エドワード・スノーデン「声なき人間になるくらいなら国なき人間になる」 Edward Snowden: I Would Rather Be without a State than without a Voice.
- 2014年 1月 1日
- 時代をみる
- 「ピースフィロソフィ―」「特定秘密保護法」
Edward Snowden |
米国のプログレッシブニュースサイト、『コモン・ドリームズ』12月17日付に掲載された、元CIA職員で米英による世界中での個人情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン氏のブラジル国民に向けた公開書簡が掲載されました。
NSA Surveillance Is about Power, Not “Safety”
An open letter to the people of Brazil
http://www.commondreams.org/view/2013/12/17-1
記事の写真に添えられたキャプションに、エドワード・スノーデンの言葉が紹介されています。「政府がその名において何をやっているのかを大衆は知る必要があります。そうでなければ、『統治される者の同意』など無意味なのです。情報が開示されなければ、統治される者の同意は、同意とはいえません。」
この手紙の中のスノーデンの名言には力づけられます:
I would rather be without a state than without a voice.
「声なき人間になるくらいなら国なき人間になる」=「言論を失うぐらいなら国籍など要らない」。
エドワード・スノーデン「NSA の監視は『安全』ではなく権力のためのものだ 」
ブラジル国民に向けた公開書簡
2013年12月17日
http://www.commondreams.org/view/2013/12/17-1
(翻訳: 酒井泰幸)
以下の書簡は2013年12月17日ブラジルの新聞 A Folhaにポルトガル語で掲載された。原文はGlenn Greenwaldの夫であるDavid Mirandaのフェイスブックにて提供されている。
6ヶ月前、私はアメリカ 政府の国家安全保障局(NSA)の暗部から歩み出て記者のカメラの前に立ちました。私は世界の人々と共有したのは、ある国々の政府が全世界的な監視システムを構築しつつあるという証拠です。そのシステムは、私たちがどのように生活しているか、私たちが誰と話しているか、私たちが何を言っているかを、秘密裏に追跡します。もし私が目を見開いてカメラの前に立てば、家族や家を失い、私の命にも危険が及ぶかもしれないことは分かっていましたが、私は敢えてそう決心しました。世界の市民には、自分たちが生きているシステムを理解する権利があるのだという信念に、私は突き動かされていました。
私が最も恐れたのは、私の警告に誰も耳を貸そうとしないことでした。しかし、これが全くの見当違いであったということほど、私にとって喜ばしいことはありませんでした。いくつかの国々での反響は特に私の心に残るものでした。ブラジルは、まさにそのような国々の一つです。
私はNSAで、犯罪の疑いなどない全ての人々に対する監視が行われているのを目撃し、これが私たちの時代で最悪の人権侵害に発展するであろうという危機感を覚えました。NSAなど諜報機関の言い分では、私たち自身の「安全」のために、(つまりはジルマ[・ルセフ、ブラジル大統領]の「安全」のため、[ブラジル石油公社]ペトロブラスの「安全」のために、)私たちのプライバシーの権利を踏みにじって私たちの生活に侵入したというのです。 彼らはいかなる国の大衆にも、まして自国民にさえも、許可を求めたことはありませんでした。
今日では、あなたがもしサンパウロで携帯電話を持っていれば、NSAはあなたのいる位置を追跡することができ、実際そうしています。彼らはこのような追跡を世界中の人々に対して毎日50億回も行っています。[ブラジル・サンタカタリーナ州の州都]フロリアノーポリスの人が、どこかのウェブサイトを見たなら、あなたがいつ何をしたかをNSAは記録します。[リオグランデ・ド・スル州の州都]ポルト・アレグレのお母さんが息子に大学の試験が良くできるようにと電話をかけたなら、NSAはその通話記録を5年以上も保存することができます。標的にした人の名声を傷つけることが必要な場合は、誰が男女の関係を持ったとかポルノ写真を見たとかいうことさえも追跡します。
