「何をなすべきか」と現在(二)
- 2014年 4月 11日
- 評論・紹介・意見
- 三上 治
いろいろにニュースが世界の動きとして伝わってくる。その中で、僕に興味深かったのは台湾の学生たちが立法院を占拠している事件である。これはウクライナ情勢ほど詳細に伝えられてはいないが、「中台サービス貿易協定」の審議を与党の国民党が強引に進めたことから学生たち反発し、立法院の占拠に及んだとある。僕は今、経産省前にテントを張り、その一隅を占拠していることもあるが、僕らも国会の占拠に向かった1960年の安保闘争のことを自然に想起するからである。台湾の学生たちが中台サービス協定に反発するのはその強権的支配をチベット等の内部から周辺諸国に及ぼそうとする中国の動向に対する危機感や脅威感があるのだと思える。そして、そこには彼らの民主主義の欲求がある。これには強権的で非民主的な中国の政治権力とそれとあまり変わらない台湾の政治権力への批判がある。彼らの要求は僕らにアジアでの民主主義革命の呼び掛けという側面を持っている。僕はこの点に目が行く。
僕は1960年当時の日本の学生たちの動きと同時に、それに深く影響を与えたと思われる韓国の学生たちが展開していた李承晩大統領打倒闘争のことを思い浮かべた。日本の学生たちの反安保―民主主義の行動に韓国の学生たちの動きは衝撃的だった。韓国ではここを起源とする民主主義の闘争はその後も続けられて現在に至っているが日本の現在はどうなのだろうか。1960年安保条約推進の首領だった岸信介の孫である安倍晋三は「戦後体制からの脱却」を旗印に強権的体制の構築に歩を進めている。その方向は日本国憲法《戦後憲法》の改正であり、対外的にも体内的にも戦争を可能とする権力の構築であるが、理念的には日本のナショナリズムの復権を志向している。これに対してかつて反安保―民主主義を闘った左翼や市民は脱原発や反原発運動などで頑張ってはいるが、総体としては追い詰められていると言える。それは日本の民衆の意識の流れの変化ということに象徴させることができるだろう。この意識の流れに有効に対応しえていないのであり、それは自己の意識の混迷として現れている。安倍の繰り出してく強権的な動き(秘密保護法の法制化や集団自衛権行使容認のための憲法解釈の変更)に対する抵抗はそれなりにあるが、国会での政党のダメさがその現在を示している。僕らは何処に向かっているのか分からないという中での悪戦を強いられているのだが、これは日本の社会の方向がつかめずに、次の社会を構想できないこととしてある。これは歴史の流れが速く、変化するなかでの主体的意識の混迷していることからなかなか脱しえていないことだ。
記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4807:140411〕
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