反証の可能性を求めて―「考える」ということを考える
- 2014年 2月 24日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤 豊
仕事においても私生活でも人に何かを説明しようとすれば、まず自分のなかで説明がついてなければならない。自分で自分を説得もできずに人を説得できるわけがない。説明しようとすれば使う言葉の意味や言葉と言葉の関係、違いもできるだけ明確にしようと心がける。心がけるとまでしか言えないのが後ろめたい。思考も使う言葉も、自分の能力の限界まで努力をするとしか言えない。完璧などあろうはずもなく、視点のはっきりしないだらしのない言辞になる。それで、最善は尽くすのでご容赦頂きたいと前置きすることになる。
散々反芻して自分としてはもう出した結論に反証の余地がない、いくら考えてもこう考えるしかないというところに至ったことは、言葉を選びながら順序立てて話をさせて頂く。説明の目的は、当然相手にご理解頂くことにある。ただ、それは相手のことであってこっちのことではない。じつは、ご理解頂くという説明本来の目的に加えてこっちも目的というか期待がある。
自分ではいくら考えても反証の余地が見つからない。ただ、見つからないというのが出した結論が正しいことを保証するわけではない。見つからないのは、自分の能力の限界で見つからないだけのことで、出した結論が、たとえ、そこそこであったとしても、間違ってはいないということにはならないのではないかという不安がある。この不安、自分では封印できたとしても解消する能力がない。
反証の余地があるのかないのか、もしかするとありもしないものへの、分からないがゆえの不安かもしれないが、ぽっと浮かんでくるたびに出した結論が最終の結論でいいのか?どこかに欠陥や見落としがあるのではないかと問い続ける。自分とは立場の違う人たちなら、たとえ同じものを見ても見えるものは違うはず。見えるものが違えば全く違った結論に至る可能性がある。自分が出した結論よりその人たちが出した結論の方が起きていることをもっとすっきり説明できるかもしれない。
自分が至った結論を話すとき、ご理解頂きたいという説明の本来の目的に加えて、結論の欠陥やそこに至るまでの見落とし、視点のバイアスやズレを指摘して頂けないかという期待がある。立場の違いから生じる全く違った視点からの結論をお聞きしたいという希望がある。お聞きする指摘が的を射ていようがいまいが、ことさらに局所的だったり特殊環境に基づいた理解でもかまわない。言葉として理解できれば、多少のロジックの欠陥など気にしない。お聞かせ頂ければ、必ずなにかのプラスになる。
自分なりに結論を出してしまっていることでもこのありさまだから、自分ではどう説明したらいいのかもう一つしっくりこない、踏ん切りをつけきれないでいることは、喩えて言えば、まだちょっと煮込み足りないシチューのようなものかもしれない。それでもかなり煮込んであるから、話の主旨は十分ご理解頂けると勝手に思っている。多少ロジックに乱暴なところや部品が揃わず飛躍している点もあるだろうが、それでもとんでもない間違いを犯している可能性はないと思うから話をさせて頂く。
ここでは、ご理解頂くという説明の本来の目的をちょっと離れて、自分のロジックの精査と精緻さの手助けを求めている。ロジックの展開の欠陥、バイアスや立場による見えるものの違い、できる限りの多くの視点からの意見をお聞きしたい。
何人かの親しい知り合いから、なんでそんな愚にもつかないことを考えているのか、考えたところで何の役にたつのかと言われることがある。それでも、自分で自分に説明してしまいたい、あるいはちょっと後ろに引いて、今の時点でのものの見方や考えを整理して自分なりの判断基準をもっておきたいという気持ちを抑えられない。それなしでは、いざというとき、どっちに進むべきか、何に価値をおいて取捨選択すればいいのか、決断できないのではないかという不安がある。
そんな不安、考えたこともないと一笑に付されるかもしれないが、持って生まれた性格なのだろう。しょうがない。ただ、いくら考えても、思索も議論もないところからなんらかの意味や価値のある考え方が生まれるとは思えない。立場や思い入れ、経緯もあるし、なかには考えてもしょうがないことも多い。それでも考えずには存在としてあり得ようがないと思う。ついでに言わせて頂くが、反証の可能性など考えたこともないという人たちの話は話半分でと思っている。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4767:140224〕
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