は、自らの失政がたたって脱原発を争点にできず、景気回復と「決める政治」を唱えた自民党が小選挙区で圧勝、「脱原発」シングルイシュー派も、第3勢力になれませんでした。今夏参院選挙での「ねじれ解消」が、自公政権の暴走に弾みをつけました。消費税増税、生活保護切り下げ、TPP参加、オスプレイ受け入れ、日本版NSC、そして特定秘密保護法強行制定・公布。そのあとに集団的自衛権、武器輸出3原則緩和、共謀罪、「愛国」教育強制、原発再稼働・原発輸出と、レールが敷かれています。中国・韓国・北朝鮮との国際関係も、硬直どころかいっそう不安定になって、2014年が、厳しい年になることを予感させます。東京都知事の方は、オウンゴールでリセットできそうですが、国政は 、国会包囲デモを持続するしかなさそうです。
◆ 特定秘密保護法の全文は、ウェブでも読めますし、各新聞で成立直後に新聞1面をまるまる使って掲載されました。でもそれを読んでも、多くの人は途中で投げ出すでしょう。おそろしく難しく、曖昧で、わかりにくい法律です。肝心の「特定有害活動」や「テロリズム」にしてからが、やたら長く「もしくは」や「その他」がカッコ内でくくられた曖昧なものです。だからむしろ、自民党石破幹事長の問題発言が、立法目的のホンネと意味を語っているとみて間違いないでしょう。悪法反対や脱原発のデモが「テロ」と解釈され、公務員から取材した外交・防衛情報を報じると検挙されかねません。法文からは、それが可能になります。本サイトでもその危険性は論じてきましたが、日本弁護士連合会も解説を出しています。学術論文データベ ースに寄稿いただいた神戸の弁護士深草徹さんが、悪法の成立を踏まえて「世界に通用しない特定秘密保護法(改訂版) 」と「アメリカと比べてこんなにひどい特定秘密保護法(第2版)」を書き換えてくれました。ぜひご覧ください。これから長い法の廃止・修正の運動が始まります。いやそれ以前に、1年以内という施行まで、法解釈や「第3者機関」の歯止めを具体的に指摘していく必要があるでしょう。それにしても、国会内での与党公明党のだらしなさ、野党のふがいなさが、もどかしいところです。選挙後2か月かけて、じっくり連立協議し、脱原発担当相を新設し低賃金労働規制などを認めて大連立政権が発足するドイツが、うらやましく見えます。
◆国家安全保障戦略、防衛省の新防衛大綱・中期防衛力整備計画と共に、「戦争ができる国」づくりが始まります。それにあわせるように、経産省の新エネルギー基本計画案が策定され、原子力発電を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、再稼働を方向付けました。核燃サイクルまで「着実に推進」とされて、懲りない原子力ムラの全面復活です。3.11の後、あの「正直」な石破現自民党幹事長が、原発を「核の潜在的抑止力」と明言していたことが想起されます。汚染水問題も、廃炉への道筋も、除染も避難者14万人の生活の見通しもついていないというのに。日日、過酷な放射性被曝の労働者を作りだし、無論、最終廃棄物をどうするかは何も決まっていないのに。日本がフクシマから何を学んだのかが、世界から問われる、正念場です。2013年は春に「社会民主主義の国際連帯と生命力ーー1944年ストックホルムの 記録から」(田中浩編『リベラル・デモクラシーとソーシャル・デモクラシー 』未来社)と加藤哲郎・井川充雄編『原子力と冷戦ーー日本とアジアの原発導入』(花伝社)に「日本における『原子力の平和利用』の出発」を発表しました。秋の加藤・鳥山・森・国場編『戦後初期沖縄解放運動資料集』のDVD版刊行を期に、森宣雄・鳥山淳編『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたのかーー沖縄が目指す<あま世>への道』(不二出版)が単行本として刊行され、私も「金澤幸雄さんと金澤資料について」を寄稿し、12月23日(月)には沖縄・那覇市で出版記念シンポジウムが開かれます。『図書新聞』11月2日号に書いた村田忠禧『日中領土問題の起源』の書評を今回アップ。チャルマーズ・ジョンソンの新訳『ゾルゲ事件とは何か』(岩波現代文庫)に寄せた「解説」、及び『歴史学研究』12月号掲載中の震災特設部会「大会報告批判」、それに9月上海での国際シンポジウム報告が活字になった「国際情報戦としてのゾルゲ事件」(『ゾルゲ事件外国語文献翻訳集』38号、12月刊)は、来年1月以降の更新にまわします。そうそう、まもなく岩波現代全書『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』が発売になります。私の脱原発宣言本で、いろいろご意見もあろうかと思いますが、お正月にでも、ご笑覧ください。来年もよろしく。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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