イジメを仕事とする人達
- 2013年 12月 22日
- 評論・紹介・意見
- イジメ藤澤 豊
イジメを苦にした子供の自殺のニュースが後を絶たない。全てのケースがテレビや新聞で報道されている訳でもないだろうし、幸いにしてか自殺にまでいたらないケースも多いだろうから、かなりの数のイジメが起きているはずだ。
イジメの根源は、群れる、大勢に身をおいて保身に走る人間のというより生物の本能にあるから、イジメは何時の時代にもあったし、これからもなくなりはしないだろう。残念ながら、いつも理性で本能を抑制できる人達ばかりではないし、私利目的で理性を抑圧して本能を表面化する環境を作り出そうとする輩もいる
子供のイジメに関するニュースほどテレビや新聞では扱われないが、週に何通か拝受する株式会社MyNewsJapan発行のメルマガを読むと、大人のイジメ、それも私人としてではなく企業などの組織だった大人のイジメが当たり前のように、あちこちで日々繰り返されていることが分かる。死ぬまで働けというのは、もう立派なイジメになることに気がつかない。あまりにも組織的、恒常的になりすぎて、イジメをイジメと自覚できないところまできてしまっている。企業の広告宣伝で禄を食んでいるマスコミでは、企業内の組織だったイジメを取り上げようがないのだろう。それをMyNewsJapanの無料メルマガがし続けている。どちらが、実情に近いのかと問うまでのこともない。
方や理性が成長段階にある子供のイジメ、方や分別がつくの、つかないのという歳は遠の昔にすぎた、後進に分別云々の講釈を垂れなければならない歳の人たちの、組織をあげて、給料もらっての、同僚に対する大人のイジメ。これをなんとかしなければまっとうな社会にはなりようがないし、そこで育つ子供にはイジメはあって当たり前になるだろう。
くだらん比較をしてもしょうがないが、就学人口に対する就労人口の比と企業やお役所まで含めた組織体の数から単純に想像しての話だが、イジメの件数でみれば、子供のイジメより大人のイジメの方が遥かに多いんじゃないかと想像している。企業内の組織だったイジメでは、従業員をイジメる専業部隊や人材を抱えている。その部隊への指南を商売としているコンサルタントまでいる。言ってみればイジメのプロ集団で、自ずと子供のお遊びのイジメとは質も量も違う。中には専業部隊を必要としない、企業や組織の文化そのものがイジメかそれスレスレで、イジメられている社員以外は全員がイジメる側にいるようなところさえある。
そのような企業がいつの頃からかブラック企業と呼ばれるようになった。ブラック企業のいつくもが、金融筋からは優良企業と評価されている。企業として内-従業員に向いているのか、外-金融界に向いているのかの違いなのだろうと想像するのだが、そのブラック企業を優良企業と勘違いしている、させられている人々の多さにはがっかりする。
子供のイジメにも金銭が絡むことがあるが、企業内の大人のイジメでは絡むどころか、組織を上げて業務としてのイジメで、イジメる側はイジメる作業を労働として提供して、その対価として給料をもらっている。
短絡的な精神主義や集団行動に対する無批判な社会認識が背景にあるのだろうが、同僚をイジメることを仕事としている人たちや仕事の一環として同僚をイジメる側にまわっている人たちの精神的幼児性と利己主義には呆れるより哀れみさえ感じる。
もっとも、彼らには彼らなりの全く逆の主張があるだろう。生活してゆくためにやってる、やらなきゃならない立場になってしまっただけで、好きでイジメをしている訳じゃない。生活に困る訳でもないのに遊びでイジメをしている子供の方が、仕事でイジメをしているオレたちよりタチが悪いというだろうと。
その主張、多少の説得力もない訳でもないだろうが、どれほどの人たちが納得するだろう。そんな仕事は早々に辞めて、転職したらいいじゃないかと言われるだろう。戦時中に戦争協力を拒めば、国外逃亡でもしない限り命の危険があった。幸いにして今の日本はある種の仕事を嫌って避けたとしても、何らかの仕事もあるはずだし、生活もなんとかなるはずで、しょうがなくイジメを仕事としてやっていると言われて、“はい、そうですよね”という人がどれほどいるか。
人の個人としての尊厳を踏みにじる行為をし続けることによって成り立つ生活とは、単に経済的な意味での生活という意味になるのだろうが、精神生活は如何なるものになるのか。自分の子供にどのような教育をし得るのか。まさか、お父さんは会社で同じ会社の従業員をイジメて、追い出す仕事をしているなどと言えるのか。もし、子供の学校でイジメの問題があったら、どのような立場に自分自身をおけるのか。仕事で人をイジメておいて、学校ではイジメはよくないとでも言えるのか。言えるとしたら、どうやって両者の間の折り合いをつけるのか。前を向いてイジメOK、後ろ向いてイジメNOがあり得るのか。ありえるとしたら、それこそ自己欺瞞の典型だろう。
マスコミにはでてこないが日本中で、毎日組織を上げた大人の、仕事としての、それも同僚のイジメが横行している。幸い、そのイジメに直接関与しないですむ立場にいたとしても、組織を上げたイジメを黙認していたら、人としての罪の重さは似たようなもんだろう。そのような社会を良しとしているところに子供のイジメがないわけがない。あって当たり前だろう。子供のイジメをどうのこうの言うのは結構。言わなきゃならない。でも、大人の自分たちのイジメはどうするつもりなのか。黙認しつづけるわけにもゆかないだろう。
黙認し続ければ、遠からずその社会、誰の社会でもない自分たちの社会が堕落し崩壊する。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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