終りのない原発事故の惨事
- 2014年 2月 7日
- 時代をみる
- グローガー理恵
「原発のリスクの深刻さは、福島やチェルノブイリを見るまでもなく、ひとたび事故が起こったら国の存亡にかかわる大事故になる可能性をはらんでいます」と、ある東京都知事選候補者が出馬決意表明の中で述べています。
その、国の存亡にかかわるような可能性をはらんでいる福島原発事故の災害は現在も進行中です。日々とどめなく増えつづけていく膨大な量の汚染水、ずさんな汚染水処理、ずさんにつくられた貯水タンクからの汚染水漏出、地下水の汚染、海洋汚染、 現場で上昇し続ける制御不能な放射線量、3 号機から立ち昇る謎の水蒸気、アポカリプスを生じる可能性が潜む危険な4号機プールからの核燃料取り出し作業、被曝問題、健康被害、放射能汚染、核廃棄物処理…などなど、気が遠くなるような難題ばかりです。しかも問題はエスカレートする一方で、事故収束の見込みなどはどこかへ吹き飛んでいってしまったような気さえします。
そして誰よりも、この終わりのない惨事によって、心も体も共に深く傷ついてしまっているのは被災者の子供たちなのではないでしょうか? 子供たちは未だ、自分たちの生活をコントロールしていけるような力も術も持ち合わせていません。かつては子供であった大人も自分達が子供だった頃を覚えているはずです。如何に子供という者が無力であり弱い存在であるかと言うことを…。
1) グリーンピース・インターナショナルのブログに、1月26日に開催された日本教職組合の教育研究全国集会で公表された報告に関する記事が掲載されています。報告は、被災地からの子供たちが転校先で「いじめ」にあったり、ストレスのため子供たちの心の中に生じてしまった心理的問題について触れています。抜粋した部分を下に和訳しました。(ソース: http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/fukushima-nuclear-crisis-update-for-january-2/blog/48025/)
(和訳)
Greenpeace International: フクシマ危機報告-2014年 1 月21日~ 1 月28日
原発事故から3年近く経ったが、1月26日に開催された日本教職員組合の教育研究全国集会での報告によると: 被災地から避難し転校した子供たちが「いじめ」の犠牲者になっている。避難した子供たちは「原発へ帰れ」と言われたり「脱北者」と呼ばれたりしている。-「脱北者」とは北朝鮮からの亡命者を意味する。「原発さえなければとの思いから、原発近くで暮らしていた人に怒りの矛先が向く雰囲気があり、子供も影響を受けている」とはある教員の言葉である。「ストレスを抱えて相手の気持ちに寄り添えず、人間関係を築けない子供が増えた。発達に課題のある児童は学級の半分」とは別の教員の言葉である。
(和訳おわり)
2) 私は最近、IPPNWドイツ支部サイトに掲載されていた記事を通して、日本に在住するアメリカ人のフィルムメーカー、イアン・トーマス・アシュ氏の存在を知りました。IPPNWドイツ支部サイトのイアン・トーマス・アシュ氏に関する記事「Dokumentarfilm A2-B-C über Fukushimafolgen in Berlin」を下に和訳しておきました。 ( ソース: http://news.ippnw.de/index.php?id=671 )
( 和訳)
福島原発事故後の余波についてのドキュメンタリー映画「A2-B-C」をベルリンで上映
2013年 11月 22日、ベルリン・レインダンス・フィルム祭 (Raindance Filmfestival Berlin)にて、フクシマ原子力大災害によってもたらされた健康被害についてのドキュメンタリーフィルム「*A2-B-C」が上映された。「A2-B-C」はアメリカ人のフィルムメーカー、イアン・トーマス・アシュ氏が製作したもので、フクシマ原子力大災害によってもたらされた健康被害に関するドキュメンタリーである。このフィルムは既に 6月、フランクフルト・ アム・マインで催された日本のフィルム・フェスティヴァル「ニッポン・コネクション」にて「ニッポン・ヴィジョン賞」を受賞している。
フィルムは、フクシマの子供達と家族がどのようにして放射能と闘ってこなければならなかったのか、彼らの日常生活を観察しながらドキュメントしている。イアン・トーマス・アシュ氏はIPPNWの医師たちとの会談で、IPPNWドイツ支部の研究調査が日本で多大な関心を呼んでいることを伝えた。
(和訳おわり)
(注)*映画のタイトル「A2-B-C」は、フクシマの子供たちが受けた甲状腺検査によって検出された「しこり」のサイズを示す記号です。:
(A1) = 結節や嚢胞を認めなかったもの
(A2) = 5.0mm以下の結節や 20.0mm以下の嚢胞を認めたもの
(B 判定) = 5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞を認めたもの
(C 判定) = 甲状腺の状態などから判断して、直ちに二次検査を要するもの
私自身、残念ながら、このドキュメンタリーを観るチャンスには恵まれなかったのですが、イアン・トーマス・アシュ氏のサイトにアップされている「A2-B-C」の予告編を見てみました。長さ3分ほどの短い動画ですが、被曝することの恐れを常に抱きながら生きていかねばならないフクシマの子供たちの生活が描かれてあり、胸に迫ってくるものがありました。イアン・トーマス・アシュ氏は、ベルリン・レインダンス映画祭のインタビューでこう語っています。: 「お金のある人たちは、もうとっくに被災地を去ってどこか別の所へ移住してしまっている。政治家の家族も同じだ。でも、被災地に残された人たちは、どこかに移住できるような経済的余裕がないから、汚染地域に居残るしかほかにチョイスがないのだ」と。
「A2-B-C」予告編へのリンクです。http://www.documentingian.com/film-item/a2-b-c/
3) 福島原発告訴団は福島第一原発事故を起こし被害を拡大した責任者たちの刑事裁判を求めていくことを目的に発足した市民団体です。団長は武藤類子さんです。2013年の 3月に原発事故によって被害を受けた人々によって結成され、業務上過失死傷容疑などで当時の東電幹部や政治関係者 計42人を告訴しましたが、2013年9月 9日に東京地検によって全員不起訴とされています。その福島原発告訴団が2月 5日にYoutubeに彼らのアピールの動画をアップしています。動画の長さは、それぞれ3分位です。(ソース: 竹内雅文氏-仏語翻訳家から)
福島原発告訴団 津波編 (published on Feb 5, 2014)
福島原発告訴団 福島の現状編 (published on Feb 5, 2014)
福島原発告訴団 強制捜査編 (published on Feb 5, 2014)
http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/
福島原発告訴団のサイト
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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