展望なき「核燃サイクル」から撤退せよ
- 2014年 1月 11日
- 時代をみる
- 池田龍夫
安倍晋三首相は1月6日の年頭記者会見の中で「まずはエネルギー源の多様化と、既存の原発再稼働の判断に集中していく」と述べた。新増設は今のところ想定しないと〝予防線〟を張ったものの、原発推進の姿勢は相変わらずだ。翌7日には日本原燃が、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場など4施設についての安全審査を原子力規制委員会に申請した。
プルサーマル計画も破綻
〝原発安全神話〟を楯に、使用済み核燃料を化学処理、再利用可能なウランとプルトニ二ウムを取り出す計画だった。原燃が1993年に着工、97年の完成を目指したが、トラブルが頻発。これまでに2兆2000億円もの建設費を使ったものの、福島原発事故(2001年3月11日)が発生し、見通しどころか、危険で無用な施設との悪評が強まるばかり。再処理した燃料を使って高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)を動かす計画(プルサーマル)だったが、これまた事故続きで実用化の見通しは全く不透明だ。またプルトニウムを再利用するMOX燃料を使えるよう設計された大間原発(青森県、建設中)などの稼働も挫折したままである。
危険なプルトニウムが増える一方
毎日新聞1月7日付夕刊は、「原燃は規制委の審査期間を半年程度と見込み、今年10月工場完成を目指している。しかし規制委が耐震強化策などを求めれば大幅に遅れる可能性がある。(中略)最大の懸案は、再処理で生まれ、核兵器への転用が可能な余剰プルトニウムの問題だ。プルトニウムが8㌔あれば核弾頭1発を製造できるとされる。日本はすでに英仏などに再処理を委託した約44㌧を国内外に所有している。単純計算で5000発に相当する」と指摘しているが、背筋が凍る思いだ。
日経新聞8日付社説は、「3・11以前は、すべての核燃料を再処理して回収した燃料を原発で燃やす『プルサーマル』を16~18基の原発で実施する計画だった。現段階では実現が困難だろう」と指摘。
朝日新聞6日付社説も、「巨額のコストがかかり、資源の有効利用という意義がなくなった核燃料サイクル事業は『撤退』が世界の流れだ。(中略)これだけ大きな原発事故を起こしたのである。切るに切れなかった不良債権を処理する機会にすべきだ」と、政府の政策転換を求めていた。
トルコへの原発輸出も放置できない
安倍首相は核政策転換どころか、原発輸出を画策している。トルコのエルドアン首相が7日に来日、中東外交を強化する点に異論ないものの、原発輸出を裏付ける原子力協定の話し合いが行われたことは重大だ。すでに三菱重工などが受注に乗り出している。このほか戦車用エンジンの共同開発も浮上しており、武器輸出3原則違反の恐れもある。原発輸出についてインド、ヨルダンなど数各国とも接触している模様で、安倍政権の強引な外交が気がかりである。
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