アメリカの上院議員たちは、これは「監視」ではなく「データ収集」なのだから、ブラジルの皆さんは心配する必要は無いと言います。皆さんの安全を確保するために行っているのだと言います。しかし彼らは間違っています。法的に正当な活動、つまり、個人を監視の標的にする場合は特定の個人に対する筋の通った容疑に基づいて行われる、合法的なスパイ活動、合法的な法の執行[警察活動]と、すべてを見通す監視の下に全人民を置き、情報のコピーを永久に保存するという、この一網打尽の監視活動の間には、天と地ほどの違いがあります。これらの監視活動はテロリズムとはまったく無関係でした。これらは産業スパイや、社会的統制、外交的な情報操作にまつわるものです。これらは権力にまつわるものなのです。
多くのブラジルの上院議員たちはこれに賛同し、ブラジル市民に対する犯罪容疑の調査のため私に協力を要請しました。私は適切で合法なことなら何でも協力する意思を表明しましたが、不幸なことにアメリカ政府は私の能力を制限するため努力を惜しみませんでした。私がラテンアメリカに行けないようにするためエボ・モラレス[ボリビア大統領]の専用機を離陸阻止さえしました。どこかの国が無期限の政治亡命を受け入れてくれるまで、アメリカ政府は私の発言を妨害し続けるでしょう。
私は半年前に、NSAは全世界に聞き耳を立てたがっていることを公にしました。現在、全世界は逆にNSAの言うことに聞き耳を立て、抗議の声を上げてもいます。そしてNSAは自分の耳に入ることが気に入らないのです。無差別の全世界的な監視という文化は、全ての大陸で公開討論と徹底した調査にさらされ、崩壊しようとしています。わずか3週間前のことですが、ブラジルは国連人権委員会を主導して、私たちがデジタル・ネットワークに踏み入ってもプライバシーが効力を失うことはなく、潔白な人々を集団監視するのは人権侵害であるということを、歴史上初めて認めさせました。
いま時代の潮流は反転しました。私たちのプライバシーを犠牲にすることなく治安を享受することができる未来を、私たちはついに見ることができます。私たちの権利は秘密組織によって制限されてはならず、けっしてアメリカの政府高官がブラジル市民の自由を左右すべきではありません。集団監視の擁護者たちは、私たちが手にした監視技術の進歩は民主的な統制を危険なまでに追い越していると言っても信じないかもしれませんが、そんな彼らでさえも、大衆の監視は大衆自身によって議論されなければならない問題だということに、今は同意しています。
私の良心的行動はこの宣言から始まりました。「私の言うこと全て、私のすること全て、私が話す相手の全て、創造性や愛や友情の表現が全て記録されるような世界に、私は住みたいとは望みません。これは私が支持したいと望むものではありません。これは私が築きたいと望むものではありません。これはその下で私が暮らしたいと望むシステムではありません。」
その数日後、私に伝えられたのは、米政府が私の国籍を剥奪し、私を刑務所に入れようとしているということでした。私の発言の代償として私はパスポートを失いましたが、私は何度でも発言します。私は、政治的な安楽のために犯罪性を無視するような人間にはなりません。私は声なき人間になるくらいなら国なき人間になります。
ブラジルの皆さんが私から一つだけメッセージを受け取ってくださるなら、これを覚えておいてください。私たち全員が、不正に反対しプライバシーと基本的人権を擁護するために団結すれば、私たちはどんなに強力なシステムからであろうと身を守ることができるのです。
エドワード・スノーデン
内部告発者のエドワード・ジョセフ・スノーデンは、アメリカ国家安全保障局(NSA)と中央情報局 (CIA)職員の元技術請負人で、最高機密の 米英両政府による大衆監視活動の詳細を報道機関にリークした。
初出:「ピースフィロソフィ―」2013.12.30より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/12/edward-snowden-i-would-rather-be.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2501:140101〕
